Re.ポケットモンスターSV~電子生命体との出会い 作:ガチャガチャクツワムシ
『次の選手はナイトクロウのリンファ!』
審判の力強いアナウンスが響き渡ると、フィールドの反対側からショウと同年代の可憐な少女が、ドレスの裾を揺らしながら優雅に歩み出てきた。
「ご機嫌よう、ショウ。今日の試合で貴方を倒して、アリサを私の物にするわ!」
「……は?」
「そして、貴方が招待した女性方達も私の物にするわね!」
「はっ?」
あまりにも突拍子のなさすぎる宣言に、ショウがただただ困惑していると、観客席の様子がふと頭をよぎった。
「恋人同士の奴がいるぞ……」
ショウが辛うじてそう呟くと、リンファは不敵な笑みを深めて言い放った。
「大丈夫よ! 恋人がいても! その恋人ごと愛するから! それが美少年ならなおのこと良いわね! ヘ(゚▽、゚*)ノ ジュルリ♪」
目をギラつかせ、舌舐ずりをしながら観客席のハルトたちへ熱烈な視線を向けるリンファ。その視線を正面から受け止めた観客席では――。
「なんか背筋がゾクッとしたんだけど……!?」
「ウチも……なんかヤバい寒気がした……」
「僕もなんだけど……(何故か無意識に尻をキュッと押さえる)」
「大丈夫ちゃんか? お前ら……?」
冷や汗を流して震えるミモザ先生、ボタン、そして何故か尻を防御するように抑えているハルトを、ペパーが心配そうに見つめている。そんな不穏な空気の中、一人だけ全く気づいていない人物がいた。
「早く始まらないかなー! どっちが勝つかワクワクするね!」
目を輝かせて純粋にバトルに興奮しているネモに対し、ミモザ、ボタン、ハルト、ペパーの4人は引きつった苦笑いを浮かべるしかなかった。一方、その隣の席では――。
「なぁ……あの娘ってあんな性格だったか……?」
「……俺に聞くな……頭が痛い……」
ソウマから尋ねられたヒョウガが、観客席の隅で深く頭を抱え込んでいた。
『両者、そろそろ準備は宜しいでしょうか?』
観客席と両陣営のざわめきを遮るように審判が確認を入れると、ショウとリンファの雰囲気が一変した。互いにテイマーとしての顔つきとなり、鋭い殺気がフィールドを包み込む。
『それでは! Ready……GO!!』
開始の合図とともに、両者の手元から眩い光が放たれた!
ショウは先ほどと同じくジャスティモンX、グリフォモン、ラジエルモンの精鋭陣。
対するリンファが繰り出したのは、童話を思わせるサンドリモン、圧倒的な美しさを誇るロゼモンBM(バーストモード)、そして凶暴な古代獣ディノタイガモンという隙のない構成!
「まずは場を整えるのよ!」
リンファの即座の指示により、サンドリモンとロゼモンBMが味方全体へ状態異常やデバフを防ぐ【ステータスバリア】や【カースバリア】を迅速に展開していく。その強固な防陣に対し、ショウは隙を与えずジャスティモンXへ能力強化(バフ)を集中させると、前衛のディノタイガモンへの急襲を命じた。
「ディノタイガモン!」
リンファの合図に応じ、ディノタイガモンが物理攻撃を跳ね返す【アタックリフレクト】のカウンター姿勢をとる。しかし――。
「甘い!」
そのカウンター戦術を完全に読んでいたショウの指示で、先んじて動いたのは超音速のグリフォモン! 意図的に軽い牽制攻撃を叩き込んで相手の【アタックリフレクト】を誘発・消化させると、カウンターの発動直後に生じたわずかな隙へ、限界まで攻撃力を高めたジャスティモンXが躍り出た!
「――【ジャスティスXブレード】!!」
腕部のブレードから放たれた極大の一閃が直撃し、ディノタイガモンに致命的な大ダメージを与える!
「ジャスティモン! 追撃だ! 【ジャスティス穿孔キック】!」
「サンドリモン! 【ヘイトチャージ】! ロゼモンは 直ぐ様【リバイブ】!」
畳みかけようとするジャスティモンXの必殺のキックに対し、サンドリモンが身を挺して攻撃を引き受けて一撃で戦闘不能(デジタマ化)となるが、間髪入れずにロゼモンBMが蘇生スキル【リバイブ】を発動! 即座にサンドリモンを戦線へと復帰させていく。
その瞬間の隙を突き、グリフォモンとラジエルモンが崩しにかかるも、立て直したディノタイガモンが素早い牽制行動で完璧にカバーし、戦況は見事に五分へと押し戻された。
高レベルな技の応酬に、ショウは不敵に口元を吊り上げた。
「やるな……! だが、勝負はここからだ!」
『凄まじい攻防だぁぁぁッ! リンファ選手がショウ選手の怒涛の攻めを見事に受け流し、戦況を完璧に五分へと押し戻しました!』
審判の絶叫に乗せるようにして、コロシアム全体のボルテージがさらに跳ね上がっていく。
「言動はアレだけど……あの子、バトルになるとめちゃくちゃ凄くない!?」
身を乗り出して感心するミモザ先生に対し、ヒョウガが腕を組みながら淡々と解説を加える。
「リンファは欲望にあまりにも忠実で、見境がないのが玉に瑕だが……テイマーとしての才能は本物だ。エイジやアリサと同じく、テイマーになってから短期間で最高ランクのプラチナに上り詰めたからな」
「君たちの世界で例えるなら……アカデミーでポケモンをもらった年の『宝探し』で、ほんの数週間のうちにチャンピオンランクまで駆け上がってしまうようなレベル、と言えば分かりやすいかな?」
ソウマがパルデアのメンバーに合わせて例えを出してみせると、ペパー、ボタン、ミモザ先生の3人は驚愕で目を丸くした。ネモやハルトといった、作中でも規格外な才能を持つ怪物と同クラスの化け物だと瞬時に理解できたからだ。
「……ちなみに、ショウの才能はどれくらいなの?」
ミモザ先生がふと疑問を口にすると、ソウマは苦笑いを浮かべた。
「ショウくらいだと……そうだな、他にはヒデトあたりか。それくらいの才能だと、順当にいってアカデミーを卒業する頃にようやくチャンピオンクラスに手が届くかどうか……といったところだな」
確かにショウも十分に努力家であり才能はある。だが、ハルトやエイジたちのような天才たちの背中に追いつくには、あまりにも高く分厚い壁が存在していた。
「ヒデトの奴は自分の才能の限界を割り切って戦術をシフトしていたが、ショウは割り切れずに散々思い悩んで、一時期はパートナーたちにも八つ当たりしていたくらいだからな。見かねて俺が地獄の特訓で徹底的に叩き直してやったんだよ。しごき倒された後、ようやく殻を突き破ってエイジたちに喰らいつけるところまで来たのさ」
「ショウにも、そんな葛藤の時期があったんだね……」
ハルトたちがショウの努力に思いを馳せていると、グラウンド上の試合で決定的な動きが見られた。
ショウはその後も激しい連続攻撃を仕掛けていたが、サンドリモンかディノタイガモンが巧みに身を挺して攻撃を受け止め、削れた分は即座にロゼモンBMが回復魔法で巻き戻して反撃へ転じる、というリンファの鉄壁のサイクルに阻まれていた。
「(こちらの一撃の方が重いが、1体落としてもロゼモンがすぐ【リバイブ】で即時復帰させてくる……かといって、奥のロゼモンを直接狙おうとすると前の2体が徹底して立ち塞がる……! 厄介な耐久陣形だな。こちらのSPを切れさせる作戦か……なら!)」
瞬時に思考を巡らせたショウは作戦を切り替え、サンドリモンとディノタイガモンの2体へ均等にダメージを分散させ始めた。
「2体を同時に倒そうとしているようだけど、そんなの甘いわね! ロゼモン! 【エクスオーラ】!」
全体回復技で一気に立て直そうとするリンファの指示を見て、ショウの口元がニヤリと上がった。
「やっぱ全体回復も仕込んでいたか! そこだ、ラジエルモン! 【封印】!」
ラジエルモンから放たれた特殊なデータの波動がロゼモンBMを包み込む! ラジエルモン自身が覚えている技と同じ技術パターンをロックし、ロゼモンBMの回復能力を完全に封殺してみせた。
「なっ……それは、ポケモンの技の……!?」
「対アリサやエイジ用に隠してあった秘密兵器だ! これでもう回復は使えないぞ! ラジエルモン、サンドリモンにも続けて【封印】! グリフォモンとジャスティモンはディノタイガモンへ集中攻撃!」
畳みかけるようにサンドリモンも封印状態へ追い込み、二大アタッカーの怒涛の連撃でディノタイガモンを完全に撃破して戦闘不能にした。
焦ったリンファは所持している貴重な回復アイテムを投入して悪あがきを試みるも、回復手段を奪われた状態でのショウの怒涛の猛攻には耐え切れない。サンドリモンも崩れ去り、リンファも意地でラジエルモンとグリフォモンを道連れにして倒してみせたが――最後に残されたジャスティモンXが天地を揺るがすエネルギーを全身に充填させた。
「これで……止めだッ!! 【ジャスティスイナズマキック】!!」
ジャスティモンXが上空から光の雷電を纏って急降下! ロゼモンBMも必殺の光線【アギシャンレーヴル】を放って相殺を狙うが、放たれた必殺のキックは薔薇の光線を真っ二つに切り裂き、そのままロゼモンBMを貫いた!
どっかあぁぁぁんッ!!
激しい爆炎とともに、ロゼモンBMが静かにその場に倒れ込み戦闘不能になった。