Re.ポケットモンスターSV~電子生命体との出会い 作:ガチャガチャクツワムシ
激闘の末に優勝を掴み取ったショウは、駆け寄ってきたライトファングの仲間たちから次々と祝福の嵐を受け、もみくちゃにされていた。
揉みくちゃの輪から抜け出し、少し落ち着いてからハルトたちの待つ観客席へと向かうと、パルデアのメンバーが一斉に笑顔で迎えた。
「おめでとう、ショウ!」
「凄すぎちゃんだな! 優勝おめでとう!」
「素晴らしい戦いだったよ、おめでとう!」
「次は絶対に私とバトルしようね! ね!」
「ネモ、今は勘弁してあげなさい」
口々にかけられる温かい祝福の言葉に、ショウは照れくさそうに頭を掻いた。
「サンキューな、みんな! ……ふぅ、流石にデジソウルを限界まで使って体に力が入らねぇ。少しファーム島で休んでから、何か美味いもんでも食いに行こうぜ!」
そう言い残すと、ショウは自身のファーム島へと移動し、静かに目を閉じて消耗した体力の回復に努めた。
どれくらい経っただろうか。ふと人の気配と柔らかな温もりを感じて目を覚ますと、そこにはアリサが優しく見下ろしていた。
「……今度はお嬢かよ」
「そのあだ名で呼ぶのはやめてください。トーナメントも終わったことですし、次は私の番ですので」
アリサはそう微笑むと、当然のように再度ショウの頭を自分の太ももの上へと引き寄せ、膝枕の姿勢を取らせた。ショウは一瞬抗おうと身動ぎしたものの、激戦による深い疲労感には勝てず、そのまま心地よい温もりに身を任せて再び眠りへと落ちていった。
アリサはすやすやと寝息を立てるショウを見つめながら、先ほどのミモザと同じように愛おしそうにその髪を優しく撫で続けた。
しばらくその時間を堪能していると、ファーム島にやってきたミモザが静かに歩み寄り、アリサのすぐ隣へと腰掛けた。
「ねぇ、アリサ……」
「何でしょうか、ミモザ先生?」
「3人きりなんだから、その『先生』って呼び方はやめてよ」
「ふふ、じゃあ……ミモザさん」
「うん、よろしい! ……それでね、ちょっと気になってたんだけど。ショウってこの大会中、ずっとすごい気負いながら勝負してたじゃない? 何か理由でもあるの?」
ミモザの不意の質問に、アリサは一瞬言葉を詰まらせた。少し思案したあと、意を決したように静かに口を開く。
「ショウさんにとってエイジ君は……何よりも『対等な立場で並び立ちたい存在』なのですよ。テイマーとしての天性の才能はエイジ君の方が上なのですが、それでも必死に泥臭く喰らいつこうとしていたからこそ、あれほど気負っていたのだと思います」
「ふーん……」
ミモザはアリサの説明に深く頷くと、ショウの無防備な寝顔を覗き込んだ。
「へぇ……あんなに生意気なのに、なんか可愛いところもあるじゃない」
二人は顔を見合わせてクスクスと微笑み合いながら、ショウの穏やかな寝顔を静かに見守り続けるのだった。
【エイジ サイド】
一方その頃、惜しくも準優勝となったエイジも、限界を超えた疲労からマイルームのベッドで横になって身体を休めていた。そこへ静かにサクヤが訪れ、ベッドの脇にそっと腰掛けた。
「……悔しい?」
「……悔しいけどさ。それ以上に、なんだか嬉しいかな」
エイジは天井を見上げたまま、偽りのない素直な胸の内を吐露した。
「やっぱり……本気で競い合える相手がいないと、寂しいからさ」
「フフ、そうでしょうね」
サクヤは愛おしそうに目を細めると、心地よい疲れから次第に瞼を重くしていくエイジの隣へと静かに滑り込み、そっと添い寝をした。
「……今日はお疲れ様。ゆっくり休んでね、エイジ」
ショウがたっぷりと休息を取り、元気を完全に取り戻したことで、ライトファング主催の盛大な祝勝会が開催された。ハルトたちも大興奮で参加し、デジタルワールドの美味しい料理や飲み物を心ゆくまで堪能しながら、夜遅くまで大いに盛り上がった。
そして――翌日。ハルトたちはショウたちに見送られ、無事にパルデア地方へと帰還した。
「あんなに濃い時間を過ごしたのに……こっちだと半日くらいしか経ってないんだね……」
「時間の感覚が完全にバグるやん……」
「ははっ、結構すぐに慣れるぞ」
ハルトやボタンの疲れたボヤきにショウが笑いながら返し、パルデアの面々はそれぞれの日常へと戻るため解散していった。
それから――数ヶ月の時が流れた頃。
とある「異変」に関する噂話を耳にしたショウとアリサは、アカデミーの自室で端末を覗き込みながら顔を見合わせていた。
「……今の俺たちじゃ、すぐには動けないな」
「ええ……それなら、あの『二人』に頼んでみましょうか」
互いに深く頷き合うと、ショウは手元のデジヴァイスを操作し、とある人物へ通信を繋いだ。
『――オイッス! なぁ、ちょっと面白い旅行に行かないか?』
画面の向こうへ笑いかけるショウの言葉とともに、次元を超えた新たな物語の幕が、静かに上がろうとしていた――。