Re.ポケットモンスターSV~電子生命体との出会い 作:ガチャガチャクツワムシ
『宝探し』が始まってから数日が経過した。
幸いなことに、それ以来新たな巨大ゲートや強力なデジモンの出現は確認されていない。だが、ショウは万が一に備えて隠密巡回プログラムを走らせつつ、道中で魔物に遭遇したり道に迷ったりした生徒たちを人知れず救助する日々を送っていた。
そんなある日の午後――ショウはセルクルタウンで評判の洋菓子店『洋菓子工房 ムクロジ』の店内にいた。
「お会計は1万380円になります。お買い上げありがとうございました〜!」
代金を支払い、店員からずっしりと重い大きな紙袋をいくつか受け取る。大量買いする客も珍しくない人気店とはいえ、男一人でこの量は流石に少し気恥ずかしい。
急いで店を出ようとしたその時、背後からおっとりとした女性の声がかけられた。
「あら〜、ショウさんではないですか〜。お買い物ですか?」
振り返ると、そこにいたのはこの店のオーナーシェフであり、セルクルジムのジムリーダーでもある虫ポケモンの使い手――カエデだった。
「お久しぶりです、カエデさん」
「そんなにたくさんのケーキ……何かのお祝いですか〜?」
「あ、いえ。実はとある人物から頼まれまして……それと自分たちの分、あとはこれからナッペ山の友人のところへ行くので、そいつと世話をしているポケモンたちの分を買いに来たんです」
「そうなのですね〜。うちのお菓子はポケモンたちにも大好評なんですよ。……ふふ、ご友人というのは『彼』のことかしら? それならちょうど良かったわ! 彼をモチーフにした新作の『ユキダル・ケーキ』を作ったところなの。良ければ持って行ってあげてくださいな〜」
カエデはそう言うと、丁寧にラッピングされた可愛らしい特製ケーキの箱をショウに手渡してくれた。
「えっ、いいんですか!? ありがとうございます! あいつ、絶対に喜ぶと思います!」
「いいえ〜、いつもナッペ山周辺を守ってくれて感謝しているのは私達も同じですから〜。またのご来店をお待ちしておりますね〜」
お礼を言って店を出たショウは、すぐさまナッペ山の白銀の世界へと向かった。
ナッペ山の山頂付近。静かな洞窟の隠れ家へ入ると、そこには温かい『こたつ』がドンと置かれていた。
「やぁ、ショウ! 久しぶりだね、元気だった?」
顔を出したのは、数週間前にゲートからパルデアへやってきた氷雪型デジモン――【ユキダルモン】だ。
「ユキダルモンも元気そうで良かったよ。ごめんな、手伝ってもらってるのに最近忙しくてなかなか会いに行けなくて」
「ううん、気にしないで! ボクと違ってショウはアカデミーの勉強や調査で大忙しなんだからさ」
「ありがとう、ユキダルモン。……ほらこれ、セルクルタウンで有名なケーキ屋さんのケーキ。店主のカエデさんがお前をモチーフにして作ってくれたから、みんなで食べてくれよ」
「わぁ〜! 嬉しいな! さっそくみんなで食べよう!」
『ハミィ!』『シュン!』『キュー!』『シア!』
ユキダルモンが嬉しそうに声をかけると、周囲に身を寄せていたクマシュンやユキハミ、モスノウたちが目を輝かせて集まってきた。ユキダルモンは手際よくケーキを切り分け、ポケモンたちへ配っていく。
「……しかし、ユキダルモン。この『こたつ』、一体どっから持ってきたんだ?」
こたつに足を入れて温まりながら、ショウが素朴な疑問を口にした。
「あはは、実はね。デジタルワールドで新しいこたつを買いに行った帰り、次元の歪みに巻き込まれてパルデアに来ちゃったんだよ。ショウと再会して新しいこたつは自分の部屋に運んでもらったから、これは前に使ってたやつなんだ。…で、ショウの方はどうしてそんなにケーキを大量買いしてたの?」
「……実はさぁ。あの【Teamナイトクロウ】のドSリーダーから連絡があってな……」
「サヨリーダーから!?」
「そーそー。『パルデアの美味しいお菓子があるらしいわね』っていう、無言の圧力が凄まじい『お願い(命令)』だよ。まぁ、ブラックテイルモン Uver.に頼んでファーム島経由で運んでもらったけどさ。……今度あの人の部屋の模様替えして、勝手にファンシーなやつにしてやろうかな」
「あはは! サヨリーダーに怒られても知らないよ〜!」
寒風の吹き荒れるナッペ山の中で、こたつに入りながらケーキを突つく一人と一匹。
他愛のない会話と穏やかな笑い声が、白銀の洞窟の中に温かく響き渡るのだった。