Re.ポケットモンスターSV~電子生命体との出会い 作:ガチャガチャクツワムシ
「「うわぁぁぁぁ──っ!?」」
謎のゲートが放つ猛烈な牽引力に抵抗する術もなく、ショウとヘクセブラウモンは暴風の渦へと飲み込まれていった。視界が真っ白に染まり、激しい衝撃とともにショウの意識は暗転した。
一方、ショウたちが消え去ったデジタルワールドの山頂。
二人が吸い込まれると同時に、空間の亀裂はパチンと弾けるように姿を消してしまった。
「ショウ……!? くそっ、ランプモン!」
アキヒコが咄嗟に呼び出したパートナ──―魔人型デジモン・ランプモンが
呆然と立ち尽くすランプモンだったが、すぐに我を取り戻すと、アキヒコへ鋭い視線を向けた。
『アキヒコ、急ぎユニオンに連絡を!』
「あ、ああ……! こちらアキヒコ! リーダー、緊急事態です! ショウとヘクセブラウモンが謎のゲートに吸い込まれました! 至急、ソウマさんか【ナイトクロウ】のヒョウガさんに連絡を──!」
デジヴァイスへ叫び込むアキヒコの声に、通信の向こう側のリーダ──―コウの声にも緊迫感が走る。
『なんだと……!? ショウまで巻き込まれたのか……!』
「ショウ“まで”……? まさかリーダー、他にも被害が!?」
『……ああ。君たちからの報告の直後、デジタルワールドの各エリアで同様のゲートが同時多発的に発生した。周辺にいたデジモンたちが吸い込まれ、消息を絶っている……!』
「そんな……」
受話器越しに語られたあまりに絶望的な状況に、アキヒコとランプモンは言葉を失い、ただただ絶句するしかなかった。
──どれほどの時間が流れただろうか。
「……ショウ! おいショウ、無事か!?」
頭上に響く力強い声に促され、ショウはうっすらと瞼を開けた。
眩しい光に目を細めながら体を起こすと、そこには見慣れた赤と金の巨大な体躯──相棒の一頭であるシャイングレイモンの姿があった。
「シャイングレイモン……? あ……ヘクセブラウモンは……?」
『安心しろ、デジヴァイスのストレージに退避させてある。データに大きな不具合はない。体力が回復すればいつでも出られるぞ』
その言葉を聞き、緊張の糸が切れたショウは「よかった……」と呟いてそのまま草の上に大の字に倒れ込んだ。
安堵の息を吐き出してから、ショウは再び体を起こして周囲を見渡した。
そこは、先ほどの雪山とは全く異なる、沼地と心地よい潮風が吹き抜ける見知らぬ大地だった。
「……ところで、ここどこだ?」
『さあな。お前の安全を第一に護衛していたから、まだ周辺の探索はしていない』
シャイングレイモンが首を横に振る。ショウはすぐさま手元のデジヴァイスを操作し、本部やアキヒコへの通信を試みたが──画面には砂嵐と虚しいノイズ音が響くだけだった。
「ダメだ、電波が届かない……次元ごと切り離されてるみたいだ」
『無理もないな。……見ろ、もうすぐ日が暮れる。幸い、すぐに天気が崩れる様子はない。それに、俺がこうして圧を放っているおかげか、周辺の原生生物も寄ってこないようだ。本格的な捜索は夜が明けてからにしよう』
「そうだな……了解。俺もまだ頭がぼーっとするし、そうさせてもらうよ」
ショウはシャイングレイモンの提案に頷くと、デジヴァイスのファームデータから慣れた手つきでキャンプセットを取り出し、寝床の準備を始めた。
手際よくテントを張り、寝袋へ潜り込む。
「シャイングレイモン、見張り頼むな……」
『ああ、任せておけ』
仲間の頼もしい背中に守られ、ショウが目を閉じると、すぐに規則正しい寝息が聞こえ始めた。
ショウの寝息を聞き届けたシャイングレイモンは、フッと息を漏らす。
(……だが、妙だな)
シャイングレイモンは自らの巨大な拳を見つめ、微かな違和感を覚えていた。この大気に漂うエネルギーの質が、デジタルワールドのものとも、自分たちが知る人間界のものとも微妙に異なっているのだ。
静まり返る見知らぬ夜の風の中、大翼の竜は静かに周囲への警戒を深めていった。