Re.ポケットモンスターSV~電子生命体との出会い 作:ガチャガチャクツワムシ
ショウの存在をすっかり忘れていたことに気づき、顔を真っ青にさせていたハルトだったが──主である【テツノワダチ】は待ってなどくれなかった。
『ウィ・ルドン・ファ──ーッ!!』
甲高い機械駆動音とともに球体へと変形したテツノワダチが、凄まじい速度で【高速スピン】を繰り出して迫る! アチゲータとスコヴィランは間一髪で横飛びし、その激突をかわした。
「ショウのことは後回し! まずは目の前のこいつを倒すぞ! アチゲータ、【焼き尽くす】!」
『アチゲッ!』
「お前……後でお叱りちゃん確定だな! スコヴィラン、【タネ爆弾】!」
『スコヴィッ!』
草の爆弾の連続攻撃がテツノワダチを襲う! タイプ相性で効果バツグンとなり、鋼鉄のボディに確かなダメージが蓄積していく。
だが、テツノワダチは【高速スピン】の追加効果で素早さを限界まで上昇させており、縦横無尽に旋回しながら先手を取って猛攻を仕掛けてくる。それでもハルトとペパーは諦めず技を叩き込み続け、ついに主を戦闘不能の一歩手前まで追い詰めた。
「あと少し……!」
「このままいけいけちゃんだぁッ!」
テツノワダチの巨体がグラリと傾き、その場に膝をつく。
勝った──そう確信したハルトとペパーは、手持ちのポケモンたちも含めて思わず緊張を解いてしまった。
……まさに、その一瞬の隙を狙ったかのように。
テツノワダチが残された全エネルギーを注ぎ込み、赤く発光しながらハルトとペパーへ向かって死角から猛烈なラストスパートの突進を仕掛けてきたのだ!
「「え……!?」」
あまりの急転直下に、二人の思考がフリーズする。回避行動すら取れない絶望の瞬間──。
「オノノクス! 【ワイドブレイカー】! セグレイブは【巨剣突撃】だ!!」
どこからか響き渡った鋭い叫び声とともに、荒野の砂煙を打ち破って二体のドラゴンポケモンが舞い降りた!
オノノクスが強力な遠心力を乗せた強靭な尾を叩きつけ、セグレイブが倒立からの背鰭の巨大な剣で凄まじい一撃を叩き込む!
ドギャァァァンッ!!
二連撃の重厚な衝撃がテツノワダチの巨体を粉砕し、今度こそ完全に動きを停止させて崩れ落ちた。
「……無事か、二人とも」
砂煙を払いながら歩み寄ってきたのは──全身汗だくになり、息を切らせたショウだった。
「ショウ! ありがとう!」
「助かったぜ!」
「……今回は間一髪で間に合ったが、相手が完全に倒れたことを確認するまで油断するな。いいな?」
「うん……気をつけるよ……」
命を救われたハルトとペパーが心からの感謝を伝えると、ショウは冷静な声で苦言を呈した。二人はシュンとして深く頷く。
「まぁ……二人とも怪我がなくて良かったよ。本当に……良かった……」
ふっ、とショウの纏う雰囲気がガラリと変化した。
その途端、ハルトの背筋に氷を突きつけられたような凄まじい悪寒が奔った。やばい、命の危険を感じる──! ハルトは咄嗟にその場から全力で逃げ出そうとしたが、背後にはいつの間にかオノノクスとセグレイブが立ちふさがっていた。
「あ、あの……逃がしてくれませんか……?」
ハルトが引きつった笑顔で尋ねてみるも、二体のドラゴンは「すまない、こればかりは助けられないんだ……」と言いたげな沈痛な面持ちで、そっと首を横に振った。
助けを求めてペパーに目を向けるが、ペパーは「俺、何も見てません」と言わんばかりに視線を明後日の方向へ逸らした。足元のアチゲータに至っては、いつの間に離れておりスコヴィランの背中にしがみついてガタガタと震えている。
「ハ〜ル〜ト〜く〜ん……?」
「ヒッ……!?」
生唾を呑み込み、恐る恐る振り返るハルト。
そこにいたショウの背後には──まるでカイリキーのように4つの腕を持ち、怒り・恐れ・情愛の3つの顔を浮かべた魔人が幻影となって揺らめいていた。
顔は満面の笑顔でありながら、額には極太の青筋がピキピキと浮かび上がっている。
「最後に言い残す言葉はあるか……?」
「ゆ……許してくださいぃぃぃ──ーっ!!」
直後、青空が広がるロースト砂漠に、ハルトの悲痛で情けない悲鳴がいつまでも虚しく響き渡るのだった。