Re.ポケットモンスターSV~電子生命体との出会い 作:ガチャガチャクツワムシ
ハルトへの「愛の制裁」を終えたショウたち3人は、テツノワダチが奥で大事に守っていた洞窟へと足を踏み入れた。その最深部には、眩い光を放つ神秘的なスパイスが群生していた。
「これが『秘伝スパイス』か……」
「ああ! えーと何々? 本によると……『秘伝:すぱスパイス』は滋養強壮! 栄養が一杯詰まっている。疲れた心と体によ〜く効いて、みるみるうちに体力が回復する……んだとよ!」
「僕の頭のたんこぶも治るかなぁ……?」
ショウが光るスパイスをまじまじと観察していると、ペパーが『バイオレットブック』を開いて効能を朗読してくれた。ハルトは頭に手を当ててポツリと呟く。……ちなみに、ハルトの頭頂部には漫画やアニメでしか見たことがないレベルの見事な大きなたんこぶが鎮座していた。
ショウはハルトの呟きを華麗にスルーし、手際よくスパイスを採取した。すると、ペパーが爽やかな笑顔で振り返る。
「よしっ、ショウ! ハルト! さっそく特製サンドイッチにして飯にしよーぜ!」
ペパーが調理の準備を始めようとした──まさにその時。
ショウのポケットの中で、デジヴァイスの通知音が鳴り響いた。
ショウは少し距離を置いた場所で確認をし、確認を終えるとショウは険しい表情でハルトたちの方へ向き直った。
「すまん……今、リーグから緊急の呼び出しを受けた。すぐに向かわなきゃならない。せっかくの料理、また今度ご馳走してくれ!」
「そういうことなら仕方ねぇな! 了解だ、また今度でっかいサンドイッチを腹いっぱい食わせてやるよ!」
「すまんなペパー、ハルト、また何かあったら連絡してくれよ?」
「うん! 助けてくれてありがとう、またね!」
ペパーとハルトに挨拶を済ませると、ショウは洞窟を飛び出し、そのまま最寄りの反応地点へと疾走した。
デジヴァイスのマップを確認すると、今回のゲート出現ポイントは複数に及んでいた。
その中で最も近い場所へと急行したショウだったが、現場の光景を目にして思わず目を見張った。なんとそこは──スター団・悪組のアジトのど真ん中だったのだ。
(やっべぇな! ついに人が集まる施設やアジトの真上にまで現れ始めたか……! 幸い、まだゲートから実体化は完了していない。今のうちに片付けるぞ!)
ショウは咄嗟に仮面とフードを装着して姿を偽装すると、星型のフラッグがはためくスター団アジトの敷地内へ颯爽と降臨した。
突然現れた不審な変装男に、アジトを守っていたしたっぱたちが「なんだあいつ!?」「侵入者だぞ!」とざわつき、一斉に警戒態勢に入る。だが、ショウには彼らと悠長に付き合っている時間は一秒すらなかった。
「……悪く思うなよ」
ショウはデジヴァイスを操作し、広範囲へ強力な『範囲睡眠・気絶プログラム』を一括展開した。
直後、見えない波動がアジト全体を包み込み、身構えていたしたっぱたちが「ふぁ……」「なんだか急に猛烈な眠気が……」と次々に倒れ込み、あっという間に全員が気持ちよさそうに爆睡し始めた。
したっぱたちが全員眠りについたのを確認した直後──空間が歪み、空中に黒い亀裂が走った。
ズゥンッ! という重厚な地鳴りとともに舞い降りたのは、右目が潰れ、右腕が異様に巨大化した凶暴な竜人型デジモン──成熟期の【サイクロモン】だった。
「悪いな……時間がねぇんだ。最初から全力で行くぞ!」
ショウがデジヴァイスを掲げると同時に、ミレイたちが開発した『領域隔離シールド・フィールド』が自動展開され、アジトの一角が現実空間から遮断された。
サイクロモンが咆哮を上げて身構えたその瞬間、ショウはデジヴァイスからパートナーを実体化(リアライズ)させた!
「イェーガードルルモン! 一撃で仕留めろ!」
『おうッ!!』
出現したイェーガードルルモンは、右腕の巨大なドリル槍『シュツルムスティンガー』を構え、超高速回転させながら必殺技を解き放つ!
『──【ヴァイスシュピラーレ】っっ!!』
サイクロモンも咄嗟に口から極太の熱線『ハイパーヒート』を吐き出して迎え撃とうとしたが、圧倒的な穿孔力を誇るドリル槍の螺旋が熱線を真っ向から撃ち破った。
ドゴォォォンッ! と爆音とともに『シュツルムスティンガー』がサイクロモンの巨体を貫通する!
幾重ものデータノイズとともにサイクロモンの肉体が崩壊し、ポツンと一つのデジタマへと姿を変えた。ショウは即座にデジタマを回収し、隔離フィールドを解除。
「よし、次だ!」
風のように現れた変装のテイマーは、瞬く間に次の現場へと空を駆け抜けて行った。
残されたスター団のアジトには、何も知らずにすやすやと眠り続けるしたっぱたちだけが、静かに転がっているのだった。