Re.ポケットモンスターSV~電子生命体との出会い 作:ガチャガチャクツワムシ
首脳会議が終わり、少し休もうと学生寮の自室に戻ったショウのポケットで、スマホロトムが突如として怪しい発光とともに起動し、着信通知を鳴らし始めた。
ショウは即座にデジヴァイスを操作し、周りに音声や通信データが漏れないよう部屋全体に強力な遮断フィールドを展開してから通話状態にした。
『ハロー、ショウ。突然の連絡、すまないね。……ボクはフトゥー。パルデアの大穴の奥──『エリアゼロ』にて研究を行っている者だ』
スピーカーから流れてきたのは、落ち着きつつもどこか機械的な硬さを感じさせる男の声だった。
『先ほど、ポケモンリーグのオモダカトップから連絡があった。……ボクの要望を通すよう、会議で説得してくれたことに感謝するよ』
「構わないですよ。……それに、あんたの本当の『正体』は知っていますから。──なぁ、AIさん?」
『…………何のことかな?』
一瞬の静寂。ショウは不敵な笑みを浮かべ、淡々と核心を突いた。
「惚けなくていいですよ。タイムマシンが稼働し続けることでパラドックスポケモンが溢れ出し、あのテツノワダチのように外へ逃げ出してしまうリスクを懸念して……自らを賭してタイムマシンを完全に停止させようとしているんですよね?」
『……何故だ。何故君が……ボクの真の目的と正体まで知っているんだい……!?』
画面の向こうで、フトゥーAIの冷静な声に明らかな狼狽の色が混じった。
「幸い、誰にも聞かれない遮断空間にしていますから教えますよ」
ショウは言葉を選びながら、自分がいた元の世界において、このパルデア地方やエリアゼロの出来事が『
通信の向こうでフトゥーAIは絶句したように固まっていたが、高度な演算処理を経て、静かに口を開いた。
『……にわかには信じがたい話だ。だが……一般に公開されていないタイムマシンの内部仕様、そしてボクの存在理由と目的を完璧に言い当てている。……君の言葉は『真実』なのだろうね』
「困惑させて悪かったな。それより懸念していることがあるんだが……今、タイムマシンがかなり深刻な暴走を起こしてないか?」
『……その通りだ。空間の歪みが限界を超え、未来のポケモンだけでなく……本来なら呼び出されるはずのない『過去のポケモン』や、更には君たちの世界のデータエネルギーまで無差別に引き寄せ始めている。大穴の隔壁バリアがいつ突破されるか分からない……! だからこそ、一刻も早くタイムマシンを完全に停止させたいんだ。頼む……力を貸してくれ』
「元はと言えば、こちらの世界のエネルギーが干渉したせいで事態が悪化したんだ。全力で手を貸すつもりさ。安心してくれ」
ショウの力強い言葉に、フトゥーAIはホッとしたように胸を撫でおろすような気配を見せた。
『ありがとう、ショウ。……ハルトたちは明日、へ向かう予定だ。彼らの護衛を……頼んだよ』
「了解した」
通信が終了し、遮断フィールドを解除してベッドへ腰を下ろす。決戦の時は、すぐそこまで迫っていた。
翌日。パルデアの大穴の入口──『ゼロゲート』。
ショウは気配を完璧に消し、ゲートの物陰から監視を行っていた。
まず真っ先に、重い足取りで中へ入っていくボタンの姿を確認し続いてネモ、ペパー、ハルトの順で合流し、賑やかに言葉を交わしながらゼロゲート内部へと進んでいくのを見届けた。
少し時間を置き、フトゥーAIから「彼らの降下を確認した」と通信が入るのを確認すると、ショウは昇降口の淵へ立った。
「──スピリット・エボリューション!!」
デジヴァイスから溢れ出す燃え盛る炎のスピリットがショウの身体を包み込む!
咆哮とともに、炎の闘士──【ヴリトラモン】へと超進化を果たしたショウは、赤蓮の翼を羽ばたかせ、そのまま広大なパルデアの大穴の雲海へと急降下した!
雲を突き抜け、眩い水晶と巨木が入り乱れる未知の領域──エリアゼロの内部へ着地する。
ハルトたちが降り立った地点とは少し離れた深部寄りの崖際だったため、見慣れぬ巨大な炎の竜生命体の降臨に、周囲を徘徊していた野生のリキキリンやアーマーガアたちが敵意を剥き出しに一斉に襲いかかってきた。
「ハッ、邪魔をするなよ!」
ヴリトラモンは、襲い来るポケモンたちを傷つけすぎない塩梅で殴り飛ばして一掃・気絶させた。
速やかに元の姿へと戻ったショウは、デジヴァイスの生体レーダーでハルトたち4人の現在地とバイタルを確認する。
(……よし、ハルトたちは第1観測ユニットへ向かっているな。……よし、気付かれないよう、周囲の脅威を先回りして排除するぞ!)
広大な大穴の陰で、テイマーによる極秘の護衛ミッションが、静かに幕を開けたのだった。