Re.ポケットモンスターSV~電子生命体との出会い 作:ガチャガチャクツワムシ
朝の澄んだ空気が、見知らぬ大気を満たしていた。
目を覚ましたショウはテントのジッパーを開け、朝露に濡れる草踏みしめながら外へ出た。
「おはよう、シャイングレイモン。夜通しの見張り、ありがとな」
『ふん、おはようさん。よく眠れたようだな』
シャイングレイモンが巨大な頭部を下げて応える。
ショウは手際よくテントを撤収・収納すると、朝食の準備を始めた。簡単な調理を終えると、彼はデジヴァイスを掲げ、澄んだ声を張り上げる。
「みんな、リアライズ!」
デジヴァイスの画面から放たれた眩い光が弾け、地面に次々と巨大な影を結んでいく。
『ショウ! 怪我はない?』
一番に声をかけてきたのは、氷の甲冑を纏った相棒──ヘクセブラウモンだ。
『やれやれ……とんだ災難に巻き込まれちまったな』
特撮ヒーローのような赤と銀の姿をしたジャスティモンが、肩をすくめながら周囲の景色を見渡す。
『本当にね。急に吸い込まれたときはどうなるかと思ったわ』
聖なる光を纏う獣人型デジモン、ラジエルモンが溜息をつく。
『気を抜くなよ。ここは我々の知るデジタルワールドでも、人間の世界でもないのだからな』
鋭い眼光で周囲の警戒を怠らないのは、騎士の如き威風を漂わせるドゥフトモン。
さらに、上体が鳥で下体が獣、蛇の尾を持つグリフォモンが舞い降り、ショウの現在の手持ち究極体6体が勢揃いした。
「みんな、おはよう。ヘクセブラウモン、体の方は大丈夫か?」
『うん、問題ないよ。……ただ、なんだろうな。この世界のデータ密度が違うのか、実体化しているだけで普段よりエネルギーの消費が激しい気がするんだ』
『……なるほどな。俺が昨日感じていた違和感もそれか』
シャイングレイモンが腕を組み、深く頷く。ショウは少し心配そうな表情を浮かべた。
「なら、一度デジヴァイスのストレージに戻るか?」
『待て』
ドゥフトモンの制止が入る。
『激しい戦闘を行えば話は別だが、ただ滞在するだけなら数時間は問題ない。だが、ここが未知の領域である以上、不測の事態に備えて戦闘要員を絞り、残りはデジヴァイスへ待機、あるいは退化して体力を温存するのが上策だろう』
『まあまあ、難しい作戦会議は朝飯を食べてからにしようよ。せっかくショウが作ってくれたご飯が冷めちゃう』
グリフォモンの呑気でマイペースな提案に、ドゥフトモンも苦笑いを浮かべて頷いた。
和やかな朝食を終えた後、ドゥフトモンの提案通り編成の調整が行われた。
ヘクセブラウモン、シャイングレイモン、ドゥフトモン、グリフォモンの4体はエネルギー消費を抑えるため一時的に退化し、想定外の勢力の対応戦力としてジャスティモンとラジエルモンの2体がデジヴァイス内で待機体制を取る形となった。
「……それにしても」
食後の片付けを終えたショウは、小高い丘の上から広がる雄大な景色を見つめ、首をかしげた。
「昨日は暗くて気づかなかったけど……この景色、なんか見覚えがあるような……」
『ショウの知っている場所なの?』
「いや……思い出せそうで出てこないんだよな。喉まで出かかってるんだけど……」
モヤモヤとした感覚に眉をひそめた、その時だった。
──ドドドンッ!!
地響きとともに、遠くの谷間から激しい爆発音が響き渡った。
同時に、遠方の空へ煙が上がり、その中をブーンと鋭い羽音を立てて飛行する巨大な影が視界に飛び込んでくる。
「あれは……サンドヤンマモン!?」
『戦闘が行われているみたいだ。……ショウ、誰かが襲われているのかもしれない!』
「行こう!」
ショウは即座に音のした谷間へと駆け出した。
木々をかき分け、崖の上から見下ろした光景に、ショウは息を呑んだ。
「スコピオモン……! それにフライモンとゴキモンまでいるのか!」
そこにいたのは、完全体である巨大なサソリ型デジモン・スコピオモンを筆頭とする、4体の悪辣な昆虫型デジモンの群れだった。スコピオモンは凶悪なハサミを鳴らし、楽しそうに周囲へ毒針や岩石をばら撒いている。
『ショウ、あそこを見て! 人が倒れてるわ!』
デジヴァイスからラジエルモンの切迫した声が響く。
スコピオモンたちが暴れまわるその足元には、見慣れぬ派手な衣装を着た大人たちが、毒に侵されたように崩れ落ちているのが見えた。
「──まずい、人が襲われてる……! 皆、助けに行くぞっ!!」
ショウは迷うことなく崖を跳び降り、現場へと疾走した。