Re.ポケットモンスターSV~電子生命体との出会い 作:ガチャガチャクツワムシ
倒れ伏したキメラモンの身体からデジタル特有のデータノイズ(0と1の数字)が浮かび上がり、モザイク状の光に包まれて消滅していく──ショウとクリスペイルドラモンが「討伐完了」と思ったその瞬間だった。
「嘘……! 殺したの……!?」
「何で、そこまでしなくても……っ!」
「二人とも落ち着いて! ショウにはちゃんと考えがあるはず──」
「そうだぞ、一旦冷静になれって!」「アギァッス!」
ボタンとネモが青ざめた表情でショウへ詰め寄ろうとする。ハルトとペパー、ミライドンが必死に制止しようとしたが、二人は極限の混乱から冷静さを失っており、聞く耳を持たずに瀕死のキメラモンへと近付いてしまった。
その瞬間──消滅しかけていたはずのキメラモンの眼が血走った赤色に輝き、凄まじい怨念とともに跳ね起きる!
『──ガァァアアァッ!!』
ターゲットを間近に捉えたキメラモンは、容赦なく口を開き、極太の熱線【ヒート・バイパー】をネモとボタンに向けて放った!
「「危ないっ……!!」」
「アギァッス!!」
ハルトやペパーの絶叫が響くが、距離的に肉弾防御は到底間に合わない。ネモとボタンが思わずぎっと目を瞑った──その時。
ドゴォォォンッ!!
激しい爆風と衝撃が周囲を包み込んだが、二人に痛みは一切訪れなかった。恐る恐る目を開けると、そこには──ハルトたちを守るように身を挺したいたミライドン、そして、ネモたちの目の前に立ちはだかる『一匹の赤いドラゴンポケモン』の姿があった。
「あれは……あのときの……!?」
「ショウ! 無事!?」
ハルトは、以前パルデアの荒野で自分を窮地から救ってくれたあの謎のドラゴンポケモンだと直感し、目を見開いた。クリスペイルイドラモンは、その赤いドラゴンポケモンに向かってハッキリと「ショウ」と呼びかけた。
赤いドラゴンポケモンは、冷たい眼光でキメラモンを睨み付けると、両腕に備わった銃身を迷いなく構えた。
「──くらいやがれっ!! 【コロナブラスター】ッッ!!」
紛れもないショウの声とともに、機関銃の銃口から凄まじい超高熱のプラズマレーザーが放たれ、キメラモンの巨体を正面から完全に撃ち抜いた!
『ギ……ガァァァ…………ッ……!!』
今度こそ、キメラモンの肉体は完全に崩壊し、数多のデータノイズに分解されて一つの小さな『デジタマ』へと姿を変えて地面に落ちた。
赤いドラゴンポケモンは、敵の消滅を確認すると、その全身から眩い光を放ち始めた。光が収まると、そこに立っていたのはショウの姿だった。
「ショウが……あの時のドラゴンポケモン……だったの……?」
「人間が……ポケモンに……に変わった……?」
ハルトたち4人と1匹は、目の前で起きたあまりにも常軌を逸した光景に言葉を失い、完全に呆然としていた。
そんな彼らをよそに、ショウは静かに『領域隔離シールド・フィールド』を解除し、転がっていたキメラモンのデジタマを手際よくデジヴァイスのストレージへと回収した。そして、固まっている4人の方へゆっくりと振り返る。
「……詳しい話は、後でたっぷりと教えてやるよ。まずは、こんな危険な場所から地上に戻るぞ」
ショウは短くそう告げると、表情を和らげて歩き出し、ゼロラボの中央エレベーターへと向かって歩き始めた。
翌日
事件の事後処理とリーグへの詳細報告を終え、束の間の静けさが戻ったアカデミーの学生寮。
ショウの自室に集まったハルト、ネモ、ペパー、ボタンの4人は、緊張と好奇心が入り混じった複雑な面持ちでソファに腰掛け、ショウからの説明を待っていた。
「……ま、そういうわけだ。だから俺は、このパルデアのアカデミーに生徒として編入し、原因の調査をしていたってわけ」
ショウがすべてを包み隠さず話し終えると、部屋にはしばしの沈黙が訪れた。4人はあまりのスケールの大きすぎる真実に脳の処理が追いつかず、ただ口をぽかんと開けたまま固まっていた。
「……多分だけど、ボタンは俺の素性を調べようとして、個人情報や裏のネットワークを漁ったんだろ? でも、何も引っかからなかったはずだ」
「……うん。ネットの海をどれだけハッキングしても、アンタの過去なんて文字通り『一片のデータ』すらなかったから……すっごく気味悪かったよ」
ボタンが冷や汗を流しながら素直に頷く。
その横で、ハルトは少しだけ躊躇いながらも、恐る恐る口を開いた。
「あのとき……崖から落ちたのを助けてくれたのって……ショウなんだよね?」
「ああ、そうだ」
ショウが優しく頷いて肯定すると、ハルトの表情が一気にパッと明るくなった。
「そっか……! あのとき助けてくれて、本当にありがとう、ショウ!」
ハルトの感謝を皮切りに、ネモ、ペパー、ボタンの3人も次々と心からの感謝の言葉を伝えた。
「ねぇ、ショウ! もっとさ、その『デジタルワールド』ってところの話しを聞かせてよ! どんなのがいるの? アタシたちともバトルできるの!?」
ネモは先程までの衝撃をすっかり忘れたように目をキラキラさせ、身を乗り出して質問攻めにしてきた。他の3人も「気になるな……」「ちょっと聞いてみたいかも」と興味津々な視線を向けている。
その様子を見たショウは、ふっと肩の力を抜いて柔らかく笑うと、「仕方ない、少しだけとっておきの話を教えてやるよ」と返し、再び仲間たちとの賑やかな時間を紡ぎ始めていくのだった。