Re.ポケットモンスターSV~電子生命体との出会い 作:ガチャガチャクツワムシ
オモダカたちの前に立ちふさがったショウと4体の完全体デジモンは、絶望的な戦況にもかかわらず、どこか不敵で余裕に満ちた雰囲気を漂わせていた。
「誰やアンタ!? 危険やから早よ逃げ──!」
毒に冒され動けないチリが必死の思いで叫ぶ。しかし、ショウは肩をすくめて軽く手を振った。
「いやいや、見た感じそっちの人が怪我して動けそうにないでしょ。大丈夫、こういうのはいつものことだから安心して」
「何を言って……っ!?」
チリが言葉を失う。だが、その直後、オモダカとリラは目の前の怪物たちの“異変”に気づいた。
先ほどまで惨虐に自分たちを追いつめていた巨大サソリ──スコピオモンが、ハサミをガチガチと小刻みに震わせ、驚愕と恐怖に目を見開いている。後ろで不快な羽音を立てていた3体の昆虫たちも、威圧感に気押されてじりじりと後退していた。「……怯えている……!?」
リラが呆然と呟く。
「ま、自分より遥かに強い格上が4体も現れりゃ、そうなるか」
ショウは冷静に戦況を分析すると、即座に手持ちの4体へ指示を出した。
「クリスペイルドラモンは前方迎撃! ライズグレイモン、イェーガードルルモン、ピポグリフォモンはあの人たちの防衛! 周りの毒の散布を警戒しろ!」
『『OK!』』『了解!』『わかった〜!』
「「っ……喋った!?」」
異形の巨体たちが人間と同じ言葉で返答し、一斉に動き出したことに、チリもアオキも目を丸くする。
クリスペイルドラモンは地を蹴り、一瞬でスコピオモンの懐へ滑り込んだ。氷の結晶が刃となって伸びる爪を、豪快なアッパーカットのように突き上げる!
『ギシャアアッ!?』
スコピオモンは咄嗟に巨大なハサミでガードを試みたが、格の違いは明白だった。甲殻が粉砕される鈍い音とともに、右のハサミが根本から一刀両断される。
切り飛ばされた部位は地面に転がると、血を流すこともなく『0』と『1』の二進数データへ分解され、バグのノイズを残して消滅した。
前線のスコピオモンが圧倒されているのを見て、背後の3体(フライモン、サンドヤンマモン、ゴキモン)が焦りから一斉に遠距離技を放つ。
『デッドリースティング!』
『デザートウィンド!』
『ドリームダスト!』
毒針、砂嵐、ゴミの濁流がクリスペイルドラモンへ襲いかかる。しかし──背後を守るライズグレイモンたちが動く間もなく、Cペイルドラモンは溢れ出る冷気のオーラで全ての攻撃を途中で凍らせ、無力化してみせた。
そのまま残ったスコピオモンの左のハサミも容赦なく踏み砕く。
「トドメだ、クリスペイルドラモン!」
『了解!』
苦し紛れにスコピオモンが放った必殺の毒針──『ポイズンピアス』に対し、クリスペイルドラモンは氷結の爪『フローズンクロー』で正面から迎撃、粉砕する!
そのままの勢いで強烈な蹴りを叩き込むと、スコピオモンの巨体は吹っ飛び、後方の3体をも巻き込んで一塊となった。
『──【カロスディメンション】!!』
クリスペイルドラモンの咆哮とともに、4体の足元から絶望的な吹雪が発生。猛烈な絶対零度の冷気が立ち昇り、スコピオモンたちを一瞬にして巨大な氷塊の中に閉じ込めた。
戦闘開始から、わずか数分。
パルデアの頂点たちが窮地に陥っていた脅威が、あっけなく鎮圧された瞬間だった。
凍りついた4体のデジモンたちは、氷の中で徐々に『0』と『1』の数字の羅列へと変わり、光のモザイクとなって霧散していく。
そして、彼らが消え去った痕には──奇妙な模様が描かれた、数個の「巨大なタマゴ」だけが静かに残されていた。
「よし、戦闘終了。お疲れ、クリスペイルドラモン」
ショウが息を吐きながら笑顔で拳を突き出すと、クリスペイルドラモンも巨体をかがめ、ゴツンと自身の拳を優しく合わせた。