Re.ポケットモンスターSV~電子生命体との出会い 作:ガチャガチャクツワムシ
待ち合わせの場所に向かう途中で、ショウはハルトとネモの二人に出会った。
「あれ、ショウ! どうしたの?」
「ん? ああ、実は知り合いがこっちに来るから、迎えに行くところなんだ」
理由を話すと、「えっ! ショウの知り合い!? あたしも会ってみたい!」と目を輝かせるネモに引っ張られる形で、なぜか二人とも一緒についてくることになった。
テーブルシティの真ん中にあるバトルフィールド近くのカフェで席につき、注文した飲み物を口にしながら待っていると、ハルトからふと暗い表情でとある相談を打ち明けられた。
「……っていうことがあったんだ。僕は、一体どうすればよかったのかな……?」
ハルトが打ち明けた内容は、まさにキタカミの里で起きた一連のできごと(『碧の仮面』の物語)そのものだった。ハルトの話を聞く限り、現地の少年・スグリとの関係は決定的にこじれてしまい、闇堕ちルートへと足を踏み入れてしまったのだとショウは確信した。
「うーん……そうだなあ……」
落ち込むハルトへの言葉に悩み、ショウが思案に暮れていると──不意に覚えのあるなつかしい気配を近くに感じ取った。気配のする方角へ視線を向けると、一人の男性がこちらに向かって落ち着いた足取りで歩いてきているのが見えた。
ショウは即座に席を立ち上がると、その男性に向かって丁寧にお辞儀をした。
「お疲れ様です。お忙しい中、わざわざこちらまでお越しいただきありがとうございます」
「構わんよ。可愛い教え子の頼みぐらい、聞いてやらんとな」
その男性は柔らかく、しかしどこか威厳を感じさせる声でショウにそう言った。
ショウとひとしきり言葉を交わした後、男性は隣に座っていたネモとハルトの方へ視線を向けた。
「ところで、そちらの二人は?」
「あっ、はい! 私、ネモと言います!」
「僕、ハルトです。よろしくお願いします……!」
「パルデアで知り合った大切な友人たちです。今回の事情についても話してあります」
急に振られて慌てて自己紹介をする二人に対し、ショウがすかさず補足を入れる。
「そうか。私の名前はソウマという。ショウがパルデアで世話になっているようだね、ありがとう」
そう言うと、男性──ソウマは二人に向かって静かに頭を下げた。自分たちより年上の落ち着いた人物に丁寧にお礼を言われ、ハルトとネモは「あっ、頭を上げてください!」と慌てて手を振った。ソウマが静かに顔を上げると、予定の刻限までまだ少し時間があるということで、そのまま空いている席に腰を下ろし、みんなで雑談を交わすことになった。
しばらく歓談した後、ソウマがふとハルトの顔を覗き込んだ。
「ところでハルト君、何か深刻に悩んでいるようだったが……どうしたんだい?」
ソウマに尋ねられ、ショウが先ほどハルトから打ち明けられたキタカミの里での経緯を代わりに説明した。話を聞き終えたソウマは、少し考える素振りを見せた後、ハルトの目を真っ直ぐに見つめて口を開いた。
「聞いた限りだと……お互いがきちんと話し合っていなかったのが一番良くなかったようだな」
ソウマの静かな指摘に、ハルトはハッとしたように息をのんだ。
「初めて会ったばかりで、まだお互いのことを深く知らない状態で隠し事をしてしまうのは、どうしても相手に不信感を植え付けてしまうものだ。……だが、そのスグリという子の方にも悪かった点は間違いなくある。このすれ違いをうまくフォローしてくれる第三者が周囲にいれば、また展開も違ったのだろうがね」
「……っ」
「私にも昔、似たような葛藤や苦い経験があったからよく分かるよ。だが、まずは腹を割った話し合いをしないことには、どんな誤解も解消できないものだ。まずは素直に謝罪し、相手が対話のテーブルについてくれるよう尽力することが大事だな。もし二人だけで話すのが難しいと感じるなら、遠慮なく周りの大人や信頼できる友人に相談して協力してもらうといい。一人で抱え込む必要はどこにもないんだからね」
経験に裏打ちされたソウマの温かくも力強い言葉に、ハルトの瞳に少しずつ光が戻っていった。
「……わかりました。スグリがちゃんと話し合いに応じてくれるかは分からないけれど……逃げずにやってみます!」
ハルトはキュッと表情を引き締め、力強く頷いた。
「うむ、頑張りなさい。……っと、そろそろ良い時間だな。ショウ、ポケモンリーグへ向かうとしようか」
「はい、分かりました!」
ソウマが手首の時計を確認して立ち上がると、ショウも素早く席を立った。ハルトとネモに別れの挨拶を告げ、ショウとソウマはパルデアの頂点──ポケモンリーグへと向かって足を進めるのだった。