Re.ポケットモンスターSV~電子生命体との出会い 作:ガチャガチャクツワムシ
感慨深い気分になりながら歩いていると、CITYへ通じるゲートの前に見知った人物が立っているのが見えた。
「あれ、アキヒコ先輩」
「ショウ、久しぶりだな。無事で……元気そうで良かったよ」
そこに待っていたのは、直前まで一緒に異変の調査をしていた先輩テイマーのアキヒコであった。
「ショウ、あの時は済まない……僕の不注意で、あんな大変な目に合わせてしまって」
申し訳なさそうに頭を下げるアキヒコに対して、ショウは首を横に振った。
「気にしないでください。それどころか、まさかポケモンの世界に行けるなんて、人生の中でも中々できない貴重な体験をさせてもらってますから」
ケロっとした様子でそう答えるショウを見て、アキヒコは苦笑しながらも胸をなで下ろした。
「そうか……。まずは本部へ帰還しよう。リーダーたちが待っている」
アキヒコがそう促すと、ショウは手元のデジヴァイスを操作して実体化させていたヘクセブラウモンを一度光の中へと戻した。二人は並んでゲートを潜り、無事にサンシャインCITYへと帰還を果たした。
ゲートを抜けると、すぐに出迎えの声が飛んできた。
「あれ? ショウじゃないか!! 久しぶりだな、無事に帰ってきたのか!?」
驚きと嬉しそうな声をかけてきたのは、サンシャインCITYとゲートを繋ぐ出入り口のセキュリティを厳重に守るガードデジモンのナイトモン達だった。ショウが懐かしい面々に軽く挨拶を返すと、そのまま足早にリーダールームへと向かった。
リーダールームの扉を開けると、チーム【ライトファング】のリーダーであるコウ、チーム【ナイトクロウ】のリーダーであるサヨ、さらに両チームのサブリーダーであるパルサ、コマチ、そしてドロシーとニュートンといった幹部陣が勢揃いしていた。
全員の前に進み出ると、ショウとアキヒコは背筋を伸ばしてビシッと敬礼した。
「ショウ、ただいま帰還しました!!」
力強い帰還報告が部屋に響く。
「ご苦労。緊急の長期任務であったが、問題なく遂行してくれて本当に感謝する!」
代表してコウが温かく労いの言葉をかけると、部屋を包んでいたピリッとした空気がふっと和らいだ。
「堅苦しい話はこれくらいにして、早速で悪いが、現地での報告を聞かせてもらうよ。報告書は目を通しているが、やはり本人の口から直接聞いておきたくてね」
コウにそう促され、ショウは少し緊張を解きほぐしながら、パルデア地方での一連の出来事や調査内容について詳しく報告していった。一通りの説明が終わり、一息ついたところで、今度はサヨが鋭い視線を向けながら質問を投げかけてきた。
「報告書や今の話にもあった、あの『謎の蜘蛛型デジモン』についてよ。実際に現地で戦闘を行ったあなたから見て、率直にどう感じた?」
ショウは少しだけ思考を巡らせてから、真剣な面持ちで答え始めた。
「そうですね……近くに現地の人間やポケモンがいたため短期決戦を挑みましたが、動きはギュウキモンと酷似していました。あえて比較的戦力の低い者を優先して狙うような狡猾さもありましたね。……ただ、一番引っかかったのは、倒した際にデジモン特有のデータが残留せず、そのまま霧散するように消えてしまったことです。まるで、戦闘訓練やシミュレーションで使われるプログラムの残骸を見ているような……そんな印象を受けました」
ショウの分析を聞いたサヨは、腕を組みながら険しい表情を作った。
「こちら側で独自に調査や解析を進めても、結果は似たようなものだったわ。……やはり、そう簡単に尻尾を出さない厄介代物ね」
「両チームの総合見解としても、あの世界の裏で意図的にあちらの環境やコチラへ干渉しようと目論む存在がいる可能性が高いと見ている。だからこそショウ、君には今回のタイミングで【プラチナランク】に昇格してもらい、今後の対策の主力として動いてもらいたいと考えているんだが……」
続いて、サブリーダーのコマチが組織を代表して今回の重要な懸念事項と打診を伝えた。
それを聞いたショウは、微塵の迷いも見せずに頷いた。
「わかりました。師匠のソウマさんが向こうで代わってくれている間に、こちらでしっかりとランクアップ試験をクリアしてきます」
力強く宣言し、再びビシッと敬礼をキメて退室しようと身を翻したその時──。
「……ちょっと、待みなさい、ショウくん?」
背後から掛けられたサヨの声に、ショウは嫌な予感をビビッと感じ取りつつ、引きつった笑顔でゆっくりと振り返った。
「……なんでしょうか、サヨリーダー?」
「あなたね……あちらの世界で、私のことを陰で『ドSリーダー』って呼んでいたそうじゃない?」
笑顔を浮かべていながら、背後から世界を揺るがしかねないほどのとてつもないプレッシャーをビシビシと放ちながら、サヨが静かに詰め寄ってくる。
「いったい、誰からそんな不確かな情報を……?」
冷や汗を流しながら必死に取り繕おうとするショウに対し、サヨは冷ややかな笑みを返した。
「ふふ、誰から聞いたと思う? あなたの可愛い『お友達』から、たっぷりとね。さて……これまでの労いも兼ねて、少しみっちりお話をしましょうか?」
ゾッとするような微笑みをたたえながら、サヨがジリジリと距離を詰めてくる。ショウは慌てて周囲に助けを求めようと視線を走らせたが──いつの間にか、コウやアキヒコをはじめとした他の幹部陣は「我関せず」とばかりに全員部屋から姿を消していた。
「あ、あのですね、サヨさん、あれには深い事情がですね……っ!」
逃げ場を失ったショウは、冷や汗を滝のように流しながら、必死の弁明を繰り出すハメになったのだった。