Re.ポケットモンスターSV~電子生命体との出会い 作:ガチャガチャクツワムシ
圧倒的であった。
パルデアの頂点たちが苦戦していた悪夢のような怪異を、どこからともなく現れた少年と、彼の引き連れる4体の巨躯──特にあの氷の甲冑を纏ったドラゴンのような存在が、一瞬にして踏みにじり、消滅させてしまったのだ。
「なるほどな……」
重厚な声にオモダカたちが振り向くと、頭部に狼の面影を残す二足歩行の騎士──イェーガードルルモンがこちらを見下ろしていた。
『ショウ! この者たち、全員がスコピオモンたちの毒を受けているぞ!』
「なんだって!? 本当か、イェーガードルルモン?」
『ああ。戦闘中、気づかれないように微弱な痺れ毒を霧状にして撒いていたみたいだ』
ショウと呼ばれた少年は手首の高機能端末──デジヴァイスをこちらへ向け、スキャンするように画面を走らせた。
「……本当だ。思考と運動神経を緩やかに鈍化させる特殊な毒データか。とりあえず浄化しないと……」
ショウはデジヴァイスを掲げると、凛とした声を響かせた。
「リアライズ──ラジエルモン!」
眩い光が溢れ出し、先ほどの4体を遥かに凌ぐ荘厳で神々しい圧を放ちながら、黄金の翼を持つ天使のような姿──究極体デジモン・ラジエルモンが姿を現した。
「ラジエルモン、【ファイナルヒール】を頼む!」
『ええ、任せて。【ファイナルヒール】!』
ラジエルモンが両腕を広げると、神聖な暖かな光の奔流が崩れ落ちていた4人をやさしく包み込んだ。
その瞬間、体を苛んでいた重苦しい倦怠感、激痛、そして毒による痺れが、嘘のようにスッと消え去っていく。
「これは……!? 体が、軽い……!?」
「なんて……なんて心地よい光なのでしょう……!」
驚きに目を見開く死んだ魚のような目をした男性と、スーツを纏った凛とした女性に対し、ショウは手際よくデジヴァイスを操作しながら説明した。
「ラジエルモンの【ファイナルヒール】は特別でね。対象のどんな傷や病気、状態異常も完全に癒すことができるんだ」
チリやオモダカも立ち上がり、自身の体に異常がないことを確認して息を呑んだ。
「さてと。急で申し訳ないんですが、ここがどこなのか、色々とお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「ええ、もちろんです。命の恩人に対して、拒む理由はありません」
オモダカが深く頷き、ショウへ答えようとした──その時。
「オモダカさぁぁぁん!!」
遠くから幼い叫び声が響き、鍵の形をしたポーチを跳ねさせた小さな少女と、大柄で金髪の男性が息を切らせて駆け寄ってきた。
「ポピーさん、ハッサクさん!」
「怪我がなくてよかったですぅ〜〜っ!」
ポピーと呼ばれた少女は泣きじゃくりながらオモダカに抱きつき、ハッサクもまた、全員の無事を確認して胸を撫でおろしていた。
「無事でしたか! 激しい爆発音が響いたため、胸騒ぎがして駆けつけたのですが……」
安堵する彼らのやり取りを見つめながら、ショウの思考は激しく回転していた。
(……オモダカ? ポピーに、ハッサク……? オモダカって、あのポケモンの……!? よく見たら、SVのキャラクターそのまんまじゃないか……! おいおいおい、マジかよ……ここ、ポケモンのパルデア地方なのかよ……!?)
異次元への流転、そして目の前に存在する『知っているはずのゲームの人物たち』という現実に、ショウが眩暈を覚えかけた──まさにその時。
ピピピピッ! ピピピピッ!
ショウの手首で、デジヴァイスが甲高い電子音を鳴らし始めた。
「──っ! 失礼……こちらショウ」
『ショウ! 無事だったか……!? よかった、繋がった! すまない、僕が油断したばかりに君を巻き込んで……!』
スピーカーから聞こえてきたのは、調査ミッション中にはぐれてしまった先輩・アキヒコの声だった。
「アキヒコ先輩! 俺も油断していたので気にしないでください。それより先輩、ついさっきスコピオモンを含めた4体の昆虫型デジモンが、ゲートからこちらへ現れました」
『なに……!? くそっ、やっぱりか……!』
ショウが倒したばかりのスコピオモンについて報告すると、アキヒコは重苦しい声で続けた。
『実はな、ショウ……君が消えた後、例の異次元ゲートがデジタルワールドのあちこちで同時多発的に出現しているんだ。複数のデジモンたちが吸い込まれ、消息を絶っている……!』
「マジですか……!?」
ただでさえ見知らぬポケモンの世界へ飛ばされたというのに、デジタルワールド全体を巻き込む大災害の報せを受け、ショウは「嘘だろ……」と頭を抱えて絶句するのだった。