Re.ポケットモンスターSV~電子生命体との出会い 作:ガチャガチャクツワムシ
ショウとヒョウガが合流したことで、謎の結晶から放たれていた圧倒的な敵意やプレッシャーはスッと霧散していった。辺りが静けさを取り戻し、ハルトたちもようやく落ち着きを取り戻した頃を見計らい、ショウは声をかけた。
「それじゃあ……ムーンミレニアモン、そろそろ元の1つの姿に戻ってくれ」
『……あぁ』
ショウの促しに頷くと、ヒョウガは手元のデジヴァイスを掲げ、ミレニアモンの残りをリアライズさせた。
現れたミレニアモンはどこか虚ろな目をしており、まだ自我の大部分が存在していないような不安定さを漂わせている。
「ミレニアモン、そしてムーンミレニアモン──ジョグレス!!」
「──【ズィードミレニアモン】!!」
ヒョウガが気合の入った力強い叫び声を上げると、二体のデジモンが眩い光に包まれ、瞬く間に融合して一回りも二回りも巨大な一つの姿へと昇華した。
「懐かしいな……この完全な姿に戻るのは、いったい何千年ぶりか……」
圧倒的な威厳を纏いながら、しみじみと呟くズィードミレニアモン。その言葉に、そばで聞いていたブライアがハッと反応して身を乗り出した。
「何千年ぶりとは……! では、かつてこの地に伝わる『ヘザー』という人物をご存知なのですか?」
「そのヘザーという名が誰を指すのかは分からん。だが、はるか昔に数人の人間がここへ足を踏み入れたことは確かだ。……もっとも、当時、最後の生き残りの小さき者がは完全な休眠に入らねばならなかったため、その者たちの記憶を曖昧に改変し、地上へと送り返したがな」
ズィードミレニアモンが淡々と事実を告げると、パルデアの歴史書に残されていた不自然な記述の謎が鮮やかに解け、ブライアは「なるほど……道理で!」と深く納得したように目を見開いた。
「よし、やるべきことも済んだし、そろそろ一旦地上へ戻ろうか」
ヒョウガの合図に合わせ、一行はエリアゼロの穴を抜けて無事に地上へと帰還した。
地上に戻ると、ハルトたち一行と別れ、入り口付近で待機していたソウマたちと無事に合流を果たした。
「おかえり、ショウ、ヒョウガ。無事に目的の相手と出会えたようだな」
「あぁ、心配をかけたな、ソウマ」
そう言いながら、ヒョウガは旧知の仲であるソウマとガッチリと拳を合わせる。
「師匠、そちらの地上の方は何か異常などありましたか?」
一連の報告を終えると、ショウが気になっていたことを尋ねた。
「あぁ、時空間の歪みからか、いくつか厄介な究極体デジモンが数体ほど這い出てきたくらいだな。まぁ、大半は相棒のクロノモンが綺麗に片付けてくれたがね」
「さすがですね……。こちらも最深部で似たような連中に遭遇しましたよ」
「そうか……。まあ、これ以上何も起きなければいいんだがな。だが、まだ俺もヒョウガもこのパルデアに控えている。何かあればいつでも遠慮なく手伝うさ」
「ありがとうございます、心強いです」
短い報告と確認を済ませたところで、アリサがふと腕時計に目をやった。
「あ、そうだ。ヒョウガさん、ソウマさん、申し訳ありません。そろそろアカデミーでの本格的な編入の手続きや確認がありますので、私たちはこれで失礼します」
「了解した。こっちの諸々の報告や後始末は俺たちで進めておくから、ショウも今日はしっかり休んでくれ」
「わかりました。それでは失礼します!」
そう告げると、ショウとアリサは揃ってグレープアカデミーへと向かって歩き出した。
そして迎えた翌朝。
ショウが指定された教室へ向かって扉を開け、自分の席に腰を下ろすと、周囲のクラスメートたちは朝からなにやらソワソワと騒がしくざわついていた。
「ねぇ聞いた? うちのクラス、今日からまた新しい転入生が来るんだって!」
「マジで? 男子かな、それとも女子かな?」
「それが女子らしいよ! しかも昨日の手続きの時に見かけたけど、めちゃくちゃ綺麗な人だったって!」
クラスメートたちは新しい転入生の話題で持ちきりになっており、期待の視線が教壇のほうへと向けられている。
(……なんで、わざわざ俺と同じクラスに編入してきたんだ?)
内心で盛大にため息をつきつつ、ショウが腕を組んでそんなことを考えていると、ガラガラと教室の引き戸が開き、担任のジニア先生が朗らかな笑みを浮かべながら入ってきた。
「はーい、みんな席についてくださぁい。知ってる人もいるかもしれませんがぁ、今日からこのクラスに新しい仲間が増えますよぉ。じゃあ、入ってきてくださぁい」
ジニア先生の呼びかけに合わせ、スッと扉の脇から一歩前に踏み出したのは、制服をびしっと着こなしたアリサだった。
「アリサです。……これからよろしくお願いします」
淡々とした自己紹介の声を聴きながら、ショウはこれから始まるパルデアでの学園生活と任務の両立に思いを馳せ、そっと頭を抱えるのだった。