Re.ポケットモンスターSV~電子生命体との出会い 作:ガチャガチャクツワムシ
翌日になり、ショウは準備としてクラベル校長へ夜間のグラウンド使用許可を取りに行った。すると、「ぜひ貴重な進化の姿を資料映像として記録させてほしい」との要望を受け、ショウは快く了承した。
昼間までは約束通りアリサの手持ち集めとレベル上げに付き合い、夜になるまで各自自室で休むことにした。
やがて夜中になり、静まり返ったアカデミーのグラウンドへ向かうと、そこにはすでにクラベル校長とジニア先生がカメラ機材のセッティングを行っていた。
「お待たせしました。すみません、準備を手伝わずに……」
「構いませんよ、ショウくん。こちらから無理をお願いしたのですから」
「そうですか……あ、そうだ。アリサも見学したいとのことなのですが、よろしいでしょうか?」
「ええ、もちろん構いませんよぉ~」
「ありがとうございます。じゃあ連絡しておきますね。……あと、満月までまだ少し時間があるので、ちょっと試したい実験があるんです。ジニア先生、手伝っていただけませんか?」
「いいですけどぉ、何をするんですかぁ?」
しばらくしてアリサがグラウンドへ到着すると、ショウは手持ちからオドシシとエーフィをボールから呼び出した。
「よし、それじゃあアリサ、キルリアを出してくれ。ジニア先生はリキキリンをお願いします」
「はーい!」
「分かりました!」
昨日捕まえたラルトスから進化を果たしたキルリアと、ジニア先生のリキキリンが揃ってフィールドに並んだ。
「よし、それじゃあオドシシは【スキルスワップ】でエーフィと特性を入れ替えてくれ! エーフィは【サイコフィールド】の展開!」
ショウのテキパキとした指示に従い、オドシシとエーフィが即座に技を繰り出す。
「よし、次はエーフィ、周囲のサイコエネルギーをオドシシに向けて放ってくれ! 2人も各自のエスパー技で補助をお願いします!」
頼まれた3体は、中央のオドシシに向かって高密度のサイコエネルギーを一斉に放出した。
「オドシシ、そのまま【バリアーラッシュ】で周囲のサイコエネルギーを吸収しろ!」
オドシシが【バリアーラッシュ】でバリアを形成する瞬間、角のポンポン部分が周囲に漂う膨大なサイコエネルギーをぐんぐんと吸収し始めた。すると突如としてオドシシの全身が眩い神秘的な光に包まれ──そのままアヤシシへと見事な進化を果たしたのだった!
「よっしゃー! 計画通り!」
ショウがガッツポーズを決める横で、ショウ以外の全員──クラベル校長、ジニア先生、そしてアリサまでもが、目の前で起きた前代未聞の進化劇に開いた口が塞がらない様子で驚愕していた。
「ショウさん、もしよろしければ、今の進化について詳しく説明をお願いしたいのですが……?」
アヤシシへと見事に姿を変えたオドシシを見つめながら、クラベル校長は驚きを隠しきれない様子でショウに歩み寄り、上品に首をかしげながら説明を求めた。
「はい。実はヒスイ地方の古い資料を読む機会がありまして。そこに書かれていた条件を紐解いたところ、どうやら戦闘中に【バリアーラッシュ】を一定回数以上、素早く使いこなすことが進化の鍵だと分かったんです。ただ、現行の図鑑には『現代の環境では必要なサイコパワーが足りないため進化できない』と記載されていたので、『それなら外部から足りないサイコパワーを無理やり補充してやればいけるんじゃないか』と思い立ちまして。より効率よく周囲のエネルギーを吸収できるように、あらかじめ【スキルスワップ】でエーフィの特性を『シンクロ』に移し替えておいたんです。……もっとも、うまくいくかどうかは完全に賭けでしたけどね」
「なるほど、見事な論理的推理と実行力ですねぇ!」
ショウの鮮やかな解説に、クラベル校長は深く感心したように頷いた。
その隣で、ジニア先生は新しく誕生したアヤシシの美しい角の構造や毛並みにすっかり夢中になってしまい、目をキラキラさせながらカメラのピントを合わせるのに必死でこちらの会話には全く耳を貸していない。
そんな中、アリサもショウのそばへと歩み寄ると、周囲に聞こえないようそっと小さな声で問いかけた。
「……ところで、その進化に絶対必要な【バリアーラッシュ】自体は、どうやって覚えさせたんですか?」
「ああ、それはな……知り合いのデジモンに頼んで、時空を越えてヒスイの時代までひとっ飛びさせてもらったんだ。そこで『ピートブロック』を探すついでに、現地の野生アヤシシが【バリアーラッシュ】を使っている場面を実際に何度も見せて、こいつに覚えさせたってわけさ」
2人にだけ聞こえる絶妙な小声でサラリととんでもない裏話を明かすショウ。
「なんと……伝説のポケモンであるディアルガやセレビィの力を借りずとも、そんな時間跳躍ができてしまうデジモンがいるのですね……」
「頼んだ俺や、力を貸してくれた知り合いも『本当にできちまったよ』って驚いたくらいだからな。……ま、いろいろと面倒なことになっても困るし、できればこの話はここだけの秘密にしておいてくれ」
ショウがそう釘を刺すと、アリサとクラベル校長は驚きつつもクスリと微笑み、こくりと小さく頷いた。
3人が話を終えたその瞬間──。
「ウッヒョ──ッ!!」
突如として夜のグラウンドに響き渡った、聞き覚えがありすぎる強烈な叫び声。はっと顔を上げると、そこには目を爛々と輝かせ、満面の笑みを浮かべた歴史教師・レホール先生の姿があった。
「ヒスイの時代にのみ存在したと言われる幻のアヤシシではないか!! 文献によればその進化は現代ではとうに失われたはず……一体どうやって現代で進化を成し遂げたのだ!!」
ものすごい勢いで鬼気迫る形相で詰め寄ってこようとするレホール先生。しかし、その進路を遮るように、待ちきれなくなったリングマがずしんと足音を立てて重い巨体を割り込ませた。
『グマァ……ッ!』
「うわっ、悪かったな、お前を待たせてたっけ……。レホール先生、すみませんがその話はあとでたっぷり聞かせますから、まずは先にこちらのリングマを進化させてください!」
「ふむ、そこまで言うなら待ってやろう! だが、あの文献の記述を覆す『ガチグマ』への進化の瞬間……私も一言一句逃さず間近で見学させてもらうぞ!」
レホール先生も好奇心を抑えきれない様子で、目を輝かせながら頷いた。
ショウはふうっと息をつくと、ジニア先生に手際よくカメラのフレーム調整を頼み、リングマを広場の中央へと誘導した。
「さあリングマ、お前の本当の姿を見せてやるよ」
『グマァァ──ッ!!』
クラベル校長が操作する記録用カメラがしっかりと作動しているのを確認し、ショウは首から下げていた『ピートブロック』を外し、それをリングマのガッシリとした額へとそっと近づけた。
瞬間、ピートブロックがまばゆい神秘の光を放ち、リングマの巨体が未知のエネルギーに包まれる! 体格がさらに大きく変化し、荒々しくも気高い新たなフォルムへと姿を変えていく。
「──ワギィィィ──ッ!!」
夜空を切り裂くような重低音の咆哮とともに、ついに【ガチグマ】へと進化を果たした!
新しく手に入れた重厚な己の巨体をガチグマがゆっくりと動かして確かめていると、その嬉しさが限界を超えてしまったのか、突如として巨体でショウにド──ーンと抱きつき、そのまま地面へと押し潰した。
「ぐはっ……! うれしいのは分かったから、まずはその巨体をどけろ……っ!」
ガチグマが慌てて重い体をどけると、今度は先ほど進化したばかりのアヤシシがトコトコと歩み寄ってきて、立派な角でショウの服を引っ張り、無理やり自分の背中へと乗せた。
「おっと……? 思ったより目線が高いな」
『キュエ──ーン!』
アヤシシが我が物顔で誇らしそうに鼻を鳴らす。
するとそれを見たガチグマが「俺だって負けてないぞ!」と言わばかりに、再び大きな腕を伸ばしてショウを自分の背中へ乗せようと強引に引き寄せにかかる。まだ乗せ足りないアヤシシがそれを妨害するように角で割り込み、グラウンドの真ん中でショウの「背中のポジション争奪戦」が盛大に勃発してしまうのだった。