Re.ポケットモンスターSV~電子生命体との出会い 作:ガチャガチャクツワムシ
ハルトと交代してネモがフィールドに立つと、先ほどまで降っていた雨が上がり、パルデアの爽やかな青空へと天候が戻った。
「行ってこい、ガチグマ!!」
『ワギィィーーッ!!』
「いって! ジャラランガ!!」
『ジャララーン!!』
ネモが繰り出したのは、強靭な甲冑のような鱗を身に纏った、うろこポケモンのジャラランガであった。
「ジャラランガか……格闘タイプが入っているから相性面では不利だが、いけるか?」
そう尋ねると、ガチグマはショウの方を振り向いて力強く頷き、そのまま眼前のジャラランガを鋭い眼光で睨みつけた。
「行っくよー! ジャラランガ、【ソウルビート】!」
『ジャララン!』
「なら、こっちは【剣の舞】だ!」
『ワギッ! ワギッ!』
お互いが全能力を底上げする積み技を指示すると、ジャラランガはあらかじめ持っていた木の実を口に含んで飲み込み、減っていた体力を素早く回復させた。
「木の実……オボンの実か」
「正解! これで【ソウルビート】で削れた体力をある程度戻せたよ!」
そう言って満足そうに笑うネモ。一方、ガチグマの全身から微かな火花のような煙が立ち上り、苦悶混じりの険しい表情を浮かべたものの、その全身から溢れ出る圧迫感と力強さが一段と増したように見えた。
「そのエフェクト……まさか、【火炎玉】!?」
「そうだ。ちなみに特性は【根性】のままだ」
ショウがニヤリと笑って答えると、ネモの目の色がガラリと変わった。
「根性+剣の舞の攻撃力……! なら急がないとやばいね! ジャラランガ、【インファイト】!」
「ガチグマ!! 【空元気】!」
ネモの指示を受けたジャラランガが電光石火の速さでガチグマへ肉薄し、怒濤の拳撃を叩き込もうとする。しかし、一瞬足元を取られたのか踏み込みが僅かに甘くなった! そこを逃さず、ガチグマが桁外れの威力を秘めた左腕を力任せに叩きつけると、ジャラランガは激しい衝撃とともに後方へ吹き飛ばされた。
「何で!? ……あっ、そうか! さっきのバトルのせいね!」
「どうやら、先ほどの戦いの影響が残ってたみたいだな」
観客席で見ていたハルトが「どういうこと?」と首をかしげると、隣で観戦していたアリサが静かに解説を加えた。
「先ほどのアヤシシとハルトさんとのバトルで【雨乞い】が使われ、フィールドのあちこちに深い水たまりが出来ていました。ジャラランガは踏み込んだ際にその水たまりで足を取られ、体勢を崩してしまったのでしょう。それに対してガチグマは、元々湿地帯に生息していたポケモンですから、ぬかるんだ足場でも何の問題もなく全力を出せるのです」
アリサの分かりやすい解説を聞き、周りで観戦していた生徒たちも「なるほど……!」と感心したように深く納得した。
「とはいえ、効果抜群の技を直接受けたからな……! ガチグマ、【地震】!」
「ジャラランガ、【地震】で相殺して!」
両者が同時に【地震】を放ち、激しい激震がフィールドを揺らした! しかし、タイプ一致かつ【根性】と【剣の舞】が乗ったガチグマの威力が勝り、ジャラランガは相殺しきれずにダメージを受けて膝をついた。
「追撃だ! 【ドレインパンチ】!」
先ほどの【地震】の振動によって足元の水たまりは綺麗に吹き飛んでいたが、ガチグマは気にも留めず猛然と突進! 唸りを上げる右腕でジャラランガを強力に殴り飛ばした。
「嘘!? ガチグマって【ドレインパンチ】まで覚えるの!?」
「進化したことで覚える技の幅が広がったんだ。トドメだ、【ぶちかまし】!!」
『ワギィィーーッ!!』
「なら、こっちも【スカイアッパー】!!」
『ジャララッ!!』
ジャラランガの渾身の拳が下からガチグマの顎へ強烈に直撃! しかしガチグマの突進の勢いは全く衰えず、巨大な泥の塊と化した巨体でジャラランガへ真っ正面から激突した!
ドッガァァァン!!
凄まじい衝撃音とともに両者ともに大きく吹き飛ばされ、激しく地面を転がった。煙が晴れたそこには、互いに目を回して倒れている2匹の姿があった。
「ジャラランガ! ガチグマ! 両者戦闘不能! よって引き分けですぅ!」
ジニア先生の明るい宣言が響き渡り、熱戦の幕が降りた。ショウとネモは、互いに全力を出し切ったパートナーを労いながらボールへと戻した。
「とっても参考になる素晴らしい映像が撮れましたぁ。お三方、本当にありがとうございますぅ」
カメラを回収しながらジニア先生が深々とお礼を言う。
「こちらこそ。アヤシシとガチグマの実戦での立ち回りや課題をしっかり確認できました」
「僕も教科書でしか見たことのなかったポケモンとバトルができて、すごく楽しかったです!」
「私も! 珍しいポケモンと全力で戦えて最高だったよ!」
三人それぞれが笑顔で返し、バトルの疲れを癒やすためにポケモンセンターへと向けて一度別れた。
しかし、その激しいバトルの光景を、グラウンドから遠く離れた校舎の影から冷ややかに見つめる一つの影があった。
「フム……予想外の戦力が紛れ込んでいるようですが、まあ問題ないでしょう」
その人物が低く呟くと、背後の空間が歪み、禍々しく巨大な影がゆっくりと立ち現れた。
「手始めにお前の力で、あの学園を恐怖で塗り潰してこい」
振り返ることもなく冷淡に命令を下すと、巨大な影は恭しく一礼するかのように首を垂れ、次の瞬間には闇へと溶け込むように消え去った。
「ククク……そろそろこちらも『開宴』の時間ですよ。愚かなユニオンよ……」
底暗い笑い声を残し、その人物もまた煙のようにその場から姿を消した。