Re.ポケットモンスターSV~電子生命体との出会い 作:ガチャガチャクツワムシ
アリサと別れた後、原因を探しながら異界化した校内を調査していたショウは、霧の奥に人影を見かけたため警戒しつつ接近した。そこにいたのは、不安そうに辺りを見回しながら歩くミモザ先生であった。
「ども~ミモりん。どうしてこんな所に?」
「ミモりん言うなし! ……って、それより一体何が起きてるのよ!?」
いつものやり取りを交わすと、幾分か緊張がほぐれたのか、ミモザ先生は何が起きているのか尋ねてきた。
「それを今、調査中。ここはお世辞にも安全とは言えないから、グラウンドまで送っていくよ。そこでアリサと合流する手はずになっているんだ」
「……わかったわ。お願いするわね」
少し考えた後、ミモザ先生はショウの提案を受け入れた。
「それじゃ、行こ……っ!!」
言いかけた瞬間、ショウは直感的に死線を察知し、間髪入れずにミモザ先生を横抱き(お姫様抱っこ)に抱え上げると、全力でその場を飛び退いた!
直後、先ほどまでふたりが立っていた床が凄まじい衝撃とともに爆発した。
「な……なに!? 爆発!?」
巻き上がった煙がゆっくりと晴れると、そこには上半身が凶暴な鬼の如き牛の貌をした男、下半身は禍々しい異形の巨大な蜘蛛という悍ましい姿をした生命体が、不満そうに顔を歪ませながら姿を現した。
「チィ……! ハズレタカ……」
「な、なんなのあれ!? 化け物……!?」
「ようやく姿を現したか、ギュウキモン!! 相変わらず陰湿で姑息な手を使う野郎だ!」
ショウが吐き捨てるように睨みつけると、ギュウキモンは下卑た濁った笑い声をあげた。
「アタリマエダ。オレハギュウキモン、ワザワイヲモタラスモノダ。ネラッタエモノハ、シトメルマデオイヅヅケル……!」
そう言い放つや否や、背中の瓢箪を構え、凶悪な必殺技【魔塵瓢箪】を周囲撒き散らすように解き放った!
「毒ガスか!! リアライズ! ロトスモン!」
「【サーペントキュア】!」
瓢箪のシリンダーから漏れ出た致死性の毒ガスが空間を侵食すると同時に、ショウは妖艶なる究極体・ロトスモンを実体化させた! 両手に携えた杖から放たれた白い治癒の光が、瞬時に蔓延する毒ガスを完治・中和していく。
「チィッ……!?」
思惑を砕かれたギュウキモンは激しく舌打ちすると、再び濃い霧の奥へと姿を消した。
「気を付けろ、ロトスモン! どこから飛び出してくるか分からんぞ!」
「ええ、任せなさい!」
周囲の気配に全神経を研ぎ澄ますロトスモン。そんな中――
「ちょっとショウ! いい加減降ろしなさいよ! 恥ずかしいじゃない!」
ショウの腕の中でミモザ先生が赤くなって抗議の声を上げた。しかしショウは真剣な眼差しを崩さない。
「今降ろしたら、先生の足じゃ確実に狙われて一撃で持っていかれるぞ」
「ええっ!?」
冷や汗を流すミモザ先生の言葉を裏付けるように、次の瞬間、無数の弾幕が襲いかかるギュウキモンの必殺技【千砲土蜘蛛】が視界の死角から放たれた!
ショウとロトスモンは間一髪で再び跳躍して回避! 直後、ふたりが退避した足場が跡形もなく爆破された。
「あなた、ショウにしっかり捕まっていなければ……一瞬でああなるわよ?」
ロトスモンが粉々になった床を指さしながら冷静に忠告すると、ミモザ先生は青ざめた顔で何度も激しく頷き、ショウの首にギュッと強くしがみついた。
「ロトスモン……姿を見せたら次で一気に決めるぞ!」
「ええ……分かったわ!」
緊迫した空気が漂う中、背後から無音で迫る気配――ギュウキモンが粘着質の糸と毒を撒き散らす【八束染縛】を繰り出してきた!
「しまっ……! スピリットエボリューション!!」
瞬時にアグニモンへと姿を変えたショウは、片腕でミモザ先生を抱きかかえたまま、空いた腕で猛火の拳【バーニングサラマンダー】を解き放った! 襲いかかる蜘蛛の糸は一瞬で焼き払ったものの、逃げ切れなかった強酸の毒液がアグニモンの肩口を激しく焼く!
「グッ……!?」
「ショウ!? ……この嫌な奴め! 【セブンズファンタジア】!!」
即座にロトスモンが両手から七色の幻惑光線を照射! 破滅の光を浴びたギュウキモンは視界と意識を奪われ、その場で苦悶の声を上げて激しくのたうち回った。
「ヌオオオ……! メ……目がぁぁっ!」
「二度と誰かの夢を汚さないで。消え去りなさい……【サーペントルイン】!!」
動きを封じられたギュウキモンに向かい、ロトスモンの杖から破壊のブラックホールのような暗黒物質が放たれた。直撃を受けたギュウキモンは叫び声を上げる暇もなく消滅し、一粒のデジタマへと還っていった。
「ショウ! すぐに手当てするわ! 【サーペントキュア】!」
激動の戦闘が終わると同時に、ロトスモンは温かな光でアグニモンの負傷した肩を優しく包み込んだ。瞬く間に毒は解け、傷口は綺麗に塞がっていった。
「サンキュー、ロトスモン。助かったよ……よし、このままグラウンドへ向かうか」
「ダメよ、少し休んで体力を整えてからにしなさい。……モニタモン、申し訳ないけれど、アリサに無事を伝えてくれる?」
「承知いたしましたぞ!」
影から現れたモニタモンは、ロトスモンの頼みに大きく頷くと、再び素早く闇の中へと消えていった。
「分かった、お言葉に甘えて少し一休みしよう。ミモザ先生も大丈夫ですか?」
「え……ええ、おかげさまで怪我ひとつないわ。……ありがとね、ショウ」
胸を撫でおろしたミモザ先生の言葉を聞きながら、ショウたちはグラウンドへ向かう前の束の間の休息を取るのだった。
少し休んで体力を回復させたショウは、ミモザ先生を連れてグラウンドへと戻った。グラウンドにはすでにアリサとクラベル校長が到着しており、お互いにこれまでの状況を報告し合う。
「ギュウキモンを倒せばすぐに霧が晴れると思ったけど、どうやらそう単純な話じゃなかったみたいだな」
「そうですね……。モニタモン、他の生徒や先生たちの避難状況はどうですか?」
「現在、我が輩の仲間たちが目を覚ましてしまっている方々を一時的に眠らせ、このグラウンドへと安全に移動させておりますぞ。ショウ殿から事前に警戒を言い渡されていた方々も、もうすぐこちらにいらっしゃいます」
「おっ! どうやらちょうど来たみたいだぞ」
ショウがグラウンドの入口を指さすと、ハイビジョンモニタモンに加え、手足がバネ状になっており忍者のような手裏剣を携えたデジモン――シュリモンに誘導されながら、ハッサク先生、ハルト、ネモ、ボタン、ペパーの一行が続々と姿を現した。
「皆さん、無事なようで本当に良かったです!」
「お疲れ様! そっちは大丈夫だった!?」
仲間たちの無事を確かめ合いながら、合流したミモザ先生へも今回の異変についての簡単な説明と状況の確認が行われる。
「ショウよ」
周囲の警戒を続けながら、ショウは新しく現れた人型の忍者風デジモン――フウマモンへと視線を向けた。
「どうした、フウマモン?」
「ふむ。眠らせた対象の保護はこれで最後だ。残りのエリアの見張りは、自分が召喚したアンデッドデジモンたちに任せてある」
「了解。何か新しい手がかりや、今回の元凶に関する情報はあったか?」
「あぁ。この界隈の数カ所に、空間を歪ませるための不気味な装置が設置されていた」
「装置の護衛は?」
「基本的には完全体デジモンが配置されていたな。ただ、すでに2カ所ほど配置されていたはずの個体が消えている場所があった」
「それは……もしかして、私たちがさっき倒したデジモンたちのことですかね?」
「おそらくそうだろう。その機械を詳しく調べてみたいのだが、回収して持ち帰ることは可能か?」
「任せろ、すぐに回収してくる」
フウマモンが短く答えると、そのまま忍者のように地面の影へと溶け込むようにして姿を消した。
「フウマモンが戻ってくるまで、各自少しでも体力を温存しておこうぜ」
ショウの提案に、一同は静かに頷き、それぞれ一息ついて態勢を立て直す。
ミモザ先生は、事情を聞き終え周囲に並ぶデジモンたちを見回しながら、複雑そうな顔で染々と呟いた。
「普通に生活していたら、こんなの絶対『何を言っているの?』って聞き流すところだけど……実際にあの化け物に襲われちゃったからねぇ、信じるしかないのよね……」
そのミモザ先生の呟きに、ショウとアリサ以外のメンバーは皆、無言で深く頷いて同意した。
「まぁ、この手のトラブルにしては、まだ軽い方なんじゃないのかな~?」
「……ショウさん。これを軽く感じるのは、私たちくらいですよ」
アリサがジト目を向けながら的確なツッコミを入れる。
「やっぱりそうか?」
「いや、どんだけ場数を踏んできたのよ……!」
ピリついていた空気が少しだけ和らいだその瞬間――。
グラウンドの中央の空間が突然激しく歪み、禍々しい次元ゲートが開き、そこから威圧感を放つ2体のデジモンが飛び出してきた。
「「グルルルル……ッ!!」」
「あれは……ワルシードラモンとスカルバルキモン!?」
「機体識別反応からして、あいつらは『クーロン商会』の連中のようだが……様子が明らかに異常だな」
「あとで詳しく事情を聞いてみましょう! それより、まずは生徒や学校の安全のためにあの2体を止めますよ!」
「了解だ!」
そう叫ぶと、ショウとアリサはそれぞれのデジヴァイスを構え、迎撃のためのデジモンたちを次々とリアライズさせた。