Re.ポケットモンスターSV~電子生命体との出会い 作:ガチャガチャクツワムシ
謎の霧が発生した騒動から一夜が明けた翌日、ショウとアリサはハッサク先生に付き添われ、パルデアポケモンリーグのトップであるオモダカのもとへと赴いた。
「……以上が、昨夜に起こった一連の騒動の報告となります。なお、今回の原因となった異界化装置を作製・設置した人物については、現在も鋭意調査を行っているとのことです」
「……なるほど、状況はよく分かりました。調査結果が判明し次第、速やかに再度報告をいただけますか」
オモダカから冷静かつ的確な指示とねぎらいの言葉を受け取り、正式な報告を終えた二人は、ハッサク先生と別れてソウマたちの滞在するアパートへと向かった。事前に連絡を入れていたため、到着するとソウマとヒョウガの二人はすぐに二人を迎え入れ、スムーズに情報のすり合わせと話し合いが始まった。
「報告の大まかな内容は既に聞いている。昨夜は本当にお疲れ様だったな」
ソウマたちが労いの言葉をかけつつ、さらに踏み込んだ詳細な報告を促す。
「そうか……。実は、本部の方で解析班が回収したワルシードラモンとスカルバルキモンのデータを調べたところ、以前の『クロノコア事件』の際に出回った悪質なウイルスをベースに改造されたものが検出されたそうだ。この新型ウイルスは、これまでの一般的なワクチンプログラムが通用しないが時間が経てば効果が消える仕様になっているから、今後も十分注意してくれ」
ヒョウガが深刻な表情で解析結果のデータを二人に共有する。
「そうなのですね……。ちなみに、あの霧を引き起こしていた機械の構造や目的については何か分かりましたか?」
「あぁ。どうやらあの機械には、デジタルワールドと人間界の空間を強制的に『同期』させる機能が組み込まれていたようだ。ただ、こちらの世界と完全に同期させるのは本来かなり負荷が高く難しいらしくてね……そのせいで今回は霧のよう的中途半端な形でしか同期できなかったようだが、放置すれば時間はかかるが少しずつ同期が進んでしまう危険な代物だったらしい」
ソウマが説明を付け加えると、ショウは一つ懸念点を口にした。
「成る程……今回は幸いにも夜中で、生徒や教員のほとんどが自室で眠っていたのが不幸中の幸いでしたね。起きてしまっていた方々には、念のためモニタモンたちに頼んで忘却の魔法をかけて記憶の整理をして貰っています。これがもし真昼間だったら、大パニックになって大変なことになるところでした」
「それで今後の話なんだが……俺やソウマは、そろそろこちらの世界を引き上げて本拠地へ戻らなければならない。いつまでもこの世界にいるには、俺たちは少しばかり『過剰戦力』過ぎるからな」
「すみません……本来なら2週間程度の滞在予定だったのを、無理を言って1月以上も引き延ばしてもらいっぱなしで……」
「気にするな。本部からも『向こうが落ち着くまでしばらくしっかりと休養を兼ねて滞在してこい』と言われていたからな」
ソウマはそう言って、からりと笑ってみせた。
「それに、本部からは『現地で人手や応援が必要になった場合は、お前らの同期のメンバーをいつでも増援として送り込む手筈を整えている』との通達も来ている。何か少しでも気になる兆候や異変があれば、遠慮せずにすぐに連絡を入れてくれとのことだ」
「分かりました、ありがとうございます」
ショウとアリサが真剣な表情で頷く。
「ところで話は変わるが、あのとき騒動に巻き込まれていた、ミモザという医務室の先生はどうなったんだ?」
「今回の件について、口外しないとしっかりと約束を取り付けています。今後は私たちの心強い外部協力者として、学内の不審な動きや情報を集めてくれることになりました」
あの後、ショウたちがミモザ先生に事情を説明して協力を仰いだところ、彼女は快く引き受けてくれたため、今後は学内における貴重な情報源として味方になってくれることになっていた。
「そうか……それなら、もし万が一メンバーが怪我をしても、学内や外部に変に詮索される心配がなくて安心だな」
一通りの重要な話し合いを終え、ショウとアリサが席を立って退室しようとすると、ソウマとヒョウガは改めて力強く念を押した。
「お前たちも、あまり無茶はするなよ? 俺たちがパルデアを離れるまで、あと1週間はまだこちらの世界に滞在しているから、何かあればいつでもすぐに連絡してこい」
「はい、承知しています。それでは失礼します」
二人は師匠たちの温かくも厳しい見送りを受けながら、静かにアパートの部屋を後にするのだった。