Re.ポケットモンスターSV~電子生命体との出会い 作:ガチャガチャクツワムシ
ミモザ先生から得た目撃情報を頼りに、ショウとアリサはカラフシティへと急行した。
「カラフシティのバトルフィールドだったよな」
「そうなります。まずは、ジムリーダーのハイダイさんに詳しい話を聞いてみましょう」
さっそくジムへと足を運び、ハイダイ本人から目撃証言を聞き出すことに成功した。
「それがね、オイラが噂を聞きつけて駆けつけたら、もうとっくに居なくなってしまっていたんだい。周りの人に聞いてみたら、トレーナーの年齢はショウ君と同じくらいの男の子だったそうだい」
「なるほど……。トレーナーについて、他に何か変わった様子はありませんでしたか?」
「ああ、バトルを目撃していた子が言うに、『手持ちのポケモンに命令して戦わせている』というよりは、『自分の制御もできていない暴れ馬を無理やり引き連れている』ように見えたらしい。下手したら周囲の観客にまで攻撃が及びそうで怖かったとも言っていたね。そもそも、そのポケモン自身がトレーナーに懐いているようには全く見えなかったそうだい」
「……まぁ、ディアトリモンの狂暴性を考えれば、そのトレーナーの言うことを完全には聞いていないのも納得だな」
「分かりました。お忙しい中ありがとうございます。また何か分かったら教えてください!」
「了解だい! 気をつけて調査するんだよ!」
ハイダイから貴重な話を聞き出した二人は、礼を告げてジムをあとにした。
「なぁ、お嬢。そういえばお前のジムバッチの残りっていくつだっけ?」
「その『お嬢』って呼ぶの、本当にやめてください……。バッチは残り、ナッペ山のジムを残すのみです」
「そうか。じゃあ、お前はフリッジタウンを経由してナッペ山ジムの挑戦に向かってくれないか? 俺はピケタウン方面からボウルタウンにかけて聞き込みをしてみる」
「分かりました。……ところで、ソウマさんたちはどうなっていますか?」
「さっきメールを送ったら、もう返信が来た。ソウマさんがテーブルシティからセルクルタウン、ヒョウガさんがマリナードシティからチャンプルタウンにかけてそれぞれ聞き込みを担当してくれるそうだ」
役割分担を確認し合うと、ショウとアリサは手分けしてそれぞれの調査区域へと向かった。
ピケタウン方面へ向かう途中、ショウはハッコウシティに立ち寄り、ちょうど街中で撮影をしていたナンジャモに事情を説明して目撃情報がないか尋ねてみた。
「あー、それならウチの配信のチャット欄でも『なんかヤバい鳥を見た!』って噂になってたけど、ボク自身はまだ生で見たことないなぁ~。とりあえず、ボクのチャンネルのネットワークでも何か分かったら連絡するよ~!」
ナンジャモからの情報を得たショウはそのままピケタウン周辺の街道を進んでいくと、やがて道路脇の草原に、不自然にえぐれた地面や周囲の木々が激しく破壊された──巨大な生物同士が激突したような戦闘の痕跡を発見した。
「これは……かなり激しい衝突の跡だな。ロトム、この辺りの痕跡を写真に残してくれ!」
「了解ロト! しっかり記録するロト!」
ロトムフォンで写真を撮り終え、周囲を警戒していると、上空の気配に反応するように、カラス天狗のような姿をした成熟期デジモン──カラテンモンが音もなく舞い降りてきた。
「ショウか」
「カラテンモン、ちょうどよかった。この辺りで何か異常があったか知っているか?」
「うむ……実はつい先日、この場所で成熟期デジモン同士が激しく争うのを目撃した。傍らに人間の子供の姿があったから、新しくこちら側に送り込まれたテイマーかと思ったのだがな。念のためにその人間の精神を覗き見させてもらったところ、どうやら奴らは近いうちに『何らかの大きな計画』を実行に移すつもりらしい」
カラテンモンの重々しい報告に、ショウの表情が引き締まる。
「その計画の具体的な内容は分かったか?」
「すまぬ、そこまでは表面の浅い部分しか読めずにな……。ただ、読み取った断片的な思考の中に、この森を縄張りにしている連中──『スター団』の名前が浮かび上がっていた」
「森を根城にしているスター団か……! 分かった、ありがとうカラテンモン、助かったよ」
「構わぬ。……ついでだ、某が引き続きそのスター団とやらの動きも影から監視しておこう」
「頼む。俺はすぐにソウマさんたちにこの件を連絡し、ポケモンリーグにも一報を入れて急いで合流する!」
ショウは仲間たちに連絡網を飛ばし、新たな脅威への対策を急ぐべく、険しい顔つきで次の目的地へと駆け出したのカラテンモンからの情報を携え、ショウは大急ぎでポケモンリーグの本部へと向かった。到着すると、タイミング良くソウマたちとも合流することができ、そのまま揃ってオモダカの執務室へと通される。
「アリサは今どうしている?」
「さっき連絡が入り、ちょうど今からジム戦に挑むところだそうです」
「なら、終わり次第合流だな」
そう短く確認を済ませると、待ち受けていたオモダカに加え、クラベル校長とボタンの姿もあった。
「急な訪問になり申し訳ありません」
3人揃って頭を下げると、オモダカは柔らかい笑みを浮かべながら頭を上げるよう促した。
「それで、緊急の報告があるとのことでしたが……」
「はい。実は……」
ショウがカラテンモンから得た情報を包み隠さず伝えると、オモダカをはじめとする室内の空気が一気に深刻なものへと変わった。
「なるほど、確かに一刻を争う事態ですね。ちなみに、目撃されたという争っていたデジモンは何だったかわかりますか?」
「カラテンモンが言うには、タンクモンとケンタルモンだったそうです」
ショウがそう言いながらデジヴァイスを操作すると、空中に2体の詳細なデジモンデータが投影された。
「しかし、謎なのは……一体どのようにして、デジモンたちを使役しているのか、ですね」
クラベル校長が腕を組んで疑問を口にすると、ヒョウガが腕を組みながら推測を述べた。
「通常なら、力で認めさせるのが一番の近道だが……タンクモンあたりなら、巧みな交渉や物資の取引で懐柔している可能性も捨てきれないな」
「いずれにせよ、本人の口から直接聞き出すしかない。となれば、当面の最優先事項はスター団の各アジトの監視と防衛だな」
ヒョウガの冷静な分析に、全員が険しい表情で頷いた。
その時、ヒョウガのポケットのデジヴァイスがけたたましい電子音を鳴らした。画面を確認すると、通信の相手は調査に向かっていたアリサだった。
『皆さん! 緊急事態です! スター団のフェアリー組のアジトが、正体不明のデジモンたちに襲撃されたそうです!』
「なんだって!? 本当かそれは!」
ヒョウガが声を張り上げて問い質すと、アリサは緊迫した声で返答した。
『はい! 先ほど、現地で見回りをしていたユキダルモンから緊急連絡が入りました!』
さらにそのやり取りの最中、ショウのデジヴァイスにも別の回線から直接通信が入ってきた。
『ショウか! 某だ!』
「カラテンモン! どうしたんだ!」
『先ほど、某が監視を任されていた場所に、別のデジモンたちが奇襲を仕掛けてきた。今から救援に向かう!』
「わかった! 頼む、だが無理はするなよ!」
『承知!』
短いやり取りのあと、カラテンモンは通信を切った。
「アリサ、今の通信は聞こえていたな。君はその場をユキダルモンたちに任せ、別の組の救援へ向かってくれ!」
『分かりました! 私はそのまま格闘組のアジトへ向かいます!』
「師匠、ヒョウガさん、俺は今ガルダモンが付近を巡回している悪組へ急ぎます!」
「わかった。ならソウマはテーブルシティで待機し、万が一に備えてくれ。俺は炎組の救援に向かう!」
「了解です!」
オモダカも即座に反応する。
「こちらからも付近のパルデアのジムリーダーたちに連絡を回し、各アジトの救援に向かわせます!」
「なら私は、格闘組へ向かうアリサさんのサポートに入ります!」
クラベル校長に続き、ボタンも「ウチも加勢する!」と立ち上がろうとしたが、ショウがピシャリとそれを制した。
「待て、ボタンはここに残った方がいい」
「なんでよ!? ウチだって……!」
「おそらく、今回の連中の真の狙いや標的の中に、君も含まれていると考えられる」
「安全のためだ。今はどうかここに残っていてくれ」
ショウ、ヒョウガ、ソウマの圧倒的な圧と真剣な眼差しに、ボタンは悔しそうに歯噛みしながらも、小さく頷くしかなかった。
「ショウ、行くぞ!」
「了解!」
一刻の猶予もないと判断したショウとヒョウガは、それぞれのアジトへ向けて全速力で駆け出していった。