Re.ポケットモンスターSV~電子生命体との出会い 作:ガチャガチャクツワムシ
ソウマからの緊迫した連絡を受け、ショウとアリサはすぐにテーブルシティへ急行しようと身構えた。しかし、周囲にいたパルデアのジムリーダーたちに先ほどの襲撃情報を共有し、手分けして警戒を促そうとしたまさにその時――モニタモンが慌てふためいた様子で飛び出してきた。
「大変ですぞ……! このエリア一帯に向けて、大量の敵対デジモンたちが凄まじい勢いで進軍してきておりますぞ!」
「マジかよ……!」
「どうやら、私たちがソウマさんたちと合流するのを、何が何でも阻止したいみたいですね……!」
「仕方がない。めんどくさいが、さっさと片付けてソウマたちのところへ合流するぞ。……なにせ、あいつが本気で暴れすぎると周囲の被害がシャレにならないからな!」
ヒョウガが不敵に笑いながらそう告げると、ショウとアリサも力強く頷いた。二人はそれぞれデジヴァイスを掲げ、迎撃のためのパートナーデジモンたちを一斉にリアライズして、押し寄せる敵の群れへと立ち向かったのだった。
【ハルトサイド】
ショウからの緊急連絡を受け、ハルトは一目散にポケモンリーグの控室へと走り込み、ボタンの姿を確認すると心底ホッとした表情を浮かべた。少し遅れてペパーとネモも息を切らしながら部屋に飛び込んでき、同じように胸を撫で下ろしている。
部屋の隅で椅子に腰掛けていたオモダカは、安心したように柔らかく微笑みながら全員を落ち着かせ、今何が起きているのかを簡潔に説明した。
「皆さん、ご苦労様でした。……ただ、ワタクシも各方面からの報告をさらに精査しなければなりません。皆さんは引き続き、ボタンさんの護衛をよろしくお願いいたします」
オモダカは静かに頭を下げると、テキパキと足早に部屋を退出していった。
静まり返った部屋の中で、ボタンは膝の上でぎゅっと拳を握りしめ、震える声で呟いた。
「みんな……ウチ、どうしたらいいの……?」
本当なら、スター団の「マジボス」である自分が、今すぐ仲間たちの危機を救うために駆けつけたい――その悔しさと不安が痛いほど伝わってくる。ハルトが何か言葉をかけようと口を開きかけたその時、部屋の扉が無造作に開いた。
そこに立っていたのは、ショウの師匠であるソウマだった。
「誰だ……?」
「ショウの師匠だって!」
ペパーの呟きに、ネモがすかさず説明を加える。ソウマは部屋にいるハルトたちを鋭い視線で見回すと、落ち着いたトーンで話し始めた。
「全員揃っているな。……結論から言えば、先ほど入った連絡で、スター団のボスたちや団員たちは全員多少の怪我はあるものの、ほとんどが無事だと確認が取れている」
ソウマからの意外な報告に、ボタンの目から緊張の糸がスッと緩んだ。
「ただ、今回の襲撃で指示を出していた元凶の影はいまだに掴めていない。安全が完全に確認できるまでは、ボタン君はここに留まっていてくれ」
その言葉を聞くと、ボタンは再び表情を曇らせ、やり場のない悔しさに唇を噛み締める。そんな彼女の様子を見たソウマは、フッと小さく笑いながらフォローを入れた。
「直接現地に会いに行くのはダメだが……電話で無事を確認するくらいなら問題ないだろ。それに、クラベル校長ももうすぐテーブルシティに着くそうだから、詳しい状況はあとでアカデミー側からいくらでも聞けるさ」
ソウマの思いがけない気遣いにハッとした表情を見せたボタンは、震える手でスマホを取り出すと、すぐさまスター団のボスたちへ次々と連絡を入れ始めた。実際に仲間たちの生還した声を聞いた瞬間、ボタンはこらえきれず、大粒の涙をポロポロと零しながら安堵に浸るのだった。
ちょうど通話が終わり、ボタンが涙を拭っていたその時――連絡を受けてテーブルシティのポケモンリーグへ到着したクラベル校長が部屋を訪れ、さらなる詳しい事情説明が始まった。しかし、その話の途中でショウからソウマの元へと緊急の連絡が入り、ソウマは一度席を外して通信に応じた。
数分後、戻ってきたソウマの表情は先ほどよりもさらに引き締まっていた。その直後、誰もいないはずの空間から、奇妙な姿をしたデジモンが突如として飛び出してきた。
「Hey!!! BOSS! 大変ネ!」
「どうした、ツワーモン」
現れたのは、忍者風のコミカルな姿をしたデジモン――ツワーモンであった。
「このCITYを丸ごと包囲するように、大量のデジモンを引き連れた人間たちがすごい勢いで進軍してきているネ!」
ツワーモンの切迫した報告に、事情を把握していなかったハルトたちは完全に言葉を失い、驚愕の表情を浮かべる。しかし、ソウマだけはすべてを察したように冷徹な笑みを浮かべた。
「やっぱり……本命は、このテーブルシティとポケモンリーグってわけか」
ソウマは振り返り、室内にいる面々へと素早く指示を飛ばす。
「ツワーモン! すまないが、ここにいる人たち……特に、その眼鏡をかけた女の子の護衛を最優先で頼む!」
「OKネ! で、BOSSは?」
「俺は、そのお友達を正面から盛大に撃退しに行ってくる。……なにせ、この1ヶ月ほどろくに暴れられなくてストレスが溜まっていたところだからな」
そう言い放つと、ソウマは狂気と戦闘狂の混じった獰猛な笑かべていた。
ソウマがそう言いながら外に行こうとすると、正気を取り戻したツワーモンは慌ててその行く手を遮るように手を振り回した。
「STOP!!! BOSS! BOSSが本気で暴れたら町の被害がBIGになりすぎるネ! 頼むからちゃんと手加減してネ!?」
「わかっているさ、この街の周辺には余計な被害は出さないように上手くやるよ」
ソウマは不敵に笑いながら、頭を抱えて必死に引き止めるツワーモンを軽く手で払いのけ、そのまま迷いのない足取りで部屋から出ていってしまった。
「Oh、行っちゃったネ……ほんと頭が痛いネ……」
「あの……」
頭を抱えて大袈裟にため息をつくツワーモンに、ボタンはおずおずと声をかけた。
「Watts? Girl! どうしたネ?」
「あ、あの人……たった1人で向かって、本当に大丈夫なの……?」
敵が大量のデジモンと人間を引き連れて進軍してきていると聞き、さすがに心配になったボタンが尋ねると、ツワーモンは呆れたように肩をすくめた。
「Don't Worry! むしろ心配するなら向こうの敵さんの方に同情しちゃうネ」
「えっ……?」
「この世界の人間は、BOSSの本当の怖さを何も知らないから気楽でいいけどネ……BOSSは、敵に回すと最高に恐ろしいお人なのサ!」
「そうですぞ! 我らが世界において、ソウマ殿と正面から敵対することは『死』と同義でありますからな!」
あっけらかんとした調子で告げるツワーモンに、いつの間にか部屋の影から現れていたハイビジョンモニタモンも我が意を得たりと会話に参加してきた。
「そうそう! 今は仕事を受けているから安心だけど、過去に敵対した時にはたまったもんじゃなかったネ。情報収集レベルならギリギリ見逃されたかもだけど、それ以上の敵対行動なんて……考えただけで身の毛がよだつネ!」
「全くでございますな……」
二体のデジモンが繰り広げる恐ろしい裏話の数々に、ハルト、ネモ、ペパー、そしてボタンの全員が顔をひきつらせて激しくドン引きしていた。
一方、部屋を出たソウマはオモダカへ一報を入れて最短の戦闘許可を取り付けると、テーブルシティの正面ゲートを抜け、広大な前線へと足を踏み出した。
そして、腰のデジヴァイスを掲げ、自身の主力である圧倒的な力を秘めた究極体デジモンたちを一気にリアライズさせた。
まばゆい光とともに現れたのは――
鋭い爪と勇猛な意気を纏った竜戦士……ウォーグレイモン。
黄金の鎧を身に纏い、背に巨大な剣を背負った獣騎士……クーレスガルルモン。
同じく眩い金色の外殻を誇る巨大な昆虫型究極体……ヘラクルカブテリモン。
巨大な魔槍と魔盾を携え、絶対防御を誇る騎士……クレニアムモン。
深海の王の如き威厳を放ち、三叉の槍を構える巨大な水神……ネプトゥーンモン。
そして、巨大な学ランを羽織り、動かざる山のごとき存在感を放つ岩石の番長……バンチョーゴーレモン。
計6体もの圧巻の究極体デジモンたちが、ソウマを囲うように陣を組んで現れた。
「ウォーグレイモンとバンチョーゴーレモンは俺と一緒に正面の防衛だ。クレニアムモンとヘラクルカブテリモンは西側、クーレスガルルモンとネプトゥーンモンは東側に別れてそれぞれ敵をブロックしろ。残りは指示を出すまで待機だ」
『了解』
ソウマの簡潔な指示を受け、四体の究極体は凄まじい速度でそれぞれの防衛担当エリアへと跳躍していった。
やがて、成熟期や完全体を含む異形のデジモン群を引き連れた、少年少女の集団が視界に捉えられる距離まで迫ってきた。ソウマは一人、堂々と敵群の前に立ちはだかり、正面から通り通る声を張り上げた。
「ここから先は、許可なきデジモンの進入は禁止だ! おとなしく投降するなら手荒な真似はしないでおいてやるぞ!」
その警告に対し、集団を率いていた怪しい子供たちはあざ笑うように下卑た怒声を浴びせてきた。
「ウルセー!! オッサン!一人で出しゃばってんじゃねーぞ!」
「邪魔すんじゃねぇ! テメーから先に始末してやんよ!! 行けぇッ!!」
狂乱した指示を受け、襲撃者たちのデジモンが一斉に凶悪な殺気を放って突撃してくる。
その光景を見届けたソウマは、テーブルシティ全体を包み込むように空間歪曲を抑え込む特殊なバトルフィールドを瞬時に展開すると、その唇を不敵かつ獰猛な笑みへと歪めた。
「……なるほどな。なら、ちょっと身の程ってやつをお仕置きして教え込んでやらねぇとな」
そのソウマの低い声に反応し、傍らに控えていたウォーグレイモンとバンチョーゴーレモンが静かに、しかし圧倒的な圧を伴って臨戦態勢に入った。
テーブルシティの平穏を賭けた、ソウマによる圧倒的な迎撃戦の火蓋が切って落とされた!