Re.ポケットモンスターSV~電子生命体との出会い 作:ガチャガチャクツワムシ
まばゆい光とともにソウマがリアライズさせたのは、自身の背丈を悠々に超える禍々しい大太刀を携えた威厳溢れる武者――タクティモンと、神聖な白色の羽毛と優美な姿を持つヒト型鳥デジモン――クロノモンHM(ホーリーモード)の究極体2体であった。
「ふむ……見る限りそこまでの脅威には見えぬが、我ら2体をわざわざ引き連れて出す必要があるのか?」
タクティモンが目の前の敵を一瞥して冷静に分析し、疑問を口にする。ソウマは肩をすくめながらその理由を話した。
「手数を減らして時間をかけたくないし、何よりこの街の周囲に無駄な被害を出したくないんだよ」
ソウマの言葉にタクティモンは「なるほど」と納得を示した。
「それならば、今の余のこの姿では力が強すぎるな」
そう呟くと、タクティモンの巨体が眩い光に包まれた。光が収まると、そこには右腕に凄まじい大斬馬刀、左腕に鋭い刀を構え、下半身が馬と一体化した凄絶な騎馬武者――ザンバモンへとあえて進化段階を調整した姿があった。
「此方のほうが力の調整が利き、手加減もしやすい」
ザンバモンが重厚な声で告げると、その下半身である巨大な馬が「ヒヒィーン!」と荒々しく嘶きをあげた。
「ふ、ふざけおって……! 舐めるなよ、やれぇいッ!!」
完全に嘲弄されたと感じた元教頭は血走った目で叫び、控えさせていたデジモンたちへ一斉攻撃の指示を出した。
真っ先に動いたのはフウジンモンとライジンモンだった。圧倒的な機動力で肉薄し、各々の両腕に備えられた強力な武装【クリティカルアーム】と【ブリッツアーム】を振り下ろす!
しかし、ザンバモンとクロノモンHMは微動だにせず、ザンバモンは馬の頭部に備えられた小刀で、クロノモンHMは片翼を静かに掲げるだけでその必殺の打撃を軽々と受け止めてみせた。
「なっ……!?」
受け止められたことに激しい驚愕を覚え、即座に間合いを取るフウジンモンとライジンモン。間髪入れず、残るスイジンモンやライデンモンたち4体も一斉に全弾発射の必殺技を仕掛けた!
「緩い! クロノモン、【ホーリーフレア】!」
「応!!」
ソウマの短い指示に応じ、クロノモンHMが溢れんばかりの神聖なエネルギーを纏って【ホーリーフレア】を放つ! 解き放たれた聖なる光と炎の奔流は、襲い来る攻撃ごと敵デジモンたちを包み込み、一瞬にしてその身体をデータへと還元して全てデジタマへと戻してしまった。
「ま、まだだ……! まだ終わらんぞ!!」
元教頭は激しい焦燥感から目を真っ赤に怒らせて絶叫し、デジヴァイスに残された大量のデジモンを一気に召喚した。
「ほう……今度はラストティラノモンにムゲンドラモン、メタルシードラモン、ピノッキモン、グランドロコモン、ヴェノムヴァンデモン、スカルマンモン、クロスモン、ディノレクスモンか。……随分と大盤振る舞いに出たな」
ソウマが呆れたように呟くのを聞き、ザンバモンが不敵に刃を閃かせた。
「有象無象の群れよ。さぁ、その首を寄越せぇい! 【打首獄門】! 【十文字切り】!」
ザンバモンはそう叫ぶや否や、疾風の如き凄まじいスピードで戦場を駆け巡り、立ちふさがる巨体デジモンたちの隙を突いて次々と斬り伏せていった。
「我も負けておれんな! 【クロノスワップ】!」
続くようにクロノモンHMも舞い上がり、聖なる力を宿した両翼を大旋風とともに敵群へ叩きつけていく。
――ものの数分。
あれほど絶望的な威容を誇っていた巨大デジモンの群れはことごとく叩きのめされ、全て静かにデジタマへと姿を変えて転がっていった。
その後も元教頭は狂ったように与えられたデジモンを片端から繰り出していったが、その全てがソウマのパートナーたちの前には赤子同然に殲滅されていった。周囲で見守っていた周囲の人たちも、両者の間にある埋めようのない圧倒的な実力差を完全に理解し、息をのんでいた。
そうこうしているうちに、テーブルシティの外周の防衛を終えたソウマの他のパートナーデジモンたちが続々と戻ってきた。
「戻ったぞ、ソウマ! 俺たちの暴れる分は残っているか!?」
「……どうやら、そちらはもう片付きかけているようだな」
「何だよ! つまらん、俺たちの出番がなかったじゃないか!」
口々に文句を言うウォーグレイモンやクーレスガルルモンたちの姿を見て、元教頭の精神は完全に決壊した。
「……ふざけるな、ふざけるなぁぁぁッ!! 私の人生を壊し、復讐までも邪魔をしおって……! こうなれば、この街も学校も、全てをメチャクチャにして消し去ってやる!!」
自分の思い通りにならない現実を突きつけられ、完全に自棄を起こした元教頭は、最後の狂気とばかりに強力なデジヴァイスを掲げた。
その光の中から現れたのは、空を覆い尽くすほど巨大な始祖鳥のような姿をしたオニスモンと、山羊のような恐ろしい頭部を持つヒト型の上半身に四足歩行の獣型の下半身を備えたガルフモンであった。
さらに、元教頭は「恩人」から手渡されていた怪しげなUSBメモリをデジヴァイスに接続し、自らの肉体を強引に書き換えた。
――次の瞬間、男の肉体が激しく歪み、かつてソウマたちが相対した『ビッグデスターズ』の7体の特徴を悪夢のように融合させた異形の存在へと変異した。
「オニスモンにガルフモン……おいおい、あれはグランドジェネラモンじゃないか。というか、デジモン絡みのプログラムとはいえ、この世界の人間でもデジモンと融合する『マトリクスエヴォリューション』じみた変異ができるんだな」
ソウマは流石に少し驚いたような声を漏らしたが、すぐに冷徹な目を据え直してデジヴァイスを高く掲げた。
「このままこの街中で暴れさせたら被害が広がりすぎる。――場所を移すぞ。後始末はデジタルワールドでやる!」
ソウマがデジヴァイスから眩い転送光を放つと、その光に包まれたソウマと彼のパートナーデジモンたち、そして暴走する元教頭たちの巨躯が、一瞬にして周囲の空間から消え去った。
光が収まり、周囲に広がるデータの世界――デジタルワールドの大地に降り立つと、歪んだ融合体のままの元教頭事グランドジェネラモンたちは、理性を完全に失ったような濁った瞳で唸り声をあげた。
「オノレ……キサマ等ヲ、ケシテ……フクシュウヲ……!!」
片言の、もはや人間としての意思すらかき消された破壊衝動の塊と化したグランドジェネラモンたちが、狂気的な威圧感を伴って一斉に猛攻撃を仕掛けてきた!
「「ソウマ!」」
鋭い叫びとともに、クレニアムモンとウォーグレイモンが瞬時に跳び出し、それぞれ魔盾【アヴァロン】と【ブレイブシールド】をクロスさせて凶悪な弾幕を防ぎ切る。
「助かった。……しかし、見るからに完全にデジモンの狂気に呑まれているな」
「なに、気にするな。……それより、どうする? 一気に片付けるか?」
クレニアムモンが冷静に問いかけると、ソウマは不敵で獰猛な笑みをその口元に浮かべた。
「いや、ここは俺が行く。……ちょうど、この1ヶ月ほど溜まっていたストレスを発散したくて暴れたかったところだからな」
その言葉を発した瞬間、ソウマの肉体が眩い黄金の光に包まれ、その姿がみるみるうちに変化していく。
幾多のデジモンが幾重にも重なり合い、黄金の輝きを放つ巨大なロボットの如き究極の戦士の姿へと昇華した。
「――シャウトモンEX7!!」
その名を轟くような咆哮とともに叫び声をあげると、シャウトモンEX7となったソウマは、圧倒的なプレッシャーを纏ってグランドジェネラモンたちを鋭く睨み据えた。
周囲のパートナーデジモンたちは自然と後ろへと距離を取って道を空けた。
「ガァァァッ!!」
恐怖をかき消すように、グランドジェネラモンが持てる全てのビッグデスターズの技を全方位へ一斉に解き放つ!追撃するようにガルフモンやオニスモンも必殺技を放った。
しかし、シャウトモンEX7はその猛撃をまるで紙吹雪でも避けるかのように軽やかにすり抜け、一瞬にしてガルフモンの懐へと飛び込んだ。
「【ソル・キャリバー】!!」
黄金の大剣が一閃し、ガルフモンの巨体を豪快に袈裟斬りに引き裂く!
間髪入れず、すぐさまオニスモンヌの方へと向き直り、胸部のVのマークが光輝くと。
「【セブンビクトライズ】!!」
胸部から放たれた極太の七色光線が、オニスモンの巨大な半身を凄まじい爆発とともに一気に飲み込んだ!
「まだだぁッ!!」
隙を突いてグランドジェネラモンが残る全火力を結集させた最強の必殺技を放ってくるが、シャウトモンEX7は微動だにしない。
「甘いな! 【デモリッションホーン】!!」
左腕のパイルバンカーから放たれた強烈な衝撃波が、敵の必殺技の中心を直撃し、見事に相殺し尽くす!
「トドメだ! 【リュウセイロックダマシー】!!」
腰部と背中に装着されていたパーツがシャウトモンEX7から分離し、シューティングスターモンへと変形すると、彗星の如き超加速でグランドジェネラモンへ直撃した。
巻き起こった凄まじい大爆発と衝撃波の嵐が収まったとき、そこには全ての力を使い果たし、デジタマ……あるいはただの人間の姿へと戻りかけて崩れ落ちる元教頭たちの姿があった。
オニスモンもガルフモンも、すでにデータの泡となって霧散し始めていく。
「……戦闘終了、っと」
爆煙の中に立つシャウトモンEX7は、静かに元の姿へと戻りながら、深い息を吐き出すのだった。