Re.ポケットモンスターSV~電子生命体との出会い 作:ガチャガチャクツワムシ
小さな事件
ソウマとヒョウガが無事に帰還した翌日。ショウは、今回の事件でアジトの監視や戦闘で大活躍してくれたユキダルモンに礼を言うため、彼の元を訪れていた。
「ユキダルモン〜。美味しそうなケーキ買ってきたから食べてくれ!」
「わ〜っ! ありがとう、ショウ!」
「気にすんな、色々手伝ってくれたお礼なんだからさ。あ、カラテンモンには銘酒を渡したらめちゃくちゃ喜んでたよ」
二人でコタツに潜り込みながら、他愛もない世間話をしてのんびりとした時間を過ごしていたが、夕刻が近づき、ショウはそろそろアカデミーの寮の自室へ帰ることにした。
「ところでショウ? さっきから気付いてる……?」
「あぁ。さっきからずっと俺たちの様子を見張っている存在のことだろ? この隠れ場所が正確にわかるってことは、人間じゃなくて野生のポケモンだな」
「うん、敵意はなさそうだね。どうする?」
「とりあえず放置でいこう。害意がないなら刺激しないのが一番だしな」
ショウは視線を感じつつも、特に気にした風もなくそのままアカデミーの寮へと戻っていった。
翌日、ショウはアリサから真剣な様子でとある相談を受けた。
「どうしたんだ、お嬢? 急に改まって話って」
「実は……昨日から、何者かにずっと物陰から見られているような気がするんです」
「見られている? ……どんな状況だったんだ?」
「昨日の夕方、医務室でミモザ先生とお話をして別れた直後あたりから、ずっと視線を感じていて……」
「そうなのか。なら、ミモりんに何か怪しい影を見てないか直接聞きに行ってみないか?」
そう提案し、二人はすぐさま保健室へと足を運んだ。
保健室に入ると、ちょうど書類の整理をしていたミモザ先生の姿があった。ショウとアリサが事の経緯を説明すると、ミモザはポンと手を叩いた。
「あぁ〜! そういえば昨日アリサと別れた後、アリサの後ろをコソコソ隠れながら付いていく小っちゃい影を見たわねぇ。通り過ぎざまにチラッと見えたけど、たぶんカヌチャンだったと思うわよ?」
「カヌチャンですか……? 私は手持ちにカヌチャンを捕まえていませんが……」
「なら野生の子かしらねぇ?」
「でも、どうして私やショウさんを後付けたり見張ったりするんでしょう?」
「うーん、そればっかりはカヌチャン本人に直接聞いてみるしかないんじゃないかしら?」
結局、見張っている理由までは分からず、そう結論を出すしかなかった。
医務室を出た直後、二人は背後から微かな視線と気配を感じ取った。合図を交わした二人は、その気配を誘い出すように学園の広いグラウンドへと向かった。
グラウンドの隅へ差し掛かったところで、ショウは足音を完全に消し、背後の物陰に隠れていたカヌチャンの真後ろへと素早く回り込んだ。
「ほいっと!」
「ヌチャァッ!?」
ショウの素早い手動きにより、あっ気なくカヌチャンは捕獲された。
そのまま暴れるカヌチャンを抱え、アリサの元へと連れていくと、どこからともなく心配そうに駆け寄ってきた進化系のナカヌチャンも姿を現した。
「このナカヌチャンは……?」
「多分だが、昨日まで俺を見張っていた奴だと思う。害意がなさそうだったから放置していたんだ」
ショウが説明したあと、アリサは手持ちのサーナイトをモンスターボールから呼び出し、その『テレパシー』を介してナカヌチャンたちの真意を聞き出してもらうことにした。
サーナイト経由で伝わってきた言葉を聞き、アリサが首をかしげる。
「えっと……確かこれって……?」
「あぁ……なるほどな。俺たちの身に付けているネックレスやベルトのバックルが欲しかったのか」
二人が身に付けている装備には、低純度ではあるものの、デジモン世界の合金である【クロンデジゾイド】が使用されていた。カヌチャンやナカヌチャンといったポケモンの「金属を集めて自分のハンマーを作り出す・強化する」という生態を思い出し、二人は大いに納得した。
「よしよし、これを狙ってたんだな。なら、あげるから仲良く使いな」
ショウはポケットから予備として所持していたクロンデジゾイドの小さな鉱石の欠片を取り出し、カヌチャンたちに手渡してやった。
「ヌチャ〜っ!!」
大喜びで鉱石を受け取ったカヌチャンとナカヌチャンは、宝物を抱えるようにして満足そうに帰っていった。
その嬉しそうな後ろ姿を見送りながら、ショウはふと素朴な疑問を口にした。
「……あいつら、デジモン世界の特殊な超金属であるクロンデジゾイドを、自分たちのハンマー用にうまく加工することができるのかな?」
「さぁ……? ポケモンの職人技なら、案外なんとかしちゃうのかもしれませんね」
アリサも顔を見合わせ、クスッと笑い合いながら、放課後の穏やかなグラウンドをあとにしたのだった。