Re.ポケットモンスターSV~電子生命体との出会い 作:ガチャガチャクツワムシ
【テラスタルオーブ】の申請から2日経ち、いよいよショウがポケモンリーグに挑戦する日がやってきた。
挑戦のためリーグへと向かう途中の廊下で、保健室のミモザ先生とバッタリ出くわした。
「おいっす。ミモりん、おはよう!」
「おはよう。……ミモりんって言うなし!」
いつものお約束のような軽快なやり取りを交わすと、ミモザはどこか感慨深そうに呟いた。
「そう言えば、あんた漸くポケモンリーグに挑戦すんだね?」
「いやぁ、デジモン関連の本来の仕事やら事件やらが重なって、なかなか挑戦のタイミングが取れなかったんだよね」
「まぁねぇ。後でハルトくんから色々聞いたけど、ホント大変そうだったもんね」
事件の苦労を労い合うような会話を交わしていたが、時計の針を見たショウが言った。
「っと、そろそろ行かないと時間に遅れちゃうな」
「はいはい、しっかり頑張りなさいよ!」
手を振って見送り、ショウの背中が見えなくなると、ミモザはふと胸に手を当てて呟いた。
「な~んか……アイツと話すと、妙に胸がドキドキするんだよなぁ……。これってやっぱ、そういうことなのかなぁ……?」
急激に湧き上がってきた自分の本心と乙女心に気づいてしまったミモザは、「あ〜〜〜っ!」と顔を真っ赤にしてその場で悶絶してしまった。
たまたま通りかかった生徒たちが、「ミモザ先生、大丈夫かな……?」と不思議そうにその様子を眺めていた。
ショウがそのままポケモンリーグの重厚な建物のエントランスへ到着すると、そこには出迎えるようにオモダカが待っていた。
「おはようございます、オモダカさん」
「おはようございます、ショウさん。心待ちにしておりましたよ」
丁寧なお辞儀とともに挨拶を交わす。
「ハッサクから話は伺っております。あなたの実力と、リーグ挑戦……大いに期待しておりますよ」
「ご期待に添えるよう、全力で頑張ります」
ショウが力強く答えると、オモダカの笑みがより一層深くなった。
挨拶もそこそこに、さっそく面接試験場へ向かおうとしたショウだったが、ふとある重要な報告を思い出したオモダカが声をかけた。
「そうでした……ショウさん。先日の襲撃事件で倒れていた少年少女たちのうち、お一人が意識を取り戻しました」
「本当ですか! 何か黒幕についての情報はわかりましたか!?」
食い気味に尋ねるショウだったが、オモダカは少し表情を曇らせて首を横に振った。
「いいえ……医師の見解ではまだ自力で話すことは難しく、エスパータイプのポケモンに精神波で協力してもらい、デジモンやプログラムを提供した人物の『名前』だけは何とか引き出すことができました。――Dr.クラハシという名前だそうです。この情報は、これからアリサさんにもお伝えしに行きます」
「わかりました。アリサは多分、まだアカデミーにいると思います。アリサからリーダーたちや関係各所にも伝えてもらいますね」
重要な情報共有を終えると、オモダカは急ぎアカデミー方面へと向かっていった。
ショウは先ほど聞いた「Dr.クラハシ」という名を一旦頭の隅に整理し、目の前の試練に集中しながら面接会場の扉を開けた。
部屋の中央には、眼鏡をかけた四天王のチリが静かに着席していた。
「どうぞ。お掛けください」
「失礼します」
指定された椅子に座り、面接が開始された。
志望動機やジム巡りの思い出など、数回の質疑応答が滞りなくスムーズに進み、いよいよ最後の質問へと差し掛かった。
チリはすっと書類から目を離し、まっすぐにショウを見つめた。
「――最後に、貴方にとって『ポケモン』とは何ですか?」
面接の締めくくりとなるその問いに対し、ショウは迷うことなく、即座に力強い声で答えた。
「デジモンに続く、新たな友です!」
その答えを聞いた瞬間、面接室の中に一瞬だけしんと静まり返る間が流れた。
次の瞬間、チリはふっと肩の力を抜き、満面の笑みを浮かべた。
「お疲れさん、以上で面接は終いや! ……ショウ、おめでとさん。一次試験……面接テスト合格や!」
チリから合格を告げられたショウは、ホッと息を吐き出しながら肩の力を抜くのだった。
チリからの「面接テスト合格」の言葉に、ショウは「ふぅ……」と大きな息を吐き出してようやく肩の力を抜いた。そんなショウの様子を見て、チリは面白そうに笑いかけた。
「何や! 随分と緊張してたんやな?」
「そりゃそうですよ。元の世界の高校の面接受験並みに心臓バクバクでしたよ」
ショウがそう返すと、チリは一瞬キョトンとした顔を見せたが、すぐに何処かを叩くように手を打った。
「あぁ! そういやそうやった! ショウは元々別の世界から来た人間やったな!」
「忘れてたんすか!?」
思わず食い気味にツッコミを入れたショウに対し、チリはゲラゲラと笑いながら頭をかいた。
「すまんすまん! もう結構長い付き合いになったから、すっかりパルデアの地元っ子か何かと勘違いして忘れてもうたわ!」
ひとしきり和やかな雑談を交わした後、チリは引き締まった勝負師の顔に戻り、「それじゃ、二次試験の実技場に向かい巡りや」とショウを促した。
バトルフィールドに到着し、ショウが指定の位置で待っていると、準備を整えたチリが対面側の指揮位置へと着いた。
「それじゃあ早速、始めよか! 四天王の露払いはこのチリちゃん! うんと可愛がったるから……精々きばりやぁ!」
チリの威勢の良い掛け声とともに、四天王第一戦の火蓋が切って落とされた!
「頼むで! ナマズン!」
「マズッ!」
「ナマズンか……なら、行ってこい、ガチグマ!」
「ワギィィッ!」
チリが繰り出したのは、なまずポケモンのナマズン。対するショウは、圧倒的な体躯を誇るガチグマをバトルフィールドへと送り出した。
「おぉ! それが噂に聞くヒスイのガチグマかいな! 後でじっくり見せてぇな! ナマズン、【濁流】!」
「ナマァッ!」
「いいですよ! ガチグマ、【草分け】!」
「ワギィッ!」
互いに速攻で弱点を突き合う激しい指示が飛ぶ! ガチグマは正面から迫る激しい【濁流】のダメージに耐えながらも、重厚な突進で強引に押し切り、ナマズンを派手に吹き飛ばした。
「なんつうパワーや……! これで火傷とかの特性がまだ発動してへんのが恐ろしいわぁ! ナマズン、【未来予知】!」
「マズゥ!」
「もう一度、【草分け】!」
「ワギィィッ!」
【草分け】によって素早さが一段階上がり、さらに先ほど負った技の追加効果か【かえんだま】の発動により特性『こんじょう』が覚醒したガチグマ! 圧倒的な破壊力を纏った二撃目の【くさわけ】を受けきれず、ナマズンはそのまま戦闘不能へと倒れ伏した。
審判の機械がナマズンの戦闘不能を検知してランプを点灯させると、チリは不敵な笑みを崩さずに次のボールを構えた。
「頼むで! ドンファン!」
「ドンファァァッ!」
次に現れたのは、頑強な皮膚を持つドンファンであった。
「ガチグマ、【空元気】!」
「ワギィィッ!」
「ドンファン、【地震】や!」
「ドンファァン!」
素早さが上がったガチグマが先手を取る! 特性『こんじょう』と状態異常によって威力が跳ね上がった一撃必殺の【空元気】が、ドンファンが【地震】の体勢に入るよりも早く炸裂! ドンファンを一撃で粉砕し、戦闘不能に追い込んだ。
「なんつう底知れぬ威力や……っ! おおきにドンファン、次や……バクーダ!」
チリは倒れたドンファンを手早く戻すと、続いてバクーダをフィールドへ送り出した。
「バクーダ相手なら……ガチグマ、【ぶちかまし】!」
弱点タイプの大技を指示し、ガチグマが全身の体重を乗せて怒涛の突進を仕掛ける!
「バクーダ、【大文字】!」
吹き飛ばされながらもバクーダは間際で大文字の炎を撃ち出したが、直後に耐えきれず倒れ込んだ。
「おおきに、バクーダ! 頼んだで、ダグトリオ!」
「先はまだ長い。一旦休め、ガチグマ。頼むぞ、行ってこいラグラージ!」
「ラグゥゥッ!」
チリの手持ちの半分を倒してから、ショウはガチグマをボールに戻し、次にラグラージをフィールドへと送り出した。
「ラグラージか! 気ィつけぇダグトリオ、【不意打ち】や!」
「ダグッ!」
「ラグラージ、構うな! 【アクアブレイク】だ!」
「ラグラァ!」
ダグトリオの素早い【不意打ち】をまともに受けるも、ラグラージは怯まずそのまま激しい水流を纏った豪快な一撃――【アクアブレイク】を叩き込み、ダグトリオを鮮やかに戦闘不能へと追い込んだ。
「ナッハッハ! それにしてもやるやん! やっぱ自分おもろいわぁ! ほんなら次が最後のポケモンや! 気張れな、ドオー!」
「ドオォ……」
チリが最後の切り札として繰り出したのは、愛嬌のある姿ながら驚異的な耐久力を誇るドオーだった。
チリは勝負の決定的瞬間を見据え、迷うことなくテラスタルオーブを掲げた。
「いてこましたれ! ドオー、テラスタルや!」
眩い結晶の光に包まれたドオーが地面テラスタイプへと変化する。
「なら、こちらも負けじと行くぞ……メガシンカ!」
ショウがベルトのバックルに仕込んだキーストーンに手を当てると、ラグラージの腕に装着されたメガストーンと強烈に共鳴し、光の渦の中でメガラグラージへと姿を変えた。
「足元気ィつけや、ちょいッと大きく揺れるからな! ドオー、【地震】!」
「ドオォ!」
「ラグラージ、此方も【地震】で迎え撃て!」
「ラグゥ!」
お互いに場を揺るがす強力な【地震】を指示する! 激しい衝撃が真っ向からぶつかり合うが、双方が放った威力が完全に拮抗したため、互いの攻撃は綺麗に相殺されてダメージを与えることができない。
「互角か……なら、ドオー、【アクアブレイク】や!」
「ドオー!」
「ラグラージ、【冷凍パンチ】!」
「ラグラァ!」
ドオーは全身に水を纏い、跳ねるような機動力でメガラグラージへと突っ込んでいく。それを迎え撃つように、メガラグラージは右腕に凍てつく冷気を纏わせ、凄まじい勢いで殴りかかった。
激しくぶつかった瞬間の衝撃波で2体は凄まじい勢いで弾き飛ばされ、フィールドの壁へと激突した。
もうもうと砂煙が舞い上がる中、数秒経つとメガラグラージは何事もなかったかのように平然と砂煙から歩み出てきた。対するドオーの方は、砂煙が晴れていくと同時にテラスタルの結晶がパリンと音を立てて砕け散り、目を回して完全に倒れ伏していた。
審判の機械が高らかにドオーの戦闘不能を告げ、勝負の決着が示された。