Re.ポケットモンスターSV~電子生命体との出会い 作:ガチャガチャクツワムシ
ハッサク先生は、ジオグレイモンの【プラズマブレイド】で戦闘不能になったオノノクスを優しくボールへと戻すと、ショウからある提案を投げかけられた。
「今からやるのはずるいと思われるかもしれないので、ハッサク先生も本気の手持ちを出してください」
ショウはそう言うや否や、右腕に装着したデジヴァイスを力強く掲げた。
「デジソウル! オーバードライブ!!」
「ジオグレイモン! 超進化ぁぁ――メタルグレイモン!」
デジヴァイスから眩い光が溢れ出し、ジオグレイモンの巨体が黄金の輝きに包まれる。光が収まると、そこにはライズグレイモンに似た機械化されたフォルムを持ち、圧倒的な威圧感を放つ超竜型デジモン・メタルグレイモンの姿があった!
「しんかしたのですの~!」
観客席からポピーが驚いて声を上げると、ショウはその意図を説明した。
「今後、もしかしたら敵対テイマーが現れる可能性があるので、僕たちの本来の戦闘スタイルをお見せしておこうと思いまして。こちら側の戦いでは、戦闘中にリアルタイムでデジモンを進化させることがあるんです」
「なんと!? ……しかし、以前見せていただいた姿とは少し異なるようですが?」
ハッサク先生が興味深そうに尋ねると、ショウの傍らにドゥフトモンがすっとリアライズし、補足説明を加えた。
「俺たちデジモンは、与えられたデータや環境によって進化先が分岐する。例えば、昆虫の姿をしたデジモンが進化して植物型のデジモンになることだってある。だからこそ、どのデジモンへと進化させるかを見極めるのもテイマーの重要な役割なのだ」
「まぁ、専用のデジヴァイスプログラムを使えば決まった進化形に固定することもできるんですけどね。ちなみに今のメタルグレイモンは、より近接格闘と肉弾戦に特化した姿ですよ」
ショウとドゥフトモンの説明を聞き終えると、ハッサク先生は熱い眼差しを向け、最後の一球を握り締めた。
「なるほど……素晴らしい! ならば、お行きなさい! セグレイブ!」
「グレイブ!」
ハッサク先生が繰り出したのは、背中に凄まじい氷の剣を背負ったハッサク先生最大の切り札・セグレイブであった!
「先生の本気の切り札だ……メタルグレイモン、絶対に油断するなよ!」
「応!」
「テラスタルジュエルをその冠に! 大いなる竜よ、降臨しなさい!」
ハッサク先生が感極まった声を張り上げながらテラスタルオーブを掲げると、セグレイブが強烈なドラゴンテラスタルを纏い、神々しい竜の頭上結晶を輝かせた。
「なあショウ、此方もテラスタルっ奴をしてみないか?」
「面白いな……よし、テラスタル!」
メタルグレイモンの提案に乗ったショウは、腰のテラスタルオーブを高く掲げた! 眩い結晶の光がメタルグレイモンを包み込み、光が弾けると――メタルグレイモンの頭部には、伝説の古代デジモン・エンシェントグレイモンを模した異彩を放つテラスタルジュエルが鎮座していた。
「成る程、デジモンのテラスタルはこうなるのか……ドゥフトモン!」
「既に映像データとして記録完了している」
「サンキュー! メタルグレイモン、【ジガストーム】!」
「グルォォォッ!」
「全てを制圧する力! よーい……ドラゴン! セグレイブ、【巨剣突撃】!」
「グレィィィイブ!」
メタルグレイモンの胸部ハッチが開き、超高熱のギガデストロイヤー級熱線――【ジガストーム】が解き放たれる! 対するセグレイブも全身に凄まじい闘気を纏い、捨て身の大技【巨剣突撃】で真っ向から突進した!
ドガアァァァァンッ!!
熱線と巨剣突撃が正面から激突した瞬間、バトルフィールド全体が吹き飛ぶほどの超絶大な爆発が巻き起こり、凄まじい爆風が周囲を襲った。ショウとハッサク先生は両腕で顔を覆って必死に耐え(観戦していたチリ、ポピー、アオキの3人はドゥフトモンが瞬時に展開したバリアで守られていた)、やがて爆炎と砂煙がサーッと晴れていく。
そこには、目を回して完全に倒れ伏しているセグレイブと、頭上の結晶を輝かせながら勝利の咆哮を揚げるメタルグレイモンの姿があった。
「ドラゴーーーン!!」
感涙を流しながら、ハッサク先生の情熱溢れる叫び声がフィールド全体に響き渡ったのだった。
試合が終了すると、ハッサク先生は溢れ出る感涙を拭いもせず号泣しながらショウを称賛しようとした。
その時、メタルグレイモンのテラスタル結晶がパリンと音を立てて砕け散った。同時にメタルグレイモンの巨体から眩い光が放たれ、急速にその体が縮んでいく。
光が収まると、そこにはポピーと同じくらいのサイズをした黄色い体色のデジモン――アグモンが立ち尽くしていた。アグモンはそのまま力尽きたように背中からバタリと倒れ込んだ。
「おい!? 大丈夫か、アグモン!?」
ショウは慌ててアグモンの元へ駆け寄り、その身体を優しく起こした。すると――アグモンの腹から「グゥゥゥ~」と盛大な腹の虫の音が周囲に鳴り響いた。
「ショ~ウ~……ハラヘッタ~……」
「お前なぁ……」
ショウは思わず脱力し、呆れた声を漏らしてしまった。
その後、空腹を訴えるアグモンにデジモン用のフードを渡すと、アグモンはその場で猛然と食らいつき始めた。アグモンが無心で食べているのを確認したショウは、ようやく涙を拭い終えたハッサク先生の方へと向き直った。
「ハッサク先生。セグレイブの具合は大丈夫ですか?」
「ダメージは大きいですが、すぐに回復装置に入れましたので明日くらいには全快すると思いますよ。それより、そちらは大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫です。デジモンは戦闘中に進化するとエネルギーをかなり消費してしまうんですよ。今回はそれに加えてテラスタルまで重ねましたからね。初めての試みで、思った以上にエネルギーの消費が激しかったんだと思います」
「そうですか……。ところであのテラスタルジュエルですが、通常のポケモンのものとは明らかに形状が異なっていましたね?」
セグレイブが無事と聞いて胸を撫で下ろしたショウに、ハッサク先生は興味津々といった様子で問いかけた。
「あれは、自分の考えなのですが……」
ショウは一置きしてから説明を始めた。
「デジモンにもポケモンと似た属性要素があるんです。大きく分けると【炎・大地・水氷・風・自然・鋼・闇・光】の8つに分類されるのですが、これはかつて存在した『10体の伝説のデジモン』がルーツとされているんです。デジモンがテラスタルした際、その10体の因子の影響が強く現れるんじゃないかと思っています」
「成る程……! まるでシンオウ地方の古代神話を彷彿とさせる興味深いお話ですな!」
ハッサク先生が感嘆の声を上げ、見学していたチリ、ポピー、アオキの3人も興味深そうに耳を傾けていた。そこへ、フードを口いっぱいに頬張ったアグモンが会話に割り込んできた。
「そういえばショウ! メタルグレイモンの時に頭に乗っていた『Aグレイモン』を模した冠だけど、炎タイプだけじゃなくて、ドラゴンタイプの技の威力も上がった気がしたぞ!」
「なんと!? 本来のテラスタルであれば単一のタイプのみを強化するはず……それなのに2つのタイプの威力を同時に引き上げられるのですか! これは実に興味深い事例です!!」
ハッサク先生は一層興奮した様子で叫んだが、ふと思い出したようにアグモンへと視線を向けた。
「……それで、アグモン殿。率直にお伺いしたいのですが、小生たちの実力はデジモンの視点から見ていかがでしたでしょうか?」
アグモンは少し考える素振りを見せた後、ハッキリとした口調で感想を口にした。
「テイマーがついていない野生のデジモンが相手なら、大体の『完全体』クラスと互角以上に戦えると思うぞ! ただ……意思を交わし合うテイマーがいるデジモンが相手となると、かなり苦戦するかもしれないな」
「……それを聞いて安心いたしましたよ。私たちの力がどこまで通用するのか、指針が得られました」
アグモンからの客観的で確かな評価を聞き、ハッサク先生はどこか心底安堵したような、温かい表情を浮かべるのだった。