Re.ポケットモンスターSV~電子生命体との出会い 作:ガチャガチャクツワムシ
「改めてやけど、チャンピオンテスト二次試験……実技テストは、文句無しの合格や!」
「わー! カッチカチですー!」
「……はい。お見事でした」
「よく頑張りました!」
四天王の全員から惜しみない称賛の言葉を贈られたショウ。続けてチリがニッと笑って言葉を重ねた。
「おめでとさん! ……って言いたいとこやけど、チャンピオンテストはもーちょっとだけ続くねん。お次がいよいよチャンピオンテスト最後の関門、奥の扉を見てみぃ。うちらのスーパー総大将……最終テストの試験官はこの先で待っとる。四天王をその実力で腕ずくかき集めた、チャンピオンランク最強のトレーナーや。ま! チリちゃんにも勝てた自分なら楽勝やろうけどな。……サービスしたるから、負けるんやないで」
「おにーちゃんのポケモンとデジモン、ポピーすきなのです! だからね! がんばれーってしますの!」
「えーと……グッドラックです」
「竜は一寸にして昇天の気あり! さあ! お行きなさいショウ君! その手で大きな勝利を掴んで来なさい!」
「はい!!」
テラスタルオーブのチャージとポケモンの回復を済ませ、温かい応援の言葉を胸に刻んだショウは、トップチャンピオン・オモダカが待つ最上階へのエレベーターへと乗り込んだ。
エレベーターが扉を開き、パルデアの風が吹き抜ける屋外の特設バトルフィールドへと足を踏み出すと、そこにはすでに静かに佇むオモダカの姿があった。
「ようこそ、ショウさん。貴方とポケモンリーグの頂点でお会いできて大変喜ばしいです。最終テストは、トップチャンピオンであるこの私、オモダカとの勝負……勝利すれば合格ですよ」
一息つき、オモダカは真摯な眼差しでショウを見つめた。
「ですが……その前にひとつ謝りたいことが。私、リーグ委員長として宜しくない欠点がありまして……ポケモン勝負に一切、妥協が出来ないのです」
その言葉とともに、トップチャンピオンとしての圧倒的な威圧感と強烈な圧がフィールド全体へと放たれた。
「望むところですよ! ……ところで、今回はポケモンだけにしますか?」
ショウはその凄まじいプレッシャーを不敵な笑みで軽々と受け流しながら確認した。オモダカは少し考える素振りを見せ、やがて優雅に頷いた。
「もし可能ならば、私もショウさんのデジモンと戦わせていただいても宜しいでしょうか?」
「構いませんよ。ただ、最初はポケモン同士で戦ってもいいでしょうか? どちらかの手持ちが半分になったら、デジモンを投入します」
ハッサク先生との戦いでジオグレイモンをメインに据えた際、出番のなかった手持ちのポケモンたちから控え室で猛抗議を受けていたため、ショウはそう提案したのだった。
オモダカは納得したように微笑んだ。
「構いませんよ。非常に合理的で素晴らしい配慮ですね。……それでは、始めましょう」
ショウとオモダカはそれぞれのバトルポジションに着くと、ボールを構えた。
「まずは、お前だ! ヨノワール!」
「ヨノワッ!」
「貴方の才、見極めさせていただきますよ! 行きますよ、クエスパトラ!」
「クェーッ!」
両者が同時に繰り出し、ついにパルデア最高峰の最終テストが幕を開けた!
ショウが繰り出したのは、ヨノワール。対するオモダカが繰り出したのは、優雅な走鳥ポケモン・クエスパトラであった。
「ヨノワールですか……クエスパトラ! 【リフレクター】!」
「クェーッ!」
「ヨノワール! 【トリック】!」
「ワールッ!」
クエスパトラが光の壁【リフレクター】を張り巡らせて物理攻撃への防御を固めたのに対し、ヨノワールは手持ちの道具と相手の道具をすり替える【トリック】を発動! 不気味な光とともに道具を強引に交換した。すると、それまで俊敏だったクエスパトラの動きが一気に重くなり、鈍くなった。
それを見て、オモダカはすぐさま察したように尋ねた。
「もしや……【後攻の尻尾】ですか?」
「そうですよ」
ショウがニッと笑ってあっさりと答えると、オモダカは一瞬思案し、即座にボールを掲げた。
「戻ってください、クエスパトラ。……お願いします、クレベース!」
「レベースッ!」
素早さを奪われたクエスパトラを引き下げ、次に送り出されたのは氷の巨躯を誇るクレベースであった。
「交代は予測してましたよ! ヨノワール、【瓦割り】!」
「ヨノワッ!」
ヨノワールはクエスパトラが残した【リフレクター】の壁を鋭い拳で叩き割りながら、そのままクレベースへ叩きつける! タイプ弱点をつかれたクレベースは、巨体を大きく揺らしてかなりのダメージを負った。しかし、オモダカは微塵も焦りを見せない。
「クレベース、【自己再生】!」
「ベースッ!」
オモダカの冷静な指示により、クレベースは即座に体力を大幅に回復してみせた。
「やっぱ【自己再生】は持っているか。戻れ、ヨノワール! 行ってこい、ブーバーン!」
「ブバッ!」
ショウはヨノワールをボールに戻し、炎を滾らせるブーバーンを戦場へと解き放った!
「ブーバーン、【日本晴れ】だ!」
「ブーバッ!」
指示を受けるや否や、ブーバーンは上空へ炎を打ち上げ、フィールド全体を強烈な日差しで満たした。
「厄介ですね……。クレベース、【地震】!」
「ベースッ!」
「ブーバーン、【火炎放射】!」
「ブバッ!」
お互いに相手の弱点を突く大技を同時に指示! 地面を揺らすクレベースの【地震】の衝撃波がブーバーンを激しく襲うとほぼ同時に、ブーバーンの腕の砲身から解き放たれた灼熱の【火炎放射】がクレベースを激しく呑み込んだ!
どちらも効果抜群の一撃であったが、晴れ状態の補正とタイプ一致が乗った【火炎放射】の火力は凄まじく、先ほど【自己再生】で回復した体力を上回る痛烈なダメージをクレベースに与えた。
「とどめだ! 【マッハパンチ】!」
「ブッバッ!」
相手の体力が残り僅かと判断したショウは先制技の【マッハパンチ】を指示! ブーバーンが超スピードで肉薄しクレベースを殴りつけるが、クレベースの高い物理耐久に阻まれ、あと一歩のところで倒しきるには至らない。
オモダカはすかさず隙を逃さず命じた。
「クレベース、【ボディプレス】!」
「レベースッ!」
指令を受けたクレベースは、その圧倒的な質量でブーバーンを上から強引に押し潰した!
「ブーバーン! そのまま【火炎放射】だ!」
「ブーバーッ!」
「クレベース! 【地震】!」
「レベースッ!」
零距離で拘束された状態のまま、2体は至近距離でそれぞれの技を全力で解放! フィールド中央で凄まじい爆発が巻き起こり、互いの巨体が荒々しく弾き飛ばされた。
煙が静かに晴れていく――。
「ブーバー……ッ!」
「レベッス……」
ブーバーンは全身ボロボロになりながらも膝を震わせ、気力で立ち上がってみせた。対するクレベースはそのまま力尽き、目を回して戦闘不能となっていた。
オモダカは倒れたクレベースをボールへと戻すと、手元のボールを静かに構え直した。
「お願いします。クエスパトラ!」
「クェーッ!」
オモダカは再びクエスパトラをフィールドへ送り出した。
「ならこっちは、お前だ! ドサイドン!!」
「ドサァッ!」
相手が【後攻の尻尾】を持ったクエスパトラであることを見定め、ショウはブーバーンを下げてドサイドンを繰り出した。
「ドサイドン……確かに今のクエスパトラならば対応できますね。クエスパトラ! 【ルミナコリジョン】!」
「クェーッ!」
「ドサイドン!! 相手は動きが遅くなっている! 【地震】だ!」
「サイドッ!」
ドサイドンが大地を強く踏み鳴らし、激しい【地震】を解き放つ! クエスパトラは跳躍して回避を試みるも、【後攻の尾】の重さに阻まれて十分な跳躍ができず、直撃の衝撃波をまともに受けてしまう。しかし、放たれた【ルミナコリジョン】の怪しい光もドサイドンを捉え、特防が引き下げられた。
「構うな! 突撃しろ! 【メガホーン】!」
「ドサァッ!」
ドサイドンの鼻の角に巨大なエネルギーが収束し、重戦車のごとき勢いで突進! 鋭い角がクエスパトラを貫く。虫タイプの技による効果抜群の直撃を受け、クエスパトラはそのまま力尽きて戦闘不能となった。
しかし直後、勝利したはずのドサイドンも突如としてドシンと仰向けに倒れ込み、目を回して戦闘不能となってしまった。
「え……!?」
予想外の相打ちにショウが思わず呆然と声を漏らすと、オモダカは優雅に微笑みかけた。
「気がつきませんでしたか? なぜクエスパトラが無理にその場に留まっていたのか」
言われてショウがドサイドンを凝視すると、その腹部に極小の焦げ痕のような傷が残っていた。
「もしかして……こちらが気づかないように威力を絞って小さくした【エナジーボール】を撃ち込んでいた……?」
「半分正解です。ドサイドンの足元をよく見てみてください」
ショウが視線を下へ向けると、ドサイドンの脚部には強く打撲したような痕跡が刻まれていた。
「まさか……【メガホーン】で突き刺された瞬間に、至近距離から【けたぐり】を叩き込んだというんですか!?」
ショウの驚愕の言葉に、オモダカは柔らかく微笑んで頷いてみせた。
「……すごいな。本当に隙がない。なら頼むぞ、ヨノワール!」
「ヨノワッ!」
「お願いします、ミガルーサ!」
「ミガァッ!」
ショウはヨノワールを再投入し、オモダカは鋭利な背鰭を持つミガルーサを送り出した。
「ミガルーサ! 【辻斬り】!」
「ガルーサッ!」
「ヨノワール! 【シャドーパンチ】!」
「ノワールッ!」
ミガルーサが背鰭に禍々しい悪のエネルギーを纏わせて肉薄し、ヨノワールも影を纏わせた不可避の拳で迎え撃つ! 互いに弱点をつく激しい相打ちとなったが、明らかにミガルーサの放った【辻斬り】の威力が想定を遥かに凌駕していた。
「まさか……特性は『切れ味』!?」
「その通りです。私のミガルーサは一般的な個体と異なり、斬撃技の威力を引き出す特性『切れ味』を備えております」
「なら物理で受けるのは不利だな……戻れヨノワール! 行ってこい、エレキブル!」
「キブールッ!」
ショウは即座にヨノワールを引き下げ、巨体から放電のバチバチという音を響かせるエレキブルを戦場へ解き放った。
「……先ほどから拝見していて疑問に思っていたのですが、ショウさんが繰り出した手持ちのポケモンたちは、どれも通常よりも一回り大柄な個体ばかりですね?」
オモダカが興味深そうに尋ねると、ショウは頭を掻きながら答えた。
「メガストーンを探したりして各地を旅している時に仲間にした奴らなんですけど……ジニア先生に診てもらったら、どれもヒスイ地方で確認され始めたオヤブン個体の血が強く残っているらしいんですよね」
「オヤブン……なるほど、道理で溢れ出る威圧感が格別なわけですね」
「特にこいつは、俺のポケモンたちの中でもトップクラスの実力を持ってますよ!」
「ふふ、それは非常に楽しみですね!」
立ち昇る雷光の中、エレキブルとミガルーサが火花を散らして睨み合った。