1999年 8月下旬
親愛なる助手の学校が始まると同時に、大原璃華子はイタリアへ旅立った。
イタリアへ向かう飛行機内
「本日のお食事は、メイン鶏肉の照り焼きとトマトとモッツァレラチーズのペンネの2種類がございます。どちらがよろしいでしょうか?」
唇のふっくらとした小柄な可愛らしいCAが、食事を配りにやってきた。璃華子に食事の詳細が書かれた紙を手渡す。
璃華子は説明の紙に目を通すも、はじめから自分の好きなものを選ぶ気は無かった。横目で食事や飲み物の乗ったワゴンを見るが、中身の具合はわからない。
実際のところ、ワゴンには2種類の食事が載っているが、どうもペンネの人気が無く沢山余っている。このままだと、最後の方の人はペンネ一択になるだろう。
「…失礼、どちらでも構いませんので、余りそうな方をいただけますか?」
「‼︎ありがとうございます。それですと、こちらペンネになりますがよろしいでしょうか」
「ええ、勿論」
「かしこまりました。ご協力大変感謝いたします」
2人の空間に花が舞う様ににこやかに会話を交わす。
飲み物はせっかくだからと赤ワインを貰い、CAが次の客の元へ行くと、璃華子は食事を摂りながら、依頼人の情報を頭の中で整理することにした。
今回の依頼主はイタリア人の男性。
依頼内容は《秋冬用のロングコートを1着仕立ててほしい》というもの。かなりざっくりとした依頼内容だが、璃華子に依頼する文言なんてほとんどこんなものだ。
_大きな口でペンネを頬張った。
色と素材くらいは指定する人もいるが、ほとんどの客はそこですら犂華子に決めてもらうか、璃華子との話し合いで決めていくのである。そのために、璃華子の荷物の中はカタログやら見本やらでギッシリ詰まっている。
_ワインを飲む
今回の依頼主の身長は、しばらく測っていないため詳しくはわからないとの事だった。ただ璃華子と同じくらいで170前後(璃華子は171である)細身で比較的小柄な体型。
_チーズをかじる
歳は現在で31。ともあれば、今後飛躍的な身体的成長は見込めない。本人との会話も兼ねてだが、完成後サイズ変更しやすく仕立てる必要は今のところ無いだろう。
_ワインを飲み干した。
取り敢えず、着いたら採寸とサンプルの提案だけして、依頼主が気に入ったデザインや素材を決めるまで、残りはブランド巡りと観光でも当てよう。
そう己の中で括ると、璃華子は長いフライトに向けて目を閉じた。
10数時間後。璃華子は遂にイタリアの地へ降り立った。
静かな街の、とある一軒家で、璃華子はその家の書斎に招き入れられた。依頼の際の年齢と似ても似つかない、ピンク髪の齢15程の少年に先導されながら。
ふわふわの赤い髪の毛をアップに束ねた璃華子は、仕事の道具が入った木製のトランクケースを片手に持ち、花の様な笑顔で、今回の依頼主と対峙していた。
「文面以外での対話は始めまして、ですね。改めて、わたくし大原璃華子と申します。これからよろしくお願いいたします。ヴィネガー・ドッピオ様」
璃華子はトランクケースを両手に持ち変えると、気弱に佇む依頼主に、ペコリとお辞儀した。
柳(作者)は、ドッピオはずっと15歳程度の少年だと考えています。璃華子ちゃんに身体の詳細、年齢を送る時、ディアボロが気にしまくっていちいち確認しながら送ったせいで混在して、31歳(原作派&1999年の計算)と送ってしまったと言う話。