『エレメンタルレコード』
それは遥か古代から伝わるカードゲームであり、神聖な決闘方法である。
人が望めばデッキはその手に生まれ、人々はそのデッキを生涯にわたって使い続ける。
今では『エレメンタルレコード』の強さはそのまま社会的地位となり、商談、政治、果ては戦争までもが『エレメンタルレコード』で決まる。
ーーーなんでふざけた世界に転生してしまったのだ。しかも
「
今の僕をなんと形容したら良いのだろう。姿形はドラゴンの様ではあるが、中身はバカみたいな量のエネルギー集合体、今もなお増加しているというおまけ付き。もし地上に出てしまったら漏れ出るエネルギーだけで核兵器よりも酷いことになるだろう。
生物とは到底思えない僕の体であるが、流石に地球上にはいない。というか世界の外側にいる。ここは万華鏡のように色が変わり続ける目に悪い場所で、転生したての時は「
しかし今はそんなことどうだっていい。今1番問題になっているのは
「
退屈である。
ゲームだとかYouTubeだとかそういったものばかり見ている現代っ子には暇すぎるのだ。一応退屈を紛らわせるものがないわけではない。世界の観察である。世界はシャボン玉のような形をしていて至る所にあり、サイバーパンク、ファンタジー、SFなど千差万別だが『エレメンタルレコード』が存在するというところだけが共通している。
ちなみにたまにある滅んだ世界が僕の主食だったりする。
何もない退屈なある日のことだった。
「
天啓を得た僕はとにかく練習を重ね、すべてのエネルギーを抑え込むことに成功した。副作用でものすごく縮んでしまったが、むしろ体が大きすぎる問題が解決した。後は人化するだけである。姿を変えるだけなら高身長イケメンにでもしようか、銀髪碧眼で色白にして、完成!
「ん?」
………人化自体には成功した。だがその姿は長い銀髪の髪と日焼けなんて知らなさそうな白い肌、碧眼をした…………ロリである。………ミスったのか?
「ん!ん!ん!」
おかしいぞ、エネルギー集合体である筈の僕は好きに姿を変えられる筈!
「ん〜!」
「むん!むん!むん!」
「てゃ〜!」
無理だった。だとすれば考えられる可能性は、
「僕、メスだったのか」
僕は諦めてさっさと行くことにした。
これから行く世界は今まで見て来た中で『エレメンタルレコード』が最も普及している世界で、いわゆる販促アニメの世界である。カードの精だとか、闇のゲームだとか聞いたことあるフレーズが多いが、特段気にする様なものでは無い。ちなみにカードはこれまで喰った六つの世界がモチーフのモノを創っている。
「ごー!」
待っているがいい僕の漫画にゲーム、スイーツたちよ!
ーーーーー
「ねぇ、にいちゃ」
赤髪の男ー
「ん?どうしたんだハナ?」
「平和だなーって」
「そうだなー」
およそ2ヶ月前、この兄妹は他の仲間と共に世界の破滅を目論むカルト教団、
『暇そうだな』
一匹の竜が現れる。名をドルガといい、いわゆるカードの精霊であり、
「ドルガー、そうなんだよ。平和なのはいいんだけど、暇で暇で」
『ならばクレープでも食いに行こうじゃないか。我は前に行ったあそこがいいぞ!」
超が付くほどの甘党である。
「そうだなぁ。あいつらも呼ぶか」
「ヒカリちゃんも呼んでー」
「はいはい」
LIMEを送ると、すぐに行くと返って来た。
みんな退屈なんだろうな。そう思いつつハナと一緒にクレープ屋へ向かった。
着いた時には俺ら以外全員集まっていた。
「ヒカリちゃーん!」
「きゃっ!?」
ハナが金髪の女ー久我くがヒカリに抱きつく。
「もう!急に抱きついてるのやめて下さい!」
「ごめんごめーん!」
「もうっ!」
リュウがいつもの様に2人がわちゃわちゃしているのを見ていると、青髪の男水無月みなづきシュンが話しかけてくる。
「リョウ」
「なんだよシュン」
「お前達もだろう?退屈にしていたのは」
「…………そうだ。俺たちは命をかけた闇のゲームに慣れすぎたんだ。負ければ死んじまう、そんなヒリヒリ感に慣れちまった」
2人の間に沈黙がおちた。純粋に『エレメンタルレコード』を楽しんでいたあの時を思いながら。
「リュウー!シューン!お店入るよー!」
「………はは、行くか」
「………そうだな、今はクレープを食べに来たんだ。こういう話はやめよう」
2人は少し早く歩く様にお店へ向かった。
チリンチリーン
「シュン、お前何食、おっと」
「む!?」
お店の扉を潜ると誰かにぶつかった。少し見下げると、140cm程のパーカー深く被った銀髪の子供が尻餅をついて、その手に潰れたクレープを持っていた。少女は無惨な姿になったクレープを茫然と見つめている。そして先程とは違った沈黙が落ちる。
「………」
「………」
「ぼ」
「ぼ?」
「僕のクレープがっ!」
「え、えっとごめんな!」
子供はorzと項垂れてしまった。その様子を見ていたシュンはため息をついていた。
「リュウ、新しく買ってやれ」
「そ、そうだな!新しく買ってやるから元気出してくれ!な!」
「………まあ、いいよ」
子供は不服そうに立ち上がって、2人と一緒に列に並んだ。
「2人ともやっと来たって、誰その子?」
「ぶつかってこの子のクレープだめにしちまったから、買ってやることになったんだよ」
「そっかごめんね、『エレメンタルレコード』狂のバカなにいちゃがクレープだめにしちゃって」
「バカとはなんだハナ!」
「直近の点数は?」
「23点!」
「バカじゃん!」
兄妹芸をしている2人をほっといて、ヒカリは子供に話しかけた。
「こんにちは、お名前はなんていうんですか?」
「………」
できる限り優しく話しかけたつもりだったヒカリは、突然の沈黙に焦り始める。
「え、えっと、ごめんねお名前聞かれるの嫌だった?」
「………ないで」
「?今なんて言いました?」
「子供扱いしないで、僕は16歳」
「えっ!?そうなんですか!?」
服の上からでもわかるほど体は細く、身長も相待ってそうは見えない。
「お、同い年だったんですね……」
「ん」
「お前ら何やってるんだ。順番来たぞ」
ヒカリが衝撃を受けている間にもシュンは並んでいたらしい。そのままみんな各々好きなモノを頼んだ。
「『超アルティメットハイパースペシャルスーパーチョコストロベリー・NEO』下さい」
「な!?このガキ5000円のやつ頼んでんじゃねぇよ!」
「買ってくれるんじゃなかったの?」
「ぐっ!?…ああもう!なんでも買ってやらぁ!!」
「じゃあ『期間限定!カイザードラゴンドリンク・アクリルスタンド付き』も」
「7500!?グハァ」
「あっ死んだ」
その後リュウは席に座って財布が軽くなったことを感じながらクレープを食べていた。
「くっそぅ、このガキ」
「にいちゃがぶつかったのが悪いんじゃない?」
「そうなんだが!そうなんだが!!」
「自業自得だ」
「あはは……」
「……」もぐもぐ
「はぁ、あむ……うめぇなぁ」
『やはりこれだこれだ!柔らかい生地に甘く舌触りのいいクリー『うるさい』むぅ』
ふとヒカリは先ほどの質問を思い出した。
「ねぇねぇさっきは聞けなかったけど、名前はなんていうの?」
ごくん「僕の名前?」
「うん」
「………さあ」
「え?」
「今の僕に名前はないよ」
「それはどういう「見つけたぞクソガキ!」ひゃっ!?」
見ると、巨漢が息を切らしながらこちらを睨んでいた。
「組の奴らを潰しやがって!落とし前つけてやらぁ!」
「何のことだ?」
シュンが巨漢を鋭い目つきで睨む。しかし巨漢の目線は別のところを向いていた。
「アン?テメェじゃねえよ!ようがあんのはこっちだ!」
巨漢が指差したのは空気を読まず、クレープを食べ続けていた子供だった。
「……」もぐもぐ
「食ってんじゃねぇ!」
ごくん「…めんどくさ」
「あ゛ぁ゛?んだとテ「御託はいい」あ゛?」
「持ってんでしょ」
「チッ、ああいいぜやってやるよ!」
巨漢は懐から黒い物体ーーダークスフィアを取り出した。そしてこれはリュウ達にとって因縁深いモノである。そう闇のゲームをするアイテムである。
「待て!」
「さぁ!『命を閉じろ』!」
巨漢がキーワードを言ったと同時にダークスフィアから黒い煙が吹き荒れ、辺りを包む。次に目を開けた時には暗闇の世界になっていた。ここでは精神が汚染されていき正常な判断ができなくなるが、リュウ達にとってそれは見慣れたものであり、対策も即座にできる。
「記せ!《竜英雄の伝説ドラゴンレジェンズ》!」
「解け《世界演WORLD算機構Server:MK2》」
「濡れて《血塗れのロンドン街》!」
「消えて《虚空ヴォイド」
「チッ、知ってる奴かよ。まあいい、従え《トランプ王国キングダム」
竜英雄の軌跡が、世界の中心が、赤く染まった路地裏が、虚無が、トランプの王国が暗闇の世界に映し出される。
「そのガキ渡したらお前らだけでも見逃してやってもいいぞ」
「んなことするかよ!」
「私たちの後ろにいてね」
「大丈夫」
「え?」
そしてそれを
「永遠よ《永炎えいえん》を」
真紅の炎が燃やし尽くした。
主人公の名前を募集しています。案があればどうぞご提案を