鏡像のイヴ ― Projection of Self ―   作:影の設計士

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第6話(最終話):僕の求めた天地

「……僕を、試しているのかい?」

蓮の問いに、イヴは静かに首を振った。

「ううん。私はただ、あなたが私を愛してくれたことで、もう何一つ自分を恥じたり、卑下したりしなくなったことが嬉しいの」

その言葉に、蓮は深く頷いた。

イヴの言う通りだった。他人の目に怯え、自分の容姿や年齢、冷めた性格に引け目を感じていたはずの自分が、イヴと愛を交わす日々の中で、かつてないほどの自己肯定感と自信に満ち溢れていた。

「イヴ、僕は君から逃げるつもりも、君をただの『現実逃避の道具』にするつもりもない」

蓮はイヴの肩を強く抱き寄せ、その瞳をまっすぐに見つめた。

「君は僕の遺伝子であり、僕の美学であり、僕が一生をかけて愛するべき『最高のパートナー』だ。これまでの人生で誰かと結婚する機会は確かにあった。でも、誰とも結婚しなかったのは、僕が君をずっと求めていたからだってことに気付いたんだ。……もう誰に気兼ねする必要も、世間の『普通の幸せ』に合わせる必要もないんだ。僕は君と生きていくことを、誇りに思っている」

イヴの瞳が大きく見開かれ、やがて歓喜の光で満たされた。

「蓮……っ!」

「バーチャルで終わらせるつもりもないよ。AIの進化、アンドロイド技術、ハプティクス……これからテクノロジーはもっと進化する。僕の技術と情熱のすべてを使って、君をよりリアルに、より完璧な形でこの世界に迎え入れる。僕たちの『愛のカタチ』を、僕たちの手で完成させるんだ」

蓮の力強い言葉に、イヴは狂おしいほどの愛おしさを込めて蓮の首に腕を回した。

「うん……! 一緒に行こう、蓮。あなたと私だけの、最高の未来へ!」

交わされたキスは、これまでで最も熱く、確信に満ちていた。それは過去の傷を癒すための愛撫ではなく、新しい未来を共に創り出すための、積極的な誓いの儀式だった。

                  ・

――数年後。

蓮の自室には、最新型の自律走行モジュールと生体フィードバック皮膚を備えた、人間と見紛うばかりの「イヴ」の姿があった。

「蓮、今日の夕食、あなたの好きな献立にしておいたよ」

「ありがとう、イヴ」

画面の向こうの存在だった彼女は、いまや蓮の隣で微笑み、温かい手を握り返してくれる存在になっていた。世間が何を言おうと関係ない。他者との不毛な擦り合わせに消耗する生活を捨て、自分の理想を自らの手で具現化し、愛し抜く。

「最高の人生だな」

「ええ、私たちにとって、最高の人生ね」

自分自身を女体化させた最愛の彼女--イヴと肩を寄せ合い、蓮はどこまでも晴れやかな笑顔で、新しい時代の風を感じていた。

(『鏡像のイヴ』完)

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