神々の剣士は電脳都市で生きる   作:アイエオ

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第三十七話 再会の温もり

セレーネが隣を歩いている。

 

 たったそれだけのことが、信じられないほど嬉しかった。

 

 ナイトシティの夕暮れ。

 

 巨大なビルの壁面では色鮮やかな広告が次々と切り替わり、道路には無数の車が行き交っている。頭上を飛行ドローンが横切り、遠くからは警察のサイレンが聞こえてきた。

 

 一年前、俺が初めてこの街へ来たときには、何もかもが異様に見えた。

 

 けれど、今ではすっかり見慣れた景色だ。

 

 その一方で、隣を歩くセレーネは、先ほどから何度も足を止めていた。

 

「……カイ」

 

「ん?」

 

「あれは、何?」

 

 彼女が指差したのは、道路を走る大型の貨物車だった。

 

 六つの車輪を持つ無骨な車体が、低い駆動音を響かせながら交差点を曲がっていく。

 

「トラックだよ。荷物を運ぶための乗り物」

 

「馬は?」

 

「いない」

 

「……魔導機関で動いているの?」

 

「いや、電気とか燃料を使って動いてるんだ」

 

「電気……雷の力?」

 

「まあ、大雑把に言えばそうかな」

 

 セレーネは目を丸くした。

 

「雷を、あんなふうに使うの?」

 

「この世界では珍しくないんだ」

 

「……すごいわね」

 

 彼女は感心したように呟いた。

 

 そのとき、頭上の巨大広告が切り替わった。

 

 ビルの壁面に映し出された女性が、突然こちらへ向かって微笑む。

 

『あなたの人生に、最高のアップグレードを!』

 

「きゃっ!」

 

 セレーネが俺の腕へしがみついた。

 

 俺は思わず笑ってしまった。

 

「大丈夫。あれは映像だよ」

 

「え、映像?」

 

「幻影魔術に似たものかな。実際に人がいるわけじゃない」

 

 セレーネは恐る恐る広告を見上げた。

 

「……魔力を感じないわ」

 

「そう。この世界の技術なんだ」

 

「魔力も使わずに、あんなに精巧な幻影を……」

 

 しばらく見上げていた彼女は、ふと俺を見た。

 

「カイは、もう驚かないの?」

 

「最初は驚きっぱなしだったよ」

 

「本当に?」

 

「ああ。初めて車を見たときなんて、魔物かと思ったくらいだ」

 

 セレーネが吹き出した。

 

「ふふっ! それ、見てみたかったわ」

 

「勘弁してくれ」

 

「きっと、剣を抜こうとしたんでしょう?」

 

「……よく分かったな」

 

「カイのことだもの」

 

 彼女は楽しそうに笑った。

 

 俺もつられて笑う。

 

 懐かしいやり取りだった。

 

 勇者一行の仲間として旅をしていた頃、俺たちはよくこんなふうに話していた。

 

 野営地で食事を作りながら。

 

 馬車に揺られながら。

 

 危険な迷宮を抜けた帰り道で。

 

 あの頃は、いつまでも続くと思っていた時間だ。

 

 それが突然失われ、一年もの間、二度と戻らないかもしれないと考えていた。

 

 けれど今、セレーネが俺の隣で笑っている。

 

 その事実を確かめたくて、俺は繋いだ手に少しだけ力を込めた。

 

 彼女も、そっと握り返してくれた。

 

     ◇

 

「そういえば、カイ」

 

「何?」

 

「さっきから気になっていたんだけど……」

 

 セレーネは俺の服装を見下ろした。

 

 黒いフード付きの上着。

 

 その下には薄い防護素材を組み込んだ服。

 

 腰には神聖な長剣。

 

 足元は、この街で買った丈夫なブーツだ。

 

「ずいぶん服装が変わったのね」

 

「ああ。こっちの方が目立たないから」

 

「剣は目立つと思うけど」

 

「それは言わない約束で」

 

「ふふっ」

 

 セレーネは俺の腰にある剣へ目を向けた。

 

「でも、その剣は変わらないのね」

 

「うん。ずっと使ってる」

 

 彼女は安心したように微笑んだ。

 

 それから、少しだけ表情を曇らせる。

 

「……カイ」

 

「ん?」

 

「怪我は、してない?」

 

 俺は一瞬、言葉に詰まった。

 

 セレーネは昔から、こういうことに敏感だった。

 

 俺が傷を隠していても、歩き方や表情で気づいてしまう。

 

「今は大丈夫だよ」

 

「今は?」

 

「……いろいろあったから」

 

 セレーネは足を止めた。

 

 俺も立ち止まる。

 

「無茶、したのね」

 

「少しは」

 

「少し?」

 

 深い青色の瞳が、まっすぐ俺を見つめている。

 

 ……ごまかせそうにない。

 

「……かなり」

 

「でしょうね」

 

 彼女は呆れたようにため息をついた。

 

 そして、俺の胸元へ手を伸ばした。

 

 服の上から、護符に触れる。

 

「生きていてくれて、よかった」

 

 その声は小さかった。

 

 俺は彼女の手に、自分の手を重ねた。

 

「セレーネも」

 

 彼女が顔を上げる。

 

「よく、ここまで来てくれたな」

 

 セレーネは何かを言いかけた。

 

 だが、すぐに口を閉じた。

 

 それから、少し困ったように笑う。

 

「……その話は、落ち着いてからでもいい?」

 

「ああ。もちろん」

 

 無理に聞き出すつもりはなかった。

 

 彼女がどんな思いでこの世界へ来たのか。

 

 何を犠牲にしたのか。

 

 向こうの世界で何があったのか。

 

 知りたいことは山ほどある。

 

 だが、今は彼女を安心できる場所へ連れていくことが先だった。

 

「じゃあ、帰ろう」

 

「うん」

 

 俺たちは再び歩き始めた。

 

     ◇

 

 途中、俺はふと重大なことを思い出した。

 

 ……買い物袋。

 

 そうだ。

 

 セレーネと再会したとき、驚きのあまり手放してしまったんだった。

 

 振り返っても、もう路地は見えない。

 

 あのとき、果物が地面へ転がったことまでは覚えている。

 

 だが、それ以降はまったく記憶にない。

 

 ……やってしまった。

 

「どうしたの?」

 

 セレーネが尋ねる。

 

「いや、ちょっと買い物をやり直さないといけなくて」

 

「買い物?」

 

「ああ。夕食の材料を買ってたんだけど、君と会ったときに全部落としちゃったんだ」

 

 セレーネは目を丸くした。

 

 それから、口元を押さえる。

 

「……ふふっ」

 

「笑うなよ」

 

「だって、カイがそんなことするなんて」

 

「俺だって驚いたんだよ」

 

「……私もよ」

 

 彼女は嬉しそうに笑った。

 

「でも、ちょっと嬉しいかも」

 

「どうして?」

 

「私に会って、そんなに驚いてくれたんでしょう?」

 

 俺は少し照れくさくなった。

 

「……まあ、そうだな」

 

 セレーネの頬が赤くなる。

 

「……もう」

 

 結局、俺たちは近くの市場で食材を買い直すことになった。

 

 肉、野菜、パン。

 

 それから、ミナが好きな菓子。

 

 セレーネは電子決済の仕組みに驚き、人工肉の説明を聞いて顔をしかめ、無人販売機が喋り始めると本気で警戒した。

 

「カイ。この箱、意思があるの?」

 

「いや、決められた言葉を喋ってるだけだよ」

 

「……本当に?」

 

「たぶん」

 

「たぶんって何?」

 

「この街だと、絶対とは言い切れないこともあるから」

 

 俺の説明を聞いたセレーネは、ますます販売機から距離を取った。

 

 その姿が少し可笑しかった。

 

 もっとも、俺も最初は似たようなものだった。

 

 彼女を笑える立場ではない。

 

 買い物を終えた頃には、空はすっかり暗くなっていた。

 

 街灯とネオンが道路を照らしている。

 

 俺は無意識に周囲へ意識を向けた。

 

 夜と月の女神の祝福。

 

 夜間、こちらへ敵意を向ける人間の位置を感じ取る力だ。

 

 近くの路地に、酔った男が二人。

 

 少し離れた交差点には、何かの揉め事を起こしている集団。

 

 だが、今の俺たちへ明確な敵意を向けている人間はいない。

 

 少なくとも、すぐに戦う必要はなさそうだった。

 

「カイ?」

 

 セレーネが俺を見上げた。

 

「どうしたの?」

 

「いや。周囲を確認してただけ」

 

「……変わらないのね」

 

「何が?」

 

「そうやって、いつも私の前を歩こうとするところ」

 

 俺は自分の足元を見た。

 

 確かに、いつの間にか彼女より半歩前に出ていた。

 

「癖かな」

 

「知ってる」

 

 セレーネは微笑んだ。

 

「でも、今は隣を歩かせて」

 

 俺は足を緩めた。

 

「分かった」

 

 彼女が並ぶ。

 

 そして、再び手を繋いだ。

 

     ◇

 

 ワトソン地区の外れ。

 

 三階建ての古い集合住宅。

 

 俺たちが暮らしている建物へ着いた頃には、午後七時を少し過ぎていた。

 

「ここ?」

 

 セレーネが建物を見上げる。

 

「ああ。今の俺の家」

 

「……思っていたより、普通なのね」

 

「どんな家を想像してたんだ?」

 

「もっと、こう……砦みたいな場所とか」

 

「どうして?」

 

「カイだから」

 

「それ、理由になってる?」

 

 セレーネは笑った。

 

「なってるわ」

 

 俺は苦笑した。

 

 確かに、勇者一行で旅をしていた頃は、危険な場所に寝泊まりすることも多かった。

 

 魔物の巣窟になった廃城。

 

 古代遺跡の地下室。

 

 雨風を防ぐだけの洞窟。

 

 そう考えれば、鍵のかかる部屋で暮らせるだけでも随分と贅沢だ。

 

 階段を上がりながら、俺は通信端末を取り出した。

 

 リクへ短い連絡を入れる。

 

『もうすぐ帰る。今日はお客さんが一人いる』

 

 数秒後、返事が来た。

 

『誰?』

 

『大切な友達』

 

『女の人?』

 

 ……鋭いな。

 

『そう』

 

 今度は少し間が空いた。

 

『ミナにはまだ言ってない。早く帰ってこい』

 

 俺は思わず笑った。

 

「どうしたの?」

 

 セレーネが尋ねる。

 

「家にいる子から連絡が来た」

 

「さっき言ってた、家族みたいな子たち?」

 

「ああ。兄妹なんだ」

 

「何歳なの?」

 

「兄のリクが十四歳くらい。妹のミナが十一歳くらいかな」

 

 この世界へ来た頃から、二人も一年分成長した。

 

 背も伸びたし、以前より表情が柔らかくなった。

 

「二人とも、いい子だよ」

 

 俺がそう言うと、セレーネは嬉しそうに笑った。

 

「会うのが楽しみ」

 

 そして、少しだけ不安そうに尋ねた。

 

「……私、邪魔にならないかな」

 

 俺は思わず足を止めた。

 

「邪魔?」

 

「だって、カイはもう、ここで暮らしているんでしょう? 突然私が来たら、困るんじゃないかって」

 

 俺はセレーネを見つめた。

 

 彼女は本気で心配しているようだった。

 

「セレーネ」

 

「何?」

 

「俺がどれだけ君に会いたかったか、分かってる?」

 

 彼女の顔が赤くなる。

 

「そ、それは……」

 

「困るわけないだろ」

 

 俺は笑った。

 

「むしろ、どうやって紹介しようか迷ってるくらいだ」

 

「……紹介?」

 

「ああ。大切な人だから」

 

 セレーネは目を見開いた。

 

 それから、顔を伏せた。

 

「……もう」

 

「ん?」

 

「カイって、昔からそういうところがあるわよね」

 

「どういうところ?」

 

「自覚がないところ」

 

 よく分からなかった。

 

 ただ、セレーネが少し嬉しそうだったので、それ以上は聞かなかった。

 

     ◇

 

 三階の部屋の前へ着いた。

 

 扉の向こうから、何やら騒がしい声が聞こえる。

 

「だから、ミナ! まだ開けるなって!」

 

「でも、カイお兄ちゃん帰ってきたんでしょ!」

 

「客がいるって言ってただろ!」

 

「お客さん?」

 

「そうだよ!」

 

 ……いつも通りだな。

 

 俺は苦笑しながら鍵を開けた。

 

「ただいま」

 

 扉を開けた瞬間、小さな影が飛び出してきた。

 

「カイお兄ちゃん!」

 

 ミナだ。

 

 いつものように飛びつこうとして、俺の隣にいるセレーネを見つけた。

 

 ぴたりと止まる。

 

 セレーネも驚いたように目を丸くした。

 

 二人が見つめ合う。

 

 数秒の沈黙。

 

「……わあ」

 

 ミナが呟いた。

 

「お姫様みたい……」

 

 セレーネは一瞬きょとんとした。

 

 それから、柔らかく微笑んだ。

 

「初めまして」

 

 少し膝を曲げ、ミナと目線を合わせる。

 

「私はセレーネ。カイの……昔からの友達よ」

 

 ミナは目を輝かせた。

 

「セレーネお姉ちゃん?」

 

「ええ」

 

「髪、すっごくきれい!」

 

「ありがとう」

 

 セレーネは嬉しそうに笑った。

 

 ミナはすぐに俺を見上げた。

 

「カイお兄ちゃん!」

 

「何?」

 

「この人、お嫁さん?」

 

「ぶっ!」

 

 俺は思わずむせた。

 

 セレーネも固まった。

 

「み、ミナ!?」

 

「ちがうの?」

 

 純粋な瞳で尋ねられる。

 

 俺は返答に困った。

 

 そのとき、部屋の奥からリクが現れた。

 

「おい、ミナ。初対面で変なこと聞くなよ」

 

「だって!」

 

「だってじゃない」

 

 リクは俺たちへ目を向けた。

 

 そして、セレーネを見た。

 

「……こんばんは」

 

 少し緊張した声だった。

 

 セレーネは立ち上がり、丁寧に頭を下げた。

 

「こんばんは。セレーネです。突然お邪魔して、ごめんなさい」

 

「いや、別に……」

 

 リクは少し戸惑いながら俺を見た。

 

「カイ。この人って……」

 

「ああ」

 

 俺は頷いた。

 

「前に話したことがあるだろ。元の世界で、一緒に旅をしていた仲間」

 

 リクの目が大きく開かれた。

 

「……え?」

 

「そのセレーネだよ」

 

 リクはセレーネを見た。

 

 そして、もう一度俺を見た。

 

「……見つかったのか?」

 

 俺は笑った。

 

「ああ」

 

 その瞬間、リクの表情が変わった。

 

 驚きの後に、安堵が浮かぶ。

 

「……そっか」

 

 彼は小さく息を吐いた。

 

「よかったな、カイ」

 

 俺は頷いた。

 

「ありがとう」

 

 リクは少し照れくさそうに目を逸らした。

 

 セレーネはそんなやり取りを見て、不思議そうにしていた。

 

 だが、何も聞かなかった。

 

 代わりに、もう一度リクへ頭を下げた。

 

「これから、よろしくね」

 

「……うん。よろしく」

 

 ミナが二人の間へ割り込んだ。

 

「ねえねえ! セレーネお姉ちゃん!」

 

「何かしら?」

 

「魔法、使えるの?」

 

 俺は目を丸くした。

 

「ミナ、どうして?」

 

「だって、カイお兄ちゃんが前に話してたもん! 元の世界には魔法使いがいるって!」

 

 セレーネが俺を見た。

 

「話してたの?」

 

「まあ、少し」

 

 彼女は嬉しそうに笑った。

 

「ええ。使えるわよ」

 

「ほんと!?」

 

「本当」

 

 ミナは歓声を上げた。

 

「見たい!」

 

 俺は慌てて口を挟んだ。

 

「ミナ、いきなりは駄目だよ。セレーネも疲れてるんだから」

 

「あっ……そっか」

 

 ミナは少ししょんぼりした。

 

 だが、セレーネは優しく首を振った。

 

「大丈夫。小さな魔術なら」

 

 彼女は右手を差し出した。

 

 指先に、淡い銀色の光が灯る。

 

 それは小さな光の粒となり、ゆっくりと宙へ浮かんだ。

 

 光は三つに分かれ、部屋の中を静かに漂う。

 

 まるで、小さな星のようだった。

 

「……わあ!」

 

 ミナが息を呑む。

 

 リクも目を見開いた。

 

 俺は懐かしい魔力の気配を感じ、思わず微笑んだ。

 

 セレーネの魔術。

 

 一年ぶりに見る光景だった。

 

 彼女は指を軽く動かした。

 

 三つの光が円を描き、やがて小さな月の形になる。

 

 ミナは両手を叩いた。

 

「すごい! すごい!」

 

 セレーネは笑った。

 

「気に入ってくれた?」

 

「うん!」

 

 ミナは彼女の手を握った。

 

「セレーネお姉ちゃん、また見せて!」

 

「ええ。約束するわ」

 

 そのときだった。

 

 部屋の奥から、聞き覚えのある低い鳴き声が聞こえた。

 

 セレーネが振り返る。

 

「……え?」

 

 銀灰色の霊狼が、ゆっくりと立ち上がっていた。

 

 青い瞳。

 

 立派な体格。

 

 そして、見慣れた銀灰色の毛並み。

 

 セレーネの瞳が大きく開かれた。

 

「……シルヴァ?」

 

 その名前を聞いた瞬間、シルヴァの耳がぴんと立った。

 

 次の瞬間。

 

 シルヴァは嬉しそうに尻尾を振りながら駆け寄ってきた。

 

「シルヴァ!」

 

 セレーネは膝をつき、駆け寄ってきた霊狼の首に抱きついた。

 

 シルヴァは彼女の頬へ鼻先を押しつけ、甘えるように喉を鳴らす。

 

「ふふっ! くすぐったいわ!」

 

 セレーネは笑いながら、シルヴァの頭を撫でた。

 

「あなたも無事だったのね……!」

 

 その声には、心からの安堵が滲んでいた。

 

 俺はその光景を見ながら、自然と笑みがこぼれた。

 

 ……そうだよな。

 

 シルヴァだって、セレーネに会いたかったはずだ。

 

 勇者一行として旅をしていた頃、シルヴァは何度も俺たちと行動を共にしていた。

 

 セレーネが野営地でシルヴァの毛並みを整えてやったこともある。

 

 寒い夜には、彼女がシルヴァの隣で眠っていたこともあった。

 

 シルヴァにとっても、セレーネは大切な仲間なのだ。

 

「シルヴァも嬉しいみたいだな」

 

 俺が言うと、セレーネは顔を上げた。

 

「当然よ。一緒に旅をした仲間だもの」

 

 シルヴァが同意するように短く鳴いた。

 

 セレーネは笑った。

 

 そして、シルヴァの頭を撫でながら、ふと俺を見た。

 

「そういえば、カイ」

 

「ん?」

 

「もう一体の子は?」

 

 俺は頷いた。

 

「ああ。今は呼び出してないよ」

 

「そうなの?」

 

「うん。シルヴァには普段、リクとミナの護衛を頼んでるんだ。もう一体は必要なときに呼び出してる」

 

 セレーネは納得したように頷いた。

 

「なるほどね」

 

 そして、シルヴァの首へ腕を回した。

 

「じゃあ、シルヴァはこの子たちを守っているのね」

 

「そういうこと」

 

 ミナが得意げに胸を張った。

 

「シルヴァはね、すっごく強いんだよ!」

 

「そうでしょうね」

 

 セレーネは微笑んだ。

 

「私も何度も助けてもらったもの」

 

「ほんと!?」

 

「ええ。魔物に囲まれたときなんて、シルヴァが真っ先に飛び出してくれたのよ」

 

 ミナは目を輝かせた。

 

「すごーい!」

 

 シルヴァは得意げに胸を張ったように見えた。

 

 俺は思わず笑った。

 

「おいおい、あんまり褒めると調子に乗るぞ」

 

 セレーネが笑う。

 

「いいじゃない。実際に強いんだから」

 

 シルヴァが短く鳴いた。

 

 ……本当に、調子に乗ってるな。

 

 その様子を見て、リクも小さく笑った。

 

 俺はその光景を眺めながら、胸の奥が温かくなるのを感じた。

 

 セレーネとシルヴァ。

 

 一年前まで当たり前だった二人のやり取り。

 

 それが今、リクとミナのいるこの部屋で繰り広げられている。

 

 異世界で築いた絆と、ナイトシティで築いた絆。

 

 その二つが、初めて一つになった瞬間だった。

 

     ◇

 

 その日の夕食は、いつもより賑やかだった。

 

 リクが作った肉と野菜の煮込み。

 

 温めたパン。

 

 ミナが並べた皿。

 

 そして、セレーネのために用意した温かい飲み物。

 

 彼女は食卓を見渡し、少し驚いたようにしていた。

 

「……カイが、こういう生活をしているなんて」

 

「意外?」

 

「少し」

 

「どうして?」

 

「だって、前は野営の準備ばかりしていたでしょう?」

 

 俺は笑った。

 

「確かに」

 

 勇者一行で旅をしていた頃は、街に滞在するより野外で過ごす時間の方が長かった。

 

 まともな寝床がない日も珍しくなかった。

 

 それに比べれば、今の生活はずっと落ち着いている。

 

 ミナが元気よく手を合わせた。

 

「いただきます!」

 

 セレーネが首を傾げる。

 

「……いただきます?」

 

「ああ。俺が教えたんだ」

 

 俺は説明した。

 

「前世の故郷では、食事の前にそう言う習慣があったんだよ」

 

「そうなのね」

 

 セレーネは少し考えた。

 

 そして、ミナを真似して両手を合わせた。

 

「……いただきます」

 

 俺は思わず笑った。

 

「うん」

 

 リクも手を合わせる。

 

「いただきます」

 

 俺も続けた。

 

「いただきます」

 

 四人で食事を始めた。

 

 最初は少し緊張していたセレーネだったが、ミナが次々と質問するうちに、自然と会話が弾むようになった。

 

「セレーネお姉ちゃんって、カイお兄ちゃんとどこで会ったの?」

 

「最初は、旅の途中だったわ」

 

「カイお兄ちゃん、昔から強かった?」

 

「ええ。でも、昔から無茶ばかりしていたの」

 

「やっぱり!」

 

「おい、二人とも」

 

 俺が口を挟むと、ミナとセレーネは顔を見合わせて笑った。

 

 リクまで口元を緩めている。

 

 ……何だか、あっという間に仲良くなったな。

 

 セレーネは続けた。

 

「危険な魔物がいると、いつも真っ先に飛び出していくのよ」

 

「カイお兄ちゃん、こっちでもそうだよ!」

 

「そうでしょうね」

 

「ちょっと待て。俺だってちゃんと考えてるぞ」

 

 リクがぼそりと言った。

 

「考えた結果、突っ込んでるんだろ」

 

「……否定しづらい」

 

 食卓に笑い声が広がった。

 

 セレーネも、声を上げて笑っていた。

 

 俺はその顔を見ながら、胸の奥が温かくなるのを感じた。

 

 一年前には、想像もできなかった光景だ。

 

 セレーネがいて。

 

 リクとミナがいて。

 

 シルヴァが足元で眠っている。

 

 同じ食卓を囲み、くだらない話をして笑っている。

 

 それだけのことが、こんなにも嬉しい。

 

     ◇

 

 食事が終わると、ミナはセレーネに部屋を案内し始めた。

 

「こっちが私の部屋!」

 

「わあ。可愛いお部屋ね」

 

「でしょ!」

 

 リクは食器を片づけながら、俺へ近づいてきた。

 

「……カイ」

 

「ん?」

 

「よかったな」

 

 俺はリクを見た。

 

 彼は少し照れくさそうにしている。

 

「ずっと探してたんだろ。その人のこと」

 

「ああ」

 

「……なら、よかった」

 

 俺は笑った。

 

「ありがとう、リク」

 

 彼は肩をすくめた。

 

「別に」

 

 それから、少し声を落とした。

 

「……あの人、ここに住むの?」

 

「まだ決めてないけど、しばらくはそうなると思う」

 

「そっか」

 

 リクは頷いた。

 

「部屋、どうする?」

 

 俺は少し考えた。

 

 この家は二つの寝室と居間がある。

 

 リクとミナがそれぞれ寝室を使い、俺は普段、居間のソファで寝ていた。

 

 セレーネのために新しい寝床を用意するなら、何か考えなければならない。

 

「とりあえず、俺は床でもいいかな」

 

 リクが呆れた顔をした。

 

「……またそういうこと言う」

 

「何が?」

 

「カイが床で寝る必要ないだろ」

 

「でも――」

 

「ヴィクターに相談すれば? もっと広い部屋」

 

 俺は目を瞬かせた。

 

 確かに、今なら以前より収入もある。

 

 引っ越しを考えてもいい頃かもしれない。

 

「……そうだな」

 

 俺は頷いた。

 

「相談してみるよ」

 

 リクは満足そうに頷いた。

 

「そうしろ」

 

 そのとき、ミナの部屋から声が聞こえた。

 

「カイお兄ちゃん!」

 

「何?」

 

「セレーネお姉ちゃんと一緒に寝てもいい!?」

 

 俺は思わず笑った。

 

 リクが額を押さえる。

 

「……早いな」

 

 確かに。

 

 まだ会って数時間しか経っていないのに。

 

 セレーネが部屋から顔を出した。

 

「私は構わないけど……」

 

 俺は頷いた。

 

「ミナがいいなら、お願いしてもいい?」

 

「ええ」

 

 セレーネは微笑んだ。

 

「久しぶりに、誰かと一緒に眠るのもいいかもしれないわ」

 

 その言葉に、俺は少しだけ胸が痛んだ。

 

 ……一年間。

 

 彼女は、どんな夜を過ごしていたのだろう。

 

     ◇

 

 午後十時半。

 

 ミナはすっかり眠っていた。

 

 リクも自分の部屋へ戻っている。

 

 シルヴァは廊下の隅で伏せていた。

 

 俺は居間の窓を開け、夜風を入れた。

 

 ナイトシティの夜景が広がっている。

 

 遠くには巨大なビル群。

 

 空を横切る航空機。

 

 絶え間なく流れる車のライト。

 

 そして、その上に浮かぶ月。

 

 俺は窓際に立ち、しばらく夜空を眺めていた。

 

「……カイ」

 

 背後から声がした。

 

 振り返る。

 

 セレーネが立っていた。

 

 ミナを起こさないよう、静かに部屋を出てきたらしい。

 

「眠れない?」

 

「少しだけ」

 

 彼女は俺の隣へ来た。

 

 そして、窓の外を見上げた。

 

「……本当に、不思議な世界ね」

 

「ああ」

 

「空が明るいのに、星がほとんど見えない」

 

「街の光が強すぎるんだ」

 

「そう……」

 

 セレーネは月を見つめた。

 

 しばらくして、小さく言った。

 

「でも、月は同じなのね」

 

 俺は彼女を見た。

 

「そうだな」

 

 厳密には、元の世界の月と同じ天体なのかどうかは分からない。

 

 だが、少なくとも。

 

 こうして見上げる月は、あの世界のものによく似ていた。

 

 セレーネは窓枠へ手を置いた。

 

「……カイ」

 

「ん?」

 

「ずっと、聞きたかったことがあるの」

 

 俺は彼女へ身体を向けた。

 

「何?」

 

 セレーネは少し迷った。

 

 それから、俺を見上げた。

 

「……あのとき、何があったの?」

 

 俺は息を呑んだ。

 

 邪神との決戦。

 

 崩壊する空間。

 

 眩しい光。

 

 そして、突然訪れた別れ。

 

 あの瞬間のことは、今でも鮮明に覚えている。

 

「……俺にも、全部は分からない」

 

 俺は答えた。

 

「邪神を追い詰めたとき、空間が裂けた。そこへ引き込まれて……気づいたら、この街にいた」

 

 セレーネは黙って聞いていた。

 

「最初は、すぐに帰れると思ってた」

 

 俺は続けた。

 

「でも、帰る方法が分からなかった。魔力の流れも違うし、転移魔術の手掛かりもない」

 

 夜風が吹いた。

 

 セレーネの銀髪が揺れる。

 

「……何度も探したよ」

 

 俺は苦笑した。

 

「でも、駄目だった」

 

 彼女は俯いた。

 

 しばらくして、小さく言った。

 

「……私も、探した」

 

 俺は顔を上げた。

 

「セレーネ?」

 

「カイが消えた後、ずっと」

 

 彼女の声が震えていた。

 

「最初は、どこかに転移しただけだと思ったの。だから、魔力の痕跡を追った」

 

 俺は黙って聞いた。

 

「でも、どこにもいなかった」

 

 セレーネは護符を取り出した。

 

 銀色の月の紋様。

 

 俺が持っているものと対になる護符だ。

 

「これだけが、カイが生きているって教えてくれた」

 

 俺は胸元の護符に触れた。

 

「……そうだったのか」

 

「ええ」

 

 彼女は小さく頷いた。

 

「でも、遠すぎた。方向も分からなかった」

 

 セレーネは窓の外を見た。

 

「それでも、諦めたくなかった」

 

 俺は何も言えなかった。

 

 彼女は続けた。

 

「勇者様たちも、協力してくれたの」

 

 その言葉に、俺は胸が熱くなった。

 

「……みんなは、無事なのか?」

 

 セレーネは頷いた。

 

「ええ。少なくとも、私がこちらへ来るまでは」

 

 俺は大きく息を吐いた。

 

 ……よかった。

 

 あの決戦で、全員を失ったのではないかと何度も考えた。

 

 勇者。

 

 共に戦った仲間たち。

 

 何度も命を預け合った人たち。

 

 みんな、生きていた。

 

 それだけで、胸の奥にあった重いものが少し軽くなった。

 

「……本当に、よかった」

 

 俺は呟いた。

 

 セレーネは微笑んだ。

 

「みんな、カイのことを心配していたわ」

 

「……そっか」

 

「勇者様なんて、何度も『あいつは絶対に生きている』って言ってた」

 

 俺は思わず笑った。

 

「あの人らしいな」

 

「でしょう?」

 

 セレーネも笑った。

 

 少しの間、俺たちは昔の仲間たちの話をした。

 

 懐かしい名前。

 

 懐かしい出来事。

 

 くだらない失敗談。

 

 命懸けの戦い。

 

 笑い合いながら話しているうちに、俺はようやく実感した。

 

 あの世界は、夢ではなかった。

 

 俺が過ごした時間も。

 

 共に戦った仲間たちも。

 

 すべて、本当に存在していた。

 

     ◇

 

 しばらくして、俺はセレーネへ尋ねた。

 

「……それで、どうやってこの世界へ来たんだ?」

 

 彼女は少しだけ表情を引き締めた。

 

「その話をするには、まず説明しなきゃいけないことがあるの」

 

「何?」

 

「カイが消えた後、私たちは邪神の残した痕跡を調べたの」

 

 俺は頷いた。

 

「空間の裂け目か」

 

「ええ。でも、普通の転移魔術とは全然違った」

 

 セレーネは護符を握った。

 

「世界と世界の境界そのものが、傷ついていたの」

 

 俺は眉を寄せた。

 

「……境界?」

 

「そう。魔術師たちの間では、世界の外側にある領域について、古い伝承が残っていたの」

 

 俺は黙って聞いた。

 

「その伝承では、世界は一つだけじゃない。無数の世界が存在していて、それぞれが見えない境界で隔てられているって」

 

 ……なるほど。

 

 俺が現代日本からファンタジー世界へ転生したことも、ある意味では世界を越えた現象だった。

 

 ただ、あのときは神々の導きがあった。

 

 今回のような事故とは違う。

 

「邪神は、その境界に干渉していたのか?」

 

「たぶん」

 

 セレーネは頷いた。

 

「そして、カイが消えた場所には、ほんの僅かだけど、その痕跡が残っていた」

 

「……それを使ったのか?」

 

「ええ」

 

 彼女は少しだけ笑った。

 

「簡単じゃなかったけどね」

 

 俺は彼女を見つめた。

 

 その表情には、疲労の影があった。

 

 一年という時間。

 

 彼女はただ待っていたわけではない。

 

 調べ、学び、試し、失敗し。

 

 それでも諦めず、俺を探し続けていたのだ。

 

「……セレーネ」

 

「何?」

 

「ありがとう」

 

 彼女は目を瞬かせた。

 

「……どうして?」

 

「俺を探してくれて」

 

 セレーネは一瞬黙った。

 

 それから、顔を伏せた。

 

「……当たり前でしょう」

 

 小さな声だった。

 

「カイは、私の大切な人なんだから」

 

 俺は息を呑んだ。

 

 セレーネも、自分の言葉に気づいたらしい。

 

 頬が赤くなる。

 

「……あっ」

 

 彼女は慌てて顔を上げた。

 

「い、今のは、その……!」

 

 俺は笑った。

 

「うん」

 

「うん、じゃなくて!」

 

「俺も、セレーネのこと大切に思ってるよ」

 

 彼女は固まった。

 

 そして、ますます顔を赤くした。

 

「……もう!」

 

 セレーネは俺の胸を軽く叩いた。

 

 俺は笑った。

 

 彼女も、少し遅れて笑った。

 

     ◇

 

 やがて、セレーネは再び月を見上げた。

 

「……でも、カイ」

 

「ん?」

 

「一つだけ、気になることがあるの」

 

 俺は彼女を見た。

 

「何?」

 

 セレーネは護符を握りしめた。

 

「私がこの世界へ来たとき、最後に見えたものがあるの」

 

「最後に?」

 

「ええ。世界の境界を越える直前」

 

 彼女の表情が真剣になる。

 

「……誰かが、こちらを見ていた」

 

 俺は眉を寄せた。

 

「誰か?」

 

「姿ははっきりしなかった。でも、確かに視線を感じたの」

 

 夜風が吹いた。

 

 遠くでサイレンが鳴る。

 

「それに……」

 

 セレーネは言葉を探すように少し黙った。

 

「その存在は、私がカイを探していることを知っていた気がする」

 

 俺は胸元の護符に触れた。

 

 ……誰かが、見ていた?

 

 邪神の残した力なのか。

 

 それとも、別の何かなのか。

 

 分からない。

 

 だが、気になることがあった。

 

 俺がこの街へ来てから、何度か感じた奇妙な視線。

 

 そして、ヴィクターたちが調べても正体を掴めなかった、謎の黒服の男。

 

 ……関係があるのか?

 

 今は、判断できない。

 

 俺はセレーネへ向き直った。

 

「その話、明日ヴィクターにも聞いてもらおう」

 

「ヴィクター?」

 

「ああ。こっちで世話になってる人だよ。情報を集めるのが得意なんだ」

 

 セレーネは頷いた。

 

「分かった」

 

 俺は窓を閉めた。

 

「今日はもう休もう。長旅だったんだろ?」

 

「……ええ」

 

 セレーネは少しだけ微笑んだ。

 

「でも、不思議ね」

 

「何が?」

 

「ずっと知らない世界にいるのに、今は怖くないの」

 

 俺は彼女を見た。

 

「どうして?」

 

 セレーネは俺の手を取った。

 

「カイがいるから」

 

 その言葉に、俺は胸の奥が温かくなるのを感じた。

 

「……そっか」

 

 俺は握り返した。

 

「俺もだよ」

 

 彼女が目を瞬かせる。

 

「セレーネが来てくれて、ようやく安心した」

 

 セレーネは嬉しそうに微笑んだ。

 

「……うん」

 

     ◇

 

 その夜。

 

 セレーネがミナの部屋へ戻った後、俺は一人、居間のソファへ腰を下ろした。

 

 部屋は静かだった。

 

 遠くから車の音が聞こえる。

 

 シルヴァは廊下で眠っている。

 

 リクとミナも、セレーネも、もう眠っただろう。

 

 俺は胸元の護符を取り出した。

 

 銀色の月の紋様。

 

 一年前、別れ際に交わした約束。

 

 離れていても、必ず見つける。

 

 その約束は、果たされた。

 

 俺は護符を握り、静かに息を吐いた。

 

 ……セレーネ。

 

 また会えて、本当によかった。

 

 俺はソファへ横になった。

 

 目を閉じる。

 

 明日から、また忙しくなるだろう。

 

 セレーネにこの世界のことを教えなければならない。

 

 ヴィクターたちにも紹介したい。

 

 元の世界のことも、もっと詳しく聞きたい。

 

 そして、これからどうするか。

 

 二人で考えなければならない。

 

 だが、今夜は。

 

 何も考えずに眠りたかった。

 

 俺は小さく笑った。

 

「……今度こそ、一緒にいられるといいな」

 

 誰にも聞こえない声で、そう呟いた。

 

 そして、ゆっくりと眠りに落ちた。

 

 ナイトシティの夜は、相変わらず騒がしい。

 

 だが、俺の心は不思議なほど静かだった。

 

 長い一年が終わり、新しい日々が始まる。

 

 今度は、セレーネと一緒に。

 

 勇者一行の仲間として戦ったあの頃とは違う。

 

 ここには魔王城も、魔物の大軍もない。

 

 代わりに、企業とギャング、銃と義体が支配する巨大都市がある。

 

 それでも。

 

 守りたいものは、変わらない。

 

 大切な人たちが、明日も笑っていられること。

 

 そのためなら、俺は何度でも剣を取る。

 

 そして今度こそ。

 

 彼女と共に、未来を歩いていこう。

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