神々の剣士、ナイトシティで初めての仕事を知る
ナイトシティでは、何もかもに値段がつく。
食事。
住居。
医療。
情報。
そして、人間の命にさえ。
そんな話を聞いたのは、この世界に来てからまだ二日目のことだった。
もっとも、その言葉の意味を本当に理解するまでには、もう少し時間が必要だったのだが。
◇
「……仕事、ね」
俺は目の前の男を見つめた。
灰色のジャケット。
整えられた短い髪。
左目には、薄い青色の光を宿した人工眼球。
年齢は三十代半ばほどだろうか。
見た目だけなら、どこにでもいそうな会社員だ。
だが、身のこなしが違う。
周囲への視線の配り方。
椅子に腰を下ろす際の重心移動。
そして、常に右手を自由にしていること。
少なくとも、荒事に慣れている人間なのは間違いなかった。
「そう。仕事だ」
男は微笑んだ。
「君のような人材を探している人間がいてね」
「……その人間ってのは?」
「それを話す前に、いくつか確認させてほしい」
俺は眉をひそめた。
「質問に答える義務はないと思うが」
「もちろん。答えたくなければ答えなくていい」
男はあっさりと頷いた。
……妙に物分かりがいいな。
俺は少し警戒を強めた。
男はそんな俺を見て、小さく笑う。
「そんなに身構えなくてもいい。少なくとも、ここで君を襲うつもりはないよ」
「……そうか」
俺は頷いた。
だが、警戒は解かなかった。
昼間の食堂。
周囲には何人もの客がいる。
ここで騒ぎを起こせば、無関係な人間を巻き込む可能性がある。
それは避けたい。
男も、そのことを理解しているのだろう。
わざわざ人目のある場所で接触してきたのは、敵意がないことを示すためかもしれない。
「……それで、何を聞きたい?」
俺が尋ねると、男は少しだけ姿勢を正した。
「まず、君の名前を確認したい」
「カイだ」
「姓は?」
「……カイでいい」
男は一瞬だけ目を細めた。
だが、追及はしてこなかった。
「分かった。カイ。それじゃ、次の質問だ」
男はテーブルの上に小さな端末を置いた。
画面には、昨夜の戦闘映像が映し出されている。
四人の武装した男。
そして、彼らを相手に戦う俺。
「この映像について、説明してもらえるかな?」
「……何を?」
「君の戦い方だよ」
男は画面を指差した。
「銃を持った相手に、ほとんど素手で勝っている。しかも、相手を殺していない」
「……それが?」
「普通じゃない」
男は即答した。
「ナイトシティには腕の立つソロが大勢いる。だが、君のような戦い方をする人間は珍しい」
俺は少し考えた。
確かに、そうかもしれない。
この世界では、銃器やサイバーウェアが戦闘の中心になっている。
それに対して、俺が使っているのは剣術と体術だ。
もちろん、元の世界でも弓や魔法による遠距離攻撃は存在した。
だが、銃はそれらとは性質が違う。
弾丸は速い。
射程も長い。
何より、扱うために特別な魔力や才能が必要ない。
訓練を受けた兵士ならともかく、街のチンピラですら簡単に人を殺せる武器を持っている。
……恐ろしい世界だ。
「……昔から鍛えていただけだよ」
俺はそう答えた。
男が笑った。
「昔から、ね。君、まだ十代だろう?」
「十六歳だ」
「……十六?」
男の笑みが、わずかに固まった。
隣に座っていたリクが口を挟む。
「俺も最初は驚いたぜ。こんなに強いのに、カイって十六なんだよ」
「……リク」
「何だよ。本当のことだろ?」
俺はため息をついた。
男はしばらく俺を見つめていた。
そして、小さく呟く。
「……ますます興味深いな」
……何だか嫌な予感がする。
◇
「自己紹介が遅れたね」
男はそう言って、胸元から薄いカードを取り出した。
「私はエリオット。仕事ではエリックと呼ばれることもあるが、好きな方で呼んでくれ」
「……エリオット」
「ああ」
男は頷いた。
「情報の収集や、人と人を繋ぐ仕事をしている」
「……仲介人か?」
「そんなところだ」
俺はカードを受け取った。
そこには、名前と連絡先らしき情報が記載されている。
だが、俺にはまだこの世界の通信機器がない。
どうやって連絡するのかも分からなかった。
「……一つ聞いていいか?」
「何かな?」
「フィクサーって知ってるか?」
その言葉を口にした瞬間。
エリオットの目が、わずかに変わった。
「……もちろん」
男は微笑んだ。
「ナイトシティで仕事を探すなら、避けて通れない存在だ」
「そうなのか」
「ああ。依頼人と傭兵を繋ぎ、報酬や条件を取り決める。そういう仕事をしている人間たちだよ」
俺は頷いた。
リクから聞いた話と一致する。
「……お前もフィクサーなのか?」
エリオットは首を横に振った。
「いや。私は、その下で動いている人間だ」
「……なるほど」
「今回も、あるフィクサーの代理で君に会いに来た」
俺は少しだけ姿勢を正した。
どうやら、ようやく本題に入るらしい。
「……そのフィクサーは、俺に何をさせたいんだ?」
エリオットは端末を操作した。
画面が切り替わる。
そこには、古びた倉庫の写真が映し出されていた。
外壁は錆びつき、窓の一部は割れている。
周囲には、コンテナや廃車が積み上げられていた。
「……これは?」
「倉庫だよ」
「それは見れば分かる」
俺が答えると、エリオットは小さく笑った。
「失礼。では、説明しよう」
男は画面を拡大した。
倉庫の周辺には、数人の武装した人間が写っている。
「この倉庫には、ある人物の所有物が保管されている」
「……所有物?」
「ああ。正確には、盗まれた品物だ」
俺は眉をひそめた。
「盗まれた?」
「そう。依頼人は、それを取り戻したがっている」
なるほど。
奪われた物を取り返す仕事か。
元の世界でも、似たような依頼は何度も受けた。
盗賊に奪われた荷物。
魔物に持ち去られた宝物。
時には、人質の救出。
そういう仕事なら、経験はある。
「……何を取り戻すんだ?」
「小型のデータストレージだ」
「……データストレージ?」
「情報を保存する装置だよ」
俺は頷いた。
前世で言うところの、記録媒体のようなものだろう。
「……中身は?」
エリオットは肩をすくめた。
「依頼人の機密情報だそうだ」
「……具体的には?」
「それは教えられない」
即答だった。
俺は目を細めた。
「……知らないのか?」
「知る必要がない、と言った方が正しいかな」
なるほど。
どうやら、この街の仕事にはそういうものが多いらしい。
依頼人が何を隠しているのか。
その情報が何に使われるのか。
そういったことを知らずに、依頼だけをこなす。
……少し、気に入らないな。
「……悪いが」
俺は静かに言った。
「中身も分からない物を、いきなり取り返せと言われても困る」
エリオットが眉を上げた。
「……ほう?」
「例えば、その情報が誰かを傷つけるためのものだったらどうする?」
「……」
「それを知らずに手伝うのは、俺の性に合わない」
エリオットはしばらく黙っていた。
そして、微笑んだ。
「……なるほど」
男は端末を閉じた。
「君は、少し変わっているね」
「……よく言われる」
俺は肩をすくめた。
リクが隣で頷いている。
……おい。
そこは否定してくれてもいいんじゃないか?
◇
「では、別の話をしよう」
エリオットは姿勢を正した。
「君は、この街で仕事を探しているんだね?」
「ああ」
「目的は?」
「生活費を稼ぐことだ」
「……それだけ?」
「今のところはな」
俺は答えた。
もちろん、本当の目的は別にある。
元の世界へ帰る方法を探すこと。
セレーネたちと再会すること。
だが、それを初対面の相手に話すつもりはなかった。
そもそも、信じてもらえるとは思えない。
エリオットは少し考えた。
「……君には、身分証があるかい?」
「ない」
「銀行口座は?」
「ない」
「通信インプラントは?」
「……それもない」
エリオットは目を瞬かせた。
そして、ゆっくりと息を吐いた。
「……本当に?」
「ああ」
「……君、どうやって生活しているんだ?」
「昨日、この街に来たばかりだからな」
男の表情が固まった。
「……昨日?」
「そうだ」
「……どこから?」
「遠いところだ」
俺は答えた。
エリオットは額に手を当てた。
「……なるほど」
その声には、何とも言えない響きがあった。
「……君は、私が思っていた以上に厄介な人材らしい」
「……褒めてるのか?」
「半分くらいは」
俺は苦笑した。
エリオットは端末を操作しながら言った。
「普通、ナイトシティで傭兵として働くには、最低限の準備が必要だ」
「……例えば?」
「通信手段。報酬を受け取る方法。身元を保証してくれる人間。それから、ある程度の装備」
俺は頷いた。
確かに、どれも必要そうだ。
「……銃も必要か?」
俺が尋ねると、エリオットは少し考えた。
「必須ではない。だが、持っていた方がいい」
「……なるほど」
「君は近接戦闘が得意なようだが、ナイトシティでは銃を使う相手が圧倒的に多い」
俺は頷いた。
それは、すでに実感している。
昨日から何度も銃を向けられているのだ。
「……まあ、考えておくよ」
俺がそう言うと、エリオットは苦笑した。
「君は本当に変わっているね」
……またか。
どうやら、この街では俺のような人間は珍しいらしい。
◇
「……それで、カイ」
エリオットが再び口を開いた。
「君に一つ提案がある」
「……何だ?」
「最初から危険な仕事を任せるのは、こちらとしても不安がある」
俺は頷いた。
それは理解できる。
向こうからすれば、俺は身元不明の少年だ。
どれほど戦闘能力が高くても、信用できるかどうかは別問題だろう。
「だから、まずは簡単な仕事を一つやってもらいたい」
「……簡単な仕事?」
「ああ」
エリオットは端末を操作した。
画面に、新しい写真が表示される。
そこには、一台の車が映っていた。
黒い車体。
頑丈そうな外装。
そして、いくつかの傷。
「……車?」
「そう。依頼内容は、この車の護衛だ」
俺は眉をひそめた。
「……護衛?」
「ああ。ある荷物を運ぶ車両に同行して、目的地まで無事に届ける。それだけだ」
「……荷物の中身は?」
「医療用品だよ」
俺は少しだけ目を細めた。
「……本当か?」
エリオットは苦笑した。
「疑り深いね」
「昨日から色々あったからな」
「……それもそうか」
男は頷いた。
「中身は医療用の消耗品と、簡単な治療器具だ。違法な薬物や武器ではない」
「……確認してもいいか?」
俺が尋ねると、エリオットは少し驚いた顔をした。
だが、すぐに頷いた。
「もちろん。依頼を受けるなら、出発前に確認してもらって構わない」
俺は少し考えた。
医療用品の運搬。
それなら、誰かの役に立つ仕事だ。
少なくとも、現時点では問題なさそうだった。
「……報酬は?」
俺が尋ねると、エリオットは微笑んだ。
「千五百エディー」
俺は一瞬、黙り込んだ。
千五百。
昨日の食事代や買い物の金額を考えると、決して少なくない額だ。
だが、相場が分からない。
高いのか。
安いのか。
それとも、危険に見合っていないのか。
判断できなかった。
「……リク」
俺は隣の少年に声をかけた。
「ん?」
「千五百エディーって、どう思う?」
リクが目を丸くした。
「……は?」
「高いのか、安いのか分からなくてな」
リクはしばらく俺を見つめていた。
そして、額に手を当てる。
「……カイ、あんた本当に金の感覚がないんだな」
「昨日来たばかりだからな」
「……それ、便利な言い訳だな」
リクはため息をついた。
そして、小さな声で言う。
「……悪くねえと思う。でも、危険な仕事なら話は別だ」
俺は頷いた。
確かに、その通りだ。
「……襲撃される可能性は?」
俺が尋ねると、エリオットは少しだけ真剣な顔になった。
「ゼロではない」
「……具体的には?」
「最近、そのルートで小規模な強盗が発生している」
俺は眉をひそめた。
「……それで護衛が必要なのか」
「ああ」
エリオットは頷いた。
「ただし、依頼人は大規模な襲撃を想定していない。あくまで、万が一に備えた護衛だ」
俺は少し考えた。
……なるほど。
完全に安全な仕事ではない。
だが、戦闘になる可能性があるなら、俺の能力を活かせる。
それに、報酬も悪くなさそうだ。
「……一つ条件がある」
俺は静かに言った。
エリオットが眉を上げる。
「……何かな?」
「荷物の中身を確認させてもらうこと。それから、依頼人が誰なのか、最低限の情報を教えてほしい」
男は少し考えた。
そして、頷いた。
「……分かった」
「それと」
「まだあるのかい?」
「依頼を受ける前に、報酬の支払い方法を決めておきたい」
エリオットは笑った。
「……君、意外としっかりしているね」
「金のことで揉めるのは面倒だからな」
俺は肩をすくめた。
元の世界でも、報酬の未払いは何度か経験した。
そのたびに、面倒な交渉をする羽目になったものだ。
だからこそ、最初に条件を確認する重要性は理解している。
「……分かった。報酬は現金で支払おう」
「助かる」
俺は頷いた。
エリオットは端末を操作し、いくつかの情報を表示した。
「出発は明日の午前。集合場所はここだ」
画面に、地図が表示される。
俺はそれを眺めた。
……当然だが、まったく分からない。
「……リク」
「……何だよ」
「ここ、どこだ?」
リクは大きくため息をついた。
「……分かったよ。後で案内してやる」
俺は笑った。
「頼りにしてる」
「……ったく」
リクは呆れたように言った。
だが、その口元には小さな笑みが浮かんでいた。
◇
話し合いを終えた後、エリオットは席を立った。
「では、明日の朝に」
「ああ」
俺は頷いた。
男は一度だけ振り返る。
「……カイ」
「ん?」
「一つだけ忠告しておこう」
その声は、先ほどまでとは違っていた。
軽い調子が消え、真剣な響きが混じっている。
「ナイトシティでは、強いだけでは生き残れない」
俺は黙って聞いていた。
「誰を信用するか。誰と敵対するか。どんな仕事を受けるか」
エリオットは続けた。
「それを間違えれば、どれほど腕が立っても簡単に死ぬ」
俺は静かに頷いた。
「……覚えておくよ」
男は微笑んだ。
「それならいい」
そして、店を出ていった。
俺はその背中を見送った。
……どうやら、悪い人間ではなさそうだ。
少なくとも、今のところは。
だが、完全に信用するには早い。
俺は小さく息を吐いた。
「……さて」
リクがこちらを見る。
「……どうするんだ?」
「何が?」
「明日の仕事だよ」
俺は少し考えた。
そして、笑った。
「……やってみるさ」
リクが目を丸くした。
「……本当に?」
「ああ」
俺は頷いた。
「この街で生きていくには、金が必要なんだろ?」
「……まあ、そうだけど」
「だったら、働くしかない」
俺は肩をすくめた。
元の世界でも、冒険者として依頼を受けていた。
魔物退治。
護衛。
探索。
物資の運搬。
仕事の内容はさまざまだった。
この世界でも、基本的には同じことだ。
違うのは、相手が魔物ではなく、銃やサイバーウェアを持った人間だということ。
そして、報酬が金貨ではなく、エディーだということ。
「……まあ、何とかなるだろ」
俺がそう言うと、リクは呆れた顔をした。
「……カイって、ほんと変な奴だな」
「……それ、もう聞き飽きたぞ」
俺たちは笑った。
窓の外では、巨大な広告が光を放っている。
ナイトシティ。
欲望と暴力が渦巻く街。
その片隅で、俺は初めての仕事を手に入れようとしていた。
◇
同じ頃。
ナイトシティの一角。
薄暗い事務所の中で、一人の男が通信端末を眺めていた。
画面には、短い報告が表示されている。
『対象、護衛任務を受諾』
男は小さく笑った。
「……そうか」
机の上には、昨日の戦闘映像が並んでいる。
黒髪の少年。
異常な身体能力。
未知の電撃。
そして、サイバーウェアの装着記録なし。
男は椅子にもたれかかった。
「……さて、カイ」
その声には、明らかな興味が込められていた。
「お前が本当に使える人間なのか、見せてもらおうじゃねえか」
男は端末を操作した。
新しい画面が開く。
そこには、翌日の護衛任務に関する情報が表示されていた。
輸送ルート。
依頼人。
積み荷。
そして、最近その周辺で発生している強盗事件。
男はそれらを眺めながら、小さく笑った。
「……まあ、普通のソロなら問題ない仕事だ」
少し間を置く。
「ただし、この街じゃ何が起こるか分からねえ」
男は通信端末を閉じた。
そして、窓の外を見た。
ナイトシティ。
無数の光が、夜の闇を照らしている。
その中で、一人の少年が新たな一歩を踏み出そうとしていた。
神々から授かった力を持つ、異世界の剣士。
その存在が、この街にどのような変化をもたらすのか。
まだ、誰も知らない。
もちろん。
少年自身も。
◇
その夜。
俺はリクとミナの部屋に戻り、明日の準備を整えていた。
新しく買った服。
長剣を入れるケース。
必要最低限の現金。
そして、護衛任務の集合場所を書き留めた紙。
この世界の通信機器を持っていないため、情報は紙に記録している。
リクには少し笑われたが、仕方ない。
使い方を知らない機械に頼るより、確実な方法を選んだ方がいい。
「……カイお兄ちゃん」
背後から声がした。
振り返る。
ミナが寝台の上からこちらを見ていた。
「……どうした?」
「明日、お仕事に行くの?」
「ああ」
俺は頷いた。
「少し遠くまで行ってくる」
「……危なくない?」
少女が心配そうに尋ねる。
俺は少し考えた。
危険がないとは言えない。
だが、不安にさせる必要もない。
「……気をつけるよ」
俺はそう答えた。
ミナはしばらく俺を見つめていた。
そして、小さく頷いた。
「……うん」
俺は微笑んだ。
「それより、身体の具合はどうだ?」
「……だいぶ楽になった」
「そうか」
俺は安堵した。
昼と太陽の神から授かった奇跡は、確かに効果を発揮している。
だが、病気の原因が完全に取り除かれたかどうかは、まだ分からない。
今後も様子を見る必要がある。
「……無理はするなよ」
「うん」
ミナが頷いた。
俺は少女の頭を軽く撫でた。
すると、ミナは少し嬉しそうに笑った。
「……カイお兄ちゃん」
「ん?」
「……ありがとう」
俺は一瞬、言葉に詰まった。
そして、笑った。
「……どういたしまして」
その言葉を聞いて、ミナは安心したように目を閉じた。
俺はしばらく、その寝顔を見つめていた。
……守れるものは、守りたい。
元の世界でも、そう思って戦ってきた。
この世界でも、その気持ちは変わらない。
たとえ、どれほど危険な街であっても。
たとえ、神々の声が届かなくても。
俺は、俺のやり方で生きていく。
「……さて」
俺は小さく息を吐いた。
明日は、初めての仕事だ。
どんな相手が待っているのか。
何が起こるのか。
まだ分からない。
だが。
「……やるだけやってみるか」
俺は静かに呟いた。
そして、胸元の護符に触れた。
セレーネ。
いつか、必ず会いに行く。
そのためにも。
まずは、この街で生き延びなければならない。
窓の外では、ネオンの光が瞬いていた。
神々の剣士がナイトシティで迎える、二度目の夜。
その翌日。
彼は初めて、フィクサーの依頼を受けることになる。
そして、その仕事を通じて。
この街が持つ、もう一つの顔を知ることになるのだった。