人類を愛して止まない彼女と、全てを知る愚者の昔話 作:夢小説ボンプ
...それでも、思い出さないといけない。
...きっと、貴方は混乱してる。
...瞳を、目を覚ましたばかりなのだから。
...仕方がない...けれど、これはきっと貴方に■■■■■■しかない。
...貴方ならきっと出来る。
...根拠はあるにはあるの。
...ただ、貴方は■■■ないだけ。
ホロウを■■する為には...貴方の■■が今も不可欠、どれだけ発展したとしても■■■は止められない。
例え...■■を払う事になったとしても、■■■を得るのは常に■■■の人の業のみ。
貴方は...色んな■■で呼ばれていた。
■■■...■■...エーテル■■の■■■。
ただ一つ、あるとするならば...ドクター。そう...呼ばれれば良い。例え戯言だとしても...■■■■にはもう、貴方しかいないのだから。
―――
...私はもう、ダメなのだろうか。
理由は今も分からない、日々に嫌気が差したのだろうか?無理だと絶望をしたのか、彼もまた...被害者でしかない。
今では、私すらも分からない。
...ただ一つ。
...言えることが有るとするなら、私が知る彼は...あの亡霊は―――
―――昔は違った、
...優しく、賢く。
...思いやりのある純人間だった。
...例え、シリオンだろうと、知能構造体だろうと彼は、公平に接する差別しない人であった。
彼が初めて、私に接したように。
...自身と比べて違う彼等彼女の姿を見て、市民は怪物と呼び、心を持たない兵器と罵った。
だが、そんな者達を彼は結果として認めさせた。ホロウが蔓延るこの世界で、争うのが如何に意味のないことか、彼らが役に立つと示した、素人だろうと分かる方法を提示した。
...でも、彼は...その変わりに愛する者を全て喪い、何も出来ず奪われることになった。
後になって知った頃には...もう、私ですら取り返しがつかなかった。
これは、彼が遺した昔話。
学者との出会い、思い話、"全てを知る愚者"としての過ちと後悔。
―――そして、これは...
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...何も思い出せない。
初めは何の実感も沸かなかった、だがゆっくりと...感覚が戻ってきたように感じる。しかし、重要なことは依然として何も思い出せないまま。
...思考を巡らせ続ける。
酷く頭痛がする、何かを思い出せそうで...思い出せない。
...鏡に私に似た姿の男、彼は口を開く。
『...来たね』
『うーん...変な感じだよ、〚私〛が来たなんて...本当にね』
「君は...なんで、俺そっくりなんだ。それに...ここは何処なんだ!」
貴方は思わず、そう...目の前の自分?に、言葉をハッキリと出した。
混乱する頭のまま、出た言葉で。
『...初代虚狩り。今の新エリー都市民なら誰でも知る筈で。この名を、称号を、奇跡を、偉業を成し遂げだ英雄の名を忘れはしないよ』
『...エリー都時代。七名の...初代虚狩りがいた。讃領会をたった単騎で斬り伏せた尾無し狐の剣豪、星見家三代目当主』
『当時のマルセルグループCEOにして...ボンプの発明者であり、空に蔓延るホロウを消滅させた怪物、ミス・サンブリンガー。彼女は...人類を愛していた、今では...その真意は不明な彼女も...これは今は関係ないね』
『単騎でホロウ内探索の基礎を築いた調査ギルドのエース、ジョイアス。ミス・サンブリンガーが直々に製造したプロトタイプボンプを連れ...人類初、となるホロウ内構造を記録したデータを持ち帰る偉業を...成し遂げた。...なんて言うけど、こんな言葉飾りはあまり似合わないかもね』
『ヘーリオス研究所を創設し、ホロウの様々な特性を解き明かしたホロウ研究の第一人者、アーチ教授。本来あるはずの頭部はそこには存在無く、常に...紫色の炎が揺らめいていた。みんなの先生なのかも?』
『ダークウォールを37km後退させた杖の軍、レミエール・ダン中佐、ベリオラ・ヴァイク大佐、ファルケンハイン傭兵団の長。ダークウォールが何なのかは当時の人間しか...知り得ない。これに関しては、僕の口からも言えないかな』
「何を言って、俺の質問に答えてくれ!誰なんだ君は、ここは...」
『...そして、私がこれから語る話は今も歴史に記されていない、だから...これを聴く者たちは信じられないかも知れない』
『―――記されていない真実もまた、数多にあることを...歴史の闇に、深淵に飲み込まれた真相を』
『当時の私は...いや、ドクター。彼女と同じで...ホロウから世界を取り戻せると思っていた。遂に、時間の問題だと...思えていたのに』
『―――なんで...どうして、...教えてくれなかったんだ。私じゃ...力不足だったのか?本当は信頼すらもしていなかったのか、■■■■■■■■■■■』
『長く、永く、時を生きてきたんだ。...シリオン、鬼族、様々な種族にある全て、純人間の間にある互いの差別意識...エーテル侵蝕者の迫害、当時の私にはその全てを本当の意味で救済する事は...叶わなかった、出来なかった』
『―――たった一つの秘密が、真相が全てを覆す結果になるなんて...思いもしなかった』
「何を言って...」
『記憶も、力さえも喪った。みんなの〚
『無限の可能性を秘めた、〚未来〛の為に、ここまで永く生きて、紡いできた。全てを知る者として、人として出来る限り生きてきたつもりだけど』
『それをリセットするには、私は
後悔するように、貴方の姿をした彼は言葉を続けていた。何か聞かなければと、此方も口を開く。
「...なら、教えてくれ。昔の俺、こんな性格だったのは予想外だけど、彼女には...ダンには貴方が必要なんだ!」
『...私が思うにレミエールも随分、私たちに振り回されてしまったようだね。ごめんって、君の方から彼女に伝えてくれると助かるかな。それに...君も私に聞きたい事があるんじゃないかな?』
「.......」
...貴方は黙り込む、そして―――
「―――なら、教えてくれ、俺は...いったい、何者なんだ」
貴方は自分?に向けてそう言った、自分?は微笑みながらも、それに答えてくれる。
『随分とまあ...真っ直ぐな質問をしてくれるんだね、良いよ...ちゃんと答えるけど、簡単に、ね?』
そんな自分?に視線を向ける。視線は逸らす事も出来ず、まるで導かれるようにさえも感じた。
『"エーテルの権威、多数の偉大な業績を生み出した人"―――なんて、言われた事もあるよ』
懐かしむように、自分?は語る。
『―――でも、暴君で裏切り者...〚エーテリアスと同じ人類の敵〛だと言う人もいた、かな』
自分?は哀しむように、真っ白な世界の床に視線を下ろした。
それでも、彼は語るのだ。
自身の...過ちを。
―――貴方が知りたい過去の自身が歩んだ
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私は...ホロウが蔓延るこの世界の中でも、有数の医学系大学の学生であった。
こんな世界...こんな世界だからこそ、今や何処の大学の医学部もエーテルによる侵蝕とは、...切っても切り離せない関係。
大学の予算...入学する学生の志がどうであれ、エーテルは私生活の何処にでも存在し、人類の存続を脅かす未知数の天災。
俺も例にも漏れず、エーテル侵蝕を研究する研究者を志すようになったのは別におかしな話でも、珍しい話でも何ともなかった。
大人の仲間入りをして、歳を重ねて行けば上級生になっていく。これは自慢だが...学内トップの成績を保持し続けられている、どうやら俺は...他と比べて理解力が高く、本質を見抜く力があるのだと、教授は話してくれた。
教授とはたまたま研究内容が同じであり、教授の元で幾つかの論文を執筆する事になった。
そんな教授は俺を補佐役として傍に置いてくれた、『同じ研究内容なら、私から学べるものがあるかも知れない。必要ならいつでも頼れ』なんて、そんな言葉も掛けてくれた。
俺は教授の研究を補佐しつつ、俺も最初の論文を執筆する事にした。内容は【生物が生まれながら持つ、エーテル耐性の検査方法】の確立に関するものだ。
当時の研究機関レベルでも、ある程度は生物が持つエーテルに対する耐性は大雑把と言えど、測定することは出来ていた。
ホロウ内に長時間いても侵蝕のよる症状が出ていないか、出ているかの二つ。
前者は...体表からエーテル結晶が出ていなければ耐性は高く、身体が適応している。
後者は...体表からエーテル結晶が現れているのであれば既に手遅れと診断され、身体はエーテルに侵蝕され続け...肉体的にも精神的にも衰弱して、最後には...生命の活動を終えてしまう。
...更に、後者の厄介な所はホロウ内であればエーテリアス...つまり、ホロウ内にいる化け物の仲間となり、人類の敵となってしまう。
友人が...仲間が...恋人が...家族が...エーテリアスになってしまう惨状がいつも隣り合わせで存在している。もし...出くわしたのならその人はどうするのだろうか、自身の手で...化け物となる者たちの幕を引くことが出来るのか、...そんな事は考えたくもない。
詳しく話すのなら、当時の侵蝕者検査と言えば、体表に現れるエーテル結晶の数や大きさから判断するのが民間医療の実態。
...だが、先ほど語った後者の話通り、体表からエーテル結晶が現れているのであれば既に手遅れの状態、もう...手の施しようがない...それが今の現状だ。
そんな研究機関...医療機関の現状の中、俺は運が良かったのもあるのだが、この世界で有数の大学に入学出来てからそう言った現状の知識を手に入れ、世間での医療サービスはエーテルの前では如何に意味を成さないのか...現実を知ってしまった。
...そんな現実を目の当たりにしてからと言うもの、必死に研究を続ける日に明け暮れた。いつしか寝ないのも当たり前、食事をすることすら忘れる程に、俺は研究に没頭していた。
そんな日々を過ごして数年後、大学を卒業する時期がやってきた。
時間と言うのは何かに没頭すればあっという間に過ぎていく。今までの研究成果を論文の形としてまとめる事で、大学は卒業する事が出来た。
大学を卒業する為に提出した論文、それは何故か高く評価された事は今も不思議なことだ。今となってはあれで良かったのか俺自身でも判断はつかない、論理的に説明が出来ている部分もあれば常識的に考えて怪しい所も幾つかのあった筈だ。
だが結果としては、俺の書いた論文は研究機関に広くて知れ渡り、俺は博士号を得ることになった。近年稀に見る成果...新たな着目点を見つけたと、世間の注目を少しばかりだが集める事になった。
主に世間から注目を浴びたのは教授なのだが、その教授の元で学び...教育を受けた論文の第一著者の学生としての立ち位置を確立。そんな事もあり、様々な企業からリクルーティングのお誘いが自身に届いた。
当時は...ただの学生だ。
そんな強面企業の数々に臆しながらも...内心では少しばかり浮かれていた自分もいた。
そんな誘いを受けたと、教授に報告した時何故か...教授はあまりいい顔をしなかったのを今も俺は覚えている。
教授は俺に...研究者として大学機関に残るようにと力説を受けた、しかしながら...当時の俺はまだ若かったのもあり、今の現状を現場で見たい...自身の目で確かめ、受け止めたいと...教授に自身の思いそのままを言葉に乗せて伝えた。
...結果、先に折れてくれたのは教授の方からだった。
結果的には...教授は受け入れてくれた。教授は俺に最も合うであろう研究環境があると、俺に永く永く...永く語り続ける。そのせいか今度はこっちが折れてしまい、教授が勧める
教授の熱く語る力説に、最終的には受け入れる事になった。
ここまで良くしてもらったのだ、そんな教授が勧める讃領会はきっと俺に合う場所なのだろうと思えた。
...しかし、思い返して見れば讃領会なんて組織、名前すらも聞いた事もなく...心当たりはない。
流石に数年エーテルに関する研究に従事していたこともあってか、有名な研究機関や製薬企業は概ね頭に入れている。
そのことについて何個か質問するが教授は多く語らず、...『公然ではない組織』と言う説明に思わず眉を顰める。
そんな俺を心配してか、教授は軽くだがどんな組織なのか話してくれた。
―――
讃領会と呼ばれる組織は様々な企業から資金提供を受けており、研究環境に困る事は全くない。それどころか最先端の機器を迷わず導入してくれる懐の良さ、援助もバックアップさえもしてくれると言われた。
―――地獄への、片道チケットであった。
...そして最後に、教授は忠告なのかは分からないが教授は言う。『この事は何があろうと外部に漏らしてはいけない、最高機密レベルの情報だ。良いな?』と、厳重に注意を受けたのも覚えている。
―――それが...私最後の分岐点であり、人としての人道を踏み外す道になるなんて...思いもしなかった。それどころか奴らは...私を逃そうなどとは考えてはいない、讃領会のエージェントは既に部屋の外で待機していたのだ。私が誘いを拒んだ場合は...強制的に連行する手筈だったのを知った。
―――初めから...この組織、讃領会からは逃れる事は叶わない話だったのだ。
表向きは何処にでもある変哲もない大きな病院に勤務すると言う説明を受けた、現場と研究を両立出来る待遇。
不満など一切なく...期待に気持ちを膨らませていた自身がいた、やっと...スタートラインに立つことが出来たんだ。
―――だが...これだけは忘れてはいけなかった。当時の私は何故...思案を巡らせなかったのか、これほどの待遇があり...公的利益に資する行為をしているのに公然ではない組織と呼ばれていたのか...その裏を...当時の私は何故見抜けなかった、それを今でも後悔している。
...俺は讃領会に入る事にした。
勤務先は本部と言うわけではなく、彼らが持つ支部先の病院勤務、勿論入ったばかりの俺に対し当然...機密に近い情報は与えられない。
入ったばかりの俺に話してくれたのは組織のイメージと、拠点の一つである病院奥に入る為のセキュリティ認証だ。讃領会本部は別にあるようだが無論...場所など到底教えてはくれないだろう。
そんな説明の中、一員となってからは所属している人物を紹介してくれたのだが...所属している人物は徹底的に秘匿されており、足がつかないようにしている手回しがされていた。
俺が知り得る讃領会関係者は、大学時代の教授と、勤務する病院奥で会う数人の研究者だけだ。
これも...組織を裏切る行為を警戒してのものだろう、例え少なからず漏れてしまっても、このことを知る研究者と恩師...俺さえ殺害する事が出来れば秘匿は容易に出来てしまう。
勤務地にある治安局にさえも...手回ししているのであれば...事態を沈静化するのは別に難しい話でもない。
―――どうやら私は...逃れれる道を自ら塞いでしまったらしい。
そうして...俺は病院の医師として通常勤務を続けながらも、決まった時間..日付の日に...奥にある研究室で黙々と一人で没頭していた。
公然ではない組織でも...何も変哲もない普通の研究をする。エーテル研究に携わる人なら誰でも知り得るような素材と抗体の検査、研究に関しては自身の好きな研究を主導して良いと通達された。
その事もあり、俺は遠慮無しに大学時代に進めていた研究の続きに取り掛かる事にしたのだ。
研究費に関わる予算に関しては気にしなくて良いと言われたので、試しに入手が困難であると言われるホロウ内でしか生えない試料を発注する事にしたのだが、次の日には届いていた...この組織はいったい何なんだと...自身の驚愕を隠す事は出来なかった。
―――何故...当時の私は疑いを持たなかったのだろうか、何故容易に用意出来たのかを。
この試料に関して、入手するにはリスクが合わないのだ。ホロウ内に入り何処に生えているのかすら分からない上、エーテリアスと言う化け物が生息する檻に閉じ込められる。
ホロウ内を進めば容易には出られない、ホロウとは迷路なのだが、ただの迷路と違って何もかもが入れ替わる。入ったら最期...すぐに出なければ出られない、それがホロウなのだ。
そんなホロウにある試料をたった...数十時間で用意出来るなんて、...あり得ない。と、思わず...感銘をする。
気になった俺は、自身の頼んだ発注記録に目を通すのだが...明細はされてはいない。それどころか、搬入業者はいつも同じ人たちだ。表向きの病院が必要とする物と一緒に紛れ込ませる事で、購入品として処理しているのだろう。
そのようなルートであればバレもしなず、疑われるような要素は一切ない。例え...研究員が漏らしたとしても始末さえすれば時間と共に手回しされている者たちが解決してくれるのだ。
大きな病院であるここは...つまり、讃領会の一支部としては最適な隠れ蓑だと言うことだ。
―――――――――――――――
...讃領会に所属から数年が経過した。
俺は幾つもの論文を書き、大学時代に研究していた【生物が生まれながら持つ、エーテル耐性の検査方法】を遂に...確立させたのだ。
―――それは...今も尚、新エリー都でも使用され続けられている。誰しもが...自身のエーテル耐性を、適正を安価に調べる事が出来る《エーテル適正セルフ検査キット》なる物をを世に生み出したのだ。
人類がまた一方、ホロウへの脅威に立ち向かう事が出来る。発明を確立させた事もあってか...良くも悪くともエーテルに携わる界隈では知らぬ者はいないと程に、自身の名は世界に知られたのだ。
...ただ一つ。
名前だけは有名にも関わらず、年齢や勤務地と言った情報は全て秘匿されている。仮に知れたとしても...遥か遠くの場所に勤務し、そこに居住していると言う事になっていたのだ。
例え...俺を訪ねようとして遥々遠くまで足を運んで来た者は皆、結局の所は会えないのだ。
自身の勤務地である病院では偽名を使い続け、表では何処にでもいる若い医療従事者として今も、神さえ見捨てた...ホロウが蔓延る世界の中、人類は現状と向き合っている。
病院内でも良く俺の名前が飛び交うようになった。〇〇先生は偉大だ、〇〇先生がこの業界に来てからエーテルに対する考えは更に進歩したと。
そんなことを話している同僚が病院内では多くいた、〇〇先生は自分なのだが...明かせないとなると相槌を打って同意するしかない、そんな日々が続くので本来持つ自身の名を忘れてしまいそうだ。
そんな日々を続けて来た事もあってか、本部から俺に異動命令が通達された。数カ月間かかりつけ医として、民間企業に派遣された後...契約を終えてから本部である讃領会へと向かう事になっている。
本部からの命令に歯向かうほど...命知らずの大馬鹿者ではないのだ。
企業名は『ブレウス・エーテル』と言う名、荒野ホロウ内鉱山で発掘から自社で製錬を行う重工業の会社。
鉱山町な事もあってか仕事を探す為にここに来る人は多い、町の発展を担う企業としては大変優秀らしいが...従業員をゴミ同然に扱うと悪い意味で有名な鉱山企業でもある。
安賃金で雇った者をホロウ内に入らせ、エーテル資源を採掘させる。
その事もあってか...行方不明者、エーテルに侵蝕された者、死者数が年間でも決して少なくはない。こんな仕事...誰がするのだろうかと、...思考を巡らせる。
そして...現実を目の当たりにした。
貧しい...貧しいのだ。ここに居住する者は皆、生きる為に仕事を求めてやってくる、その事もあってか...鉱山での作業を行う人は多い、例え死のうとまた...人は幾らでも補充出来てしまう。
....そんな所に、俺は派遣された。
医師として...彼らを救いたい、せめて...適切な医療サービスを提供をするんだ。...そんな思いを胸に俺は、...鉄と油の匂い、掃き溜めた空気が入れ混じる土地へと...辿り着いたのだ。
―――――――――――――――――
...ここは酷い有様だった。
鉱山以外に他の産業が出来ない、それほどに...土地は乾燥しきっていた。本部から来たエージェントが護衛として俺の前を歩く、道端に視線を送れば明らかに貧しいと分かる子供たちが労働をしている。
飛び交う罵声に怒号...先ほどの子供たちと違い、身なりの良い大人。
...理解した。
こいつらは...屑だと、信用に値しない者の集まりであると俺は結論づけた。
...そして、企業の担当者である男と合流したと後、護衛は本部へと帰っていく。彼にはちゃんと感謝を告げて見送った、それからは屑の本性が良く分かる日々を間近で見続けていた。
此方は招かれた身、なのに何故...アレほど横暴な態度を取れるのかが理解出来ない。普通の人なら最低限は礼儀を尽くしてくれるだろうに、ここにいる企業の者たちの対応は余りにもあり得ないものだ。
そのような屑が蔓延る町にも、良い人と言うものはいた。労災を受け...治療を求めに俺の元に従業員はやってくるのだが、医療品の数が幾ら何でも足りない。それを知っても尚、奴らは予算を下ろそうとはしない。
...救いようのない屑だ。
そんな状況でも医師として懸命に動くしかない、本来契約上にはない事まで、個人の判断で俺はするようになった。無料で診察するの良くない...それでも労働者の彼らを見ると何か出来ないのかと、思案してしまう。
これでは足りないと...ならば、俺は組織を利用する事にした。建前は研究で使用する試験品だが...彼らはどのような対応をするのかが不明だったが、翌日には届いていた。
医師として彼らと真摯に向き合った。
数少ない用品と簡単な診察しか出来ない俺に対して、彼らは文句も何も言わず...ただひたすら感謝を述べてくれた。その言葉は唯一の救いだった、役に立てているのだと...実感させてくれる言葉だったのだ。
...そして、とある患者がこの町の秘密を打ち明けてくれた。
「ドクター。この町にはスラムがあります、...侵蝕村です」
...それは初めて聞くものだ。
事前に調べてはいたが、そのような話は出てこなかった。住民が隠していた秘密を打ち明けてくれたのだ、俺は彼の話を聞き続けた...そして、胸元から熱い想いが込み上げてくる、俺にはまだ...やれる事はある筈だと。
...困っている人がいる。
...助けを求める人たちがいる。
...医師として行かなくてはならない。
俺は思わず患者の肩を掴んで、更に...事細かに聞くことにしたのだが。返ってきたのは...違う言葉だったのだ。
「我々もドクターの事はよく分かってます、いつも...いつもありがとうございます。こんな我々に...手を差し伸べて下さって...僕らはドクターに何も返せてはいません」
「ドクターの事です、侵蝕村に向かうと仰るのですよね。...それだけはいけませんドクター」
俺は言い返した!
「何故だ!...何故止める。助かる命があるかも知れないのだぞ!その為に教えてくれたのではないのか!」
引き止める行動に...困惑をした。
「いいえ違いますドクター、彼処は完全なる無法地帯です...飢えるか侵蝕によって死を待つだけの人しかいません。そんな場所にドクターが行ってしまえば...殺されてしまいます」
「だが...」
「これを言うには酷かもしれませんドクター...これ以上、僕らに希望を持たせないで下さい。この町での貴方は...優しすぎる、
「僕らもそんな
「だからこそ、我々はこの事をドクターに話すかを迷っていたのです!もし...貴方がその町のスラムを知ったら行くはずです、貴方は...
「........」
...彼の言葉に、先ほどの己を恥じた。
俺にも何か...出来るのではないかと思っていた。正義心に駆られ...向かう自身は大馬鹿者だ、例えエーテルによる侵蝕知識があったとしても...何が出来る。
...救える訳がないだろう!
スラム...侵蝕村にいる者たちは企業に使い捨てられた人達だ、...子供達だ。彼らの先に待つものは死しかないのに...俺は万能薬にでもなったつもりか!
...馬鹿だ。
...俺は、愚かな人間だ。
...世間知らずの、正義心に駆られた
...侵蝕者の彼ら相手に何ができる。
検査をするつもりか、意味もない治療を施すのか、結局は完治出来ないクセに...彼らに淡い期待を持たせるだけ持たせて、死なせるつもりなのか?
―――それは...当時の私に取って初めての体験、この町の従業員...子供たちを救えない自身への失望と後悔だけが今も残っている。
...それからの俺は、契約終了までブレウス・エーテルの医務室に籠るようになった。訪ねてくる者たちがいれば受け入れ、医師として真摯に彼らの悩みだろうと何でも聞き続けた。
お手伝いが必要であれば、俺自らも足を運んで向かう事もし続けた。慰め程度だろうと...皆、懸命に生きようとしている。
...ならば最後まで、せめて...この町の派遣医師として彼らと向き合おう。
―――この出来事を経て、自身の甘い考えを正すことになる。現実はいつも...平等でも公平でもない、この世は...善と悪に濁っている。
...そして俺は...契約期間を終えた後、本部である讃領会へと向かう事になっている。
俺は彼らに見送られるような形で別れた、最後に皆で歌い...踊り...未来に希望を託して。
こんな世界でも...生きればまた、明日はやってくる。
―――いつか確立させてみせると、そんな思いを胸に宿して。
貴方は讃領会へと向かったのだ。