変わらないTSガールと変わる男の娘   作:96963

4 / 4
試験で死んでました。
キリのいいとこなんでちょっと短めですけどここで区切ります
亦紅メインの回です


4話

「蓬さん、みーつけた」

 

「桜、亦紅ちゃん、さっきぶり」

 

「おう」

 

 日が伸びてるとはいえ、もうそろそろ太陽も落ちた頃。

 私と亦紅は、大学帰りの蓬を捕まえて、三人揃って焼肉目指して足を運んでいた。

 その道すがら、蓬が今日の事について聞いてくる。

 

「で、二人は今日何してたの。亦紅ちゃんが桜の写真沢山撮ったって聞いたけど」

 

「その写真以外は殆どいつも通りだったが」

 

「つまり、亦紅ちゃんに振り回されてたって事」

 

「そうなるな」

 

「せんぱい酷くないですか⁉︎」

 

「事実だろ」

 

 喫茶店の後もプリクラだの写真映えするスポットだのに連れ回されてマジで疲れたぞ。

 テンションの高さ以外はいつも通りと言えばいつも通りの行動だったが。

 

「でも写真は沢山撮ったんだ。桜の写真なんて私も少ないのに羨ましい。亦紅ちゃん、見せて」

 

「はーい、今共有しますねっと。『僕とせんぱい』のデート写真を!」

 

「ありがと。…………やっぱり可愛いね、桜。今日はご飯食べたら一緒に帰ろ?」

 

「何言ってんだお前」

 

「あげませんよ」

 

「お前も何言ってんだ」

 

「取らないよ。ちょっと借りるだけ」

 

「それでもダメです!」

 

「亦紅ちゃんのケチ。…………亦紅ちゃんも一緒ならいい?」

 

「だーめーでーすー! とにかくせんぱいは僕のですから!」

 

「むう。亦紅ちゃんも桜も可愛いから、近くで愛でたかったのに」

 

「せんぱいの近くにいるのは僕の特権ですから!」

 

「お前らそれ昼もやってなかったか? そして私はお前のものではないぞ亦紅」

 

 ついでにそんな特権を与えた覚えもない。

 確かに誰と一緒にいるか? と聞かれたらとりあえずお前を選びはするが。

 ほっといたら不安だし。

 だが断じて私はお前のものではない。

 

「せんぱいはつれないですねぇ」

 

「うん、桜はツンデレだから」

 

「私を殴る時だけ結託するのはズルくないか?」

 

「と、言われましても」

 

「事実だし」

 

「どこがだよ」

 

 私は私の思うままに生きてるだけだというのに。

 一体全体どこがツンデレだというのか。

 

「え、本気で気づいてないんですかこの人?」

 

「桜は天然だから」

 

「聞こえてんぞ」

 

 全く、失礼な奴らだ。

 

「まあそんなつれないツンデレせんぱいも、今やこんな可愛い幼女ツンデレせんぱいですけどね」

 

「変な枕詞をつけるな、変な枕詞を」

 

「でも今日一日せんぱいが可愛かったのは事実ですし。…………基本的には」

 

「何だその含みを持たせた言い方は」

 

「いや今日のアレは流石に僕でもちょっと引いたというか…………」

 

「お前なぁ…………」

 

 別にいいだろあれくらいは!

 むしろ現状を鑑みたらプラスだろ!

 

「え、桜何したの。悪い事しちゃダメだよ」

 

「してないわ! ああもう、どう説明すれば良いんだか…………」

 

「せんぱいはあてにならないので僕が説明しますね、蓬さん」

 

「うん、お願い」

 

「おい」

 

「桜がちょっとおかしいのは私もよく知ってるから。桜視点はあまりあてにならない」

 

 信用が無さすぎる。

 一体全体私の何処がおかしいというのか。

 謎すぎる言いがかりに首を捻ってる内に、亦紅が今日の出来事について話始める。

 しょうがない、全部終わった後に反論するか…………

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、次はどこ行くんだ?」

 

「このモールに良いフォトスポットがあるらしいんでそこ行きましょう」

 

 喫茶店を出てからしばらくして。

 僕とせんぱいは、ブラブラと二人一緒に街を散策していました。

 目的は勿論、この可愛くなったせんぱいの写真を沢山集める事です。

 男の時のせんぱいは写真に撮られるのを嫌がってましたからね。

 最悪どこかに逃げます。

 それに比べたら文句を言いつつも受け入れてくれる今がせんぱいの写真を集める最大の好機って訳です。

 …………まあ、起きたら女の子になってたせんぱいを舌の根も乾かない内に女の子扱いして振り回すのはどうなんだ、と僕の常識的な部分が訴えたりしてもいますが。

 せんぱい、僕がそういう事考えるとすぐに察しちゃうんですよねー。

 それでそのまま僕が常識的に動くと悲しそうな顔になっちゃうんですよね。

 だからまあ、結果的には僕が欲望のままに動いた方がウィンウィンみたいな感じになってオールオッケー! 、みたいな。

 …………何というか、根本的にせんぱいはせんぱい自身の事をどうでもいいと思ってる節があるんですよね。

 今朝のハムエッグみたく、僕との約束を自分の身体より優先するとことかは正にそうですし。

 流石に死んでもいい、なんて投げ捨てな感じではなさそうですけど。

 せんぱいのそういうとこにはちょっと何というか、嬉しさと一緒にある種の怖さを感じるとこがあります。

 …………だけど。

 

「…………そんなせんぱいだからいいんですけどねー」

 

「何か言ったか?」

 

「何でもないですよー」

 

 だからこそ、僕は桜せんぱいと一緒にいたいんです。

 …………だって、初めてだったんです。

 僕のわがままを、受け入れてくれる人は。

 …………昔の僕は、人のしがらみという鎖に全身を縛られていました。

 もつれにもつれた鎖が、僕から動く力を奪っていたんです。

 そして…………鎖に全てを絡め取られ、限界になって倒れた日。

 僕は、桜せんぱいに鎖を壊されました。

 親でも同級生でもない、たまたま同じキャンパスにいただけの、年が僕よりちょっと上なだけの人。

 せんぱいは先輩風を吹かしますけど、妙に子供っぽいし色々と雑な部分もあるしで正直せんぱいを先輩と思ったことはありません。

 だけど。

 そんな人が、初めて僕を僕と認めくれました。

 僕は僕のまま、自由に生きていい、と教えてくれました。

 縛られてばかりだった僕を、自由という鍵で解き放ったんです。

 だけど…………同時に、僕は縛られました。

 桜せんぱいという、僕を認めてくれる、甘くて優しい鎖に。

 だって、仕方ないじゃないですか。

 誰も僕を見ず、僕を通して何かを見ていたのが僕の人生です。

 その何か、言い換えれば皆が勝手に僕に抱くイメージ通りに動かなければ、理不尽に怒られる。

 僕にはあなた達が何を見てるのかもわからないのに。

 だから、僕はいつしか自分を殺す様になりました。

 そうしてれば、楽でしたからね。

 …………まあそれで限界が来て倒れた訳ですけども。

 そんな中、僕を見つけてくれた人に堕ちないとか、無理無理かたつむりです。

 おまけにずっと僕の世話を焼くって、せんぱいは言ってくれました。

 だから僕はもう、桜せんぱいがいないと生きていけません。

 だから、桜せんぱいの僕を自分より優先しがちって悪癖も、ちょっと怖いけど大丈夫なんです!

 だって、言い換えればそれは僕の事を桜せんぱいがずっと見てるって事なんですから。

 それに…………本当に危なそうだったら、僕が止めれば良いだけの話ですしね。

 せんぱいは、僕のお願いなら聞いてくれますから。

 つまり何が言いたいかって?

 僕は桜せんぱいが大好きで、桜せんぱいも僕の事を見てくれています。

 なので桜せんぱいの後輩たる僕が可愛い桜せんぱいの写真を集めるのはせんぱいも合意の上って事です。

 いや違うぞ、と桜せんぱいの突っ込みが聞こえてきた気がしますが気のせいでしょう。

 というわけで、可愛い桜せんぱいの写真目指して色んなところに行かなくてはならないのです。

 と、僕が自己正当化も兼ねてちょっと気合いを入れた時。

 

「ん?」

 

 くいくい、とせんぱいに手を引かれました。

 見ると、せんぱいが用事を思い出したみたいな顔で僕を見上げてました。

 はて、何があったんでしょう?

 

「あー、亦紅。ちょっとトイレ行ってくるわ」

 

「トイレですね、わかりました。じゃあ僕ここで待ってるんで」

 

「おう」

 

 何だ、トイレでしたか。

 それなら特に気にする必要も…………いや待ってください。

 

「せんぱい今何て言いました?」

 

「だから、トイレだが」

 

 トイレ。

 トイレって言ったんですかこの女の子歴0日のせんぱいは。

 

「…………何だ、割と限界なんだが。もしかして女子トイレに入るなって心配か? 多目的トイレを借りるからそこは安心していいぞ」

 

「確かにせんぱい小さくなった割に結構普段通り飲み食いしてましたしねってそうじゃなくて! どこのトイレ使うって問題でもなくて!」

 

「じゃあなんだよ」

 

「せんぱい女の子になったばかりなんですから一人で行かせられるわけないでしょって事です!」

 

 余りにも普段の調子で言われたんでスルーしかけましたけど!

 

「いや別にトイレくらい一人で出来るしそこまで心配しなくてもいいだろ…………」

 

「ダーメーでーす!」

 

「朝の私をみてたらわかるだろ。トイレくらい一人で出来る」

 

「それでもダメです!」

 

「面倒くさいな…………」

 

 せんぱいが面倒くさそうに顔を歪めますが、そんな顔しても無駄ですよ。

 流石に身体ごと変わってるのに一人で出来るとか信用出来ませんからね。

 確かに料理は普段通り出来てましたけど。

 それとこれとは話が別です。

 僕も男なんで女の人のトイレとか詳しく知らないですけどね。

 それでも一人より二人いた方が何かあった時都合がいいのは確かでしょう。

 後せんぱい、大事な事を忘れてませんか?

 

「そもそも今日はせんぱいを一人にさせないってとこから始まったデートですよね? なのにせんぱいが一人になっちゃダメだと思います!」

 

「…………む」

 

 そう。

 今日はそもそも僕がせんぱいを一人にしたくないってとこから始まったデートです。

 だから、例えトイレみたいなちょっとした用事でもせんぱいを一人に出来るわけないじゃないですか。

 

「…………デートではないが確かにそうか。すまん、忘れてた」

 

 せんぱいもそれを思い出してくれた様で、顔から面倒くさそうな色が消えます。

 

「わかってくれたならいいんです。というわけで、早く行きましょうせんぱい! 後デートですからねこれ」

 

「そうだな。デートではないぞ」

 

「デートですってば。全くもう、せんぱいは何でそんなに否定したがるんですかね」

 

「事実を指摘してるだけだ」

 

「事実を言うなら、この状況はデートそのものだと思うんですけど?」

 

「…………」

 

 と、バカみたいな、でも楽しいやり取りをしながらトイレに向かいます。

 そして、最初せんぱいがしようとしてた様に、多目的トイレに一緒に入った、までは良かったんですが。

 

「ほら、言っただろ? 一人で出来るって」

 

 トイレを済ませて元の道に戻るまで、僕の出番は全くありませんでした。

 いや僕の出番とか無い方が良いんですけども。

 それにしたって、せんぱいは余りにも普通にトイレを済ませていました。

 後始末まで含めて、女の子らしい形で。

 

「え、せんぱい女装癖とかあったんですか?」

 

「何を言ってるんだお前は」

 

 その自然な所作は、やり慣れてる感があって、日常的に同じ事をしてるとかでも無いと説明が付きませんでした。

 

「いやでも、いくら何でも普通すぎません? 手慣れすぎてるというか」

 

「今朝のハムエッグと同じだろ。私の認識では男の時のやり方しか知らないけどな。身体がやり方を覚えてるんだよ」

 

「えぇ…………」

 

「だから心配しすぎって言ったんだ」

 

「いやそういう問題じゃ無いと思いますけど。料理が出来るのはともかく、トイレすら普通に出来ちゃうってのはちょっと怖くありません?」

 

 確かにハムエッグ作る時とか全然危なそうじゃなかったですけど。

 トイレみたいな明確に性差が出る動作でも問題ないってのは流石に薄ら寒いものを感じますよ。

 

「怖い? 何がだ? むしろこういう動作が出来ない方が不便だと思うけどな」

 

「それはそうかもしれませんけど…………でもそれって、せんぱいが始めから女の子だったって世界に言われてる様なもんじゃないですか。何というか、元のせんぱいを否定しようとしてるみたいに見えるというか」

 

 実際、今のせんぱいは一部の人を除けば最初から女の子だったって思われてる筈です。

 それは何というか、男の秋海桜(せんぱい)という存在を、否定したい様に見えて仕方がありません。

 

「まあ確かに色々と書き換えられてるしな。更に動作まで普通に出来るとなると私が男という事実を否定したい何らかの意思を感じなくもないな」

 

「ですよね? なのにどうして怖くないんですか? まだ実感が無いとかですか?」

 

 僕が同じ立場なら、自分という存在が否定され、書き換えられていくとか怖くて多分泣くと思うんですけど。

 なのに、どうしてせんぱいはいつも通りなんでしょう。

 

「まあ確かにまだちょっと現実味を感じてないとこもあるにはあるが…………そうだなー…………怖く無い理由は誤解を恐れずに言うなら『今のところはどうでもいい』から、だな」

 

「どうでもいい?」

 

「ああ。だって不便じゃ無いしな今のところ。都合よく私の身分証明書やら記憶やらを書き換えてくれたり身体の動きをアジャストしてくれたおかげで生活する分にはそのまま行けそうだし。今後何かアプローチがあるなら話は別だけどな」

 

「うーん…………流石せんぱい…………ちょっとズレてる」

 

 果たして、返ってきた言葉は何というか、せんぱいらしい言葉でした。

 いやまあ本音を言うと何言ってんだこの人、になるんですけども。

 身分証の書き換えとか都合いいで済みます?

 いや確かに書き換えられてなかったら書き換えられてなかったで不便ですしせんぱいの言うことにも一理ありますけどそれでも都合いいの一言ではないでしょ多分。

 まあせんぱいが普通の人からズレてるのは僕に対する態度からもわかるのでこれもまたいつもの事といえばいつもの事って感じですけどね。

 という訳で、そういうものとして飲み込みます。

 ほらせんぱいも言ってましたし。

 わかんないものは無闇に解明せずそのまま受け入れた方がいいって。

 そもそも、せんぱいの価値観がズレてる事なんて、せんぱいが僕の世話を焼いてくれてる事に比べたら些細な事ですしね!

 とりあえず、せんぱいがせんぱいなりのロジックで今のところ特に不安を抱いていないっていうのはよくわかりましたし、それだけわかれば十分です。

 

「おいそれどういう意味だ」

 

「褒め言葉ですよー」

 

「全く褒めてなさそうな声で言われても困るんだが?」

 

「そんな事ないですってー」

 

「急に猫撫で声になられるとそれはそれで困るんだが」

 

 いや実際、凄いと思いますよ?

 せんぱいの面影とか全くない僕好みの可愛い可愛い幼女になってるのに、いつも通りすぎるくらいにいつも通りなのは。

 おかげで僕もいつも通りに話せますし。

 それはそれとしてちょっと引きもしますけど。

 昨日まで男だったとは思えないくらい自然に女の子の動きを実践できる事に不便じゃないからいいやくらいの感想しかないせんぱいの感覚には。

 ま、ちょっと引いたからって僕のせんぱいへの気持ちは変わらないんですけどねー。

 

「…………はぁ。まあいいか。ほら、さっさと行くぞ」

 

「はーい」

 

 さて、せんぱいも早く終わらせたいみたいですしそろそろ本題に戻りましょうか。

 と、いう訳で。

 

「…………おい」

 

「何です?」

 

「何故私の手を握る」

 

 せんぱいの手を握って、目的のフォトスポットへ向かいます。

 何やら言いたげそうなせんぱいが睨んできますけど、離す気はありません。

 ちゃんと理由もあります。

 

「せんぱいが可愛いからに決まってるじゃないですか」

 

「理由になってないんだが?」

 

 立派な理由でーす。

 僕だから言えますけど、可愛いに限らず顔がいいってのは面倒事を色々引き寄せますからね。

 

「いやだってこの可愛さに釣られた人に誘拐されても困りますし…………」

 

「…………」

 

 むぐ、とせんぱいが黙ります。

 自分の外見についてはちゃんと把握されてる様で何よりです。

 実際、今のせんぱい誘拐されてもおかしくないくらいにはちっちゃくて可愛いので仕方ないですよね。

 まあ本当は僕が繋ぎたかっただけなんですけど。

 

「それに、一緒って話ですよね?」

 

「ここまでとは言ってない気もするが…………ああもうわかったよ。お前の好きにしろ」

 

 観念したのか、せんぱいが僕の手を握り返します。

 それに内心喜びながら、僕も離さない様にしっかり握りしめて、目的地に向かいます。

 この可愛いせんぱいの写真を、いっぱい集めるために。

 せんぱいと、一緒にいるために。

 

「やっぱこれデートなんじゃないですか?」

 

「断じて違う」

 

 

 

 

 

 

「って、事があったんですよねー」

 

 今日のせんぱいのトイレ事件について、かい摘みながら蓬さんに説明します。

 

「なるほどなるほど。うん、これは桜がおかしい」

 

「何故そうなる」

 

 蓬さんの反応はまあ何というか予想通りで、僕と似た様な反応でした。

 

「だって私が桜の立場になっても同じ様な事できないし」

 

「ちなみに僕も無理ですね」

 

「お前らなぁ…………」

 

「事実なんだからしょうがないじゃないですか」

 

「あーわかったわかった。私の負けだ」

 

 ふん、と鼻息を荒くしながら顔を顰めたせんぱいが両手を上げてひらひらと振ります。

 これは…………

 

「拗ねてる」

 

「拗ねてますね」

 

 外見幼女なので可愛らしいですけど。

 これ昨日までのせんぱいなら割とアウトですよ。

 僕と蓬さんは別に気にしませんけど。

 

「本当こういう時だけは仲良いなお前ら」

 

「私達は桜研究会の同士だから」

 

「そんな珍妙な研究があるとは初耳なんだが」

 

 僕も初耳ですけどね。

 だけどまあ、蓬さんが同士ってのは合ってますね。

 蓬さんは僕のせんぱいを取ろうとする、基本的にウマの合わない不届者ですけど、せんぱいが好きという点においては同士です。

 それに、蓬さんは大学、僕は日常で。

 互いに互いが知らない、せんぱいの顔を知っています。

 その情報交換の為に、連絡を取り合ってたりするんですよねー。

 まあこれせんぱいには内緒なんですけど。

 

「いいじゃないですかせんぱい。僕と蓬さんが仲良いってだけですし」

 

 なので、深く掘られる前にさりげなーくせんぱいの思考を逸らしてみます。

 普段蓬さんに噛み付く僕がこういうと、せんぱいは大体僕に突っ込み始めるんですよね。

 

「…………まあお前らの仲が割といいのは知ってるが」

 

 狙い通り、せんぱいが食いついてくれました。

 これ貸しですからね蓬さん。

 アイコンタクトで蓬さんにそんな感じの事を伝えながら、せんぱいを誤魔化す為に適当に話します。

 

「ほら、僕と蓬さんって一緒にデートするくらいの仲ですし」

 

「懐かしい。あの時は楽しかったよね、亦紅ちゃん」

 

 まあアレデートっていうか蓬さんと目的が一致したので一緒に動いてただけですけどね。

 別に恋愛感情とかはないです。

 僕そもそもそういうの無理ですし。

 楽しかったのは事実ですけど。

 

「…………正直私よりお前らの関係の方がよっぽど変だと思うけどな…………?」

 

 よし、せんぱいが思考の迷路に嵌りました。

 ついでに都合よく焼肉店も見えてきました。

 これで丸っと有耶無耶に出来ますね!

 

「ね、亦紅ちゃん」

 

「何ですか蓬さん」

 

「またデート、行こ?」

 

「今度の日曜僕とせんぱいと一緒に行くじゃないですか」

 

「そういえばそうだった」

 

 ついでに蓬さんも釣れましたけどこの人はこの人で何なんですかね。

 行動原理で言えば可愛いものとせんぱいが好きでそれ中心で動いてるってのはわかるんですけど。

 どーにもこの人、恋愛感情でせんぱいを見てる感じじゃないんですよねー。

 こう、僕が昔向けられていた視線と比較すると、どうにも感情の色が違うというか。

 まあ蓬さんの抱く感情が何だろうと僕のせんぱいを取ろうとする時点で不届者には変わらないんですけどね。

 と、改めて蓬さんへの闘志? を改めて燃やしていた時。

 

「あ、着いたよ」

 

 蓬さんの声で、現実に引き戻されます。

 見上げると、目的地の食べ放題焼肉チェーン。

 思考が一気に肉に切り替わります。

 さ、食べますよー!

 




 登場人物紹介
 桜  ツッコミのフリしてるけど実は天然ボケ
 亦紅の事は色々好きだけど変わってると思っている
 焼肉のサイドメニューはシーザーサラダ派
 亦紅 ボケのフリしてるけど実はツッコミ
 せんぱいの事は大好きだけどだいぶズレてんなこの人と思っている
 焼肉のサイドメニューは麻婆豆腐派
 蓬  天然ボケ
 桜も亦紅ちゃんも可愛いからいいよねと思っている
 焼肉のサイドメニューはフライドポテト派
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

TS魔法しか使えない男(作者:テムテムLvMAX)(オリジナル:ファンタジー/コメディ)

お前が友人の性癖クラッシャーになるんだよ!


総合評価:18/評価:-.--/連載:6話/更新日時:2026年09月23日(水) 19:46 小説情報

非課税少女ミミカ(作者:税の作文)(オリジナル:現代/コメディ)

35歳の元工場勤務、14歳の魔法少女に転生。▼しかも固有能力は――▼【非課税】▼……それ、魔法少女の能力か?


総合評価:2106/評価:8.23/完結:14話/更新日時:2026年08月31日(月) 18:30 小説情報

一般TSチート始元者(作者:深紫Sιn姉)(オリジナル:ファンタジー/文芸)

「なんか過去に適当こいた一言が、いつの間に世界の二大宗教になってるんだが?」▼自分が蒔いた種(黒歴史)のせいで、玉ねぎ一つから大陸規模の聖戦が生まれる話▼※完結済み


総合評価:952/評価:8.07/完結:11話/更新日時:2026年10月26日(月) 13:10 小説情報

TS転生した俺、サキュバスらしい(作者:ほんきょー)(オリジナル:現代/恋愛)

TS転生してサキュバスになってしまった。▼生きるためには男の精を得なければならないらしい。▼そんなこと簡単に割り切れるわけもなく……。▼避けられない問題に悩み、翻弄されるTS娘の話


総合評価:220/評価:8/連載:15話/更新日時:2026年10月27日(火) 08:11 小説情報

旅立つ幼馴染を見送ったTS薄細美少女の俺。十年後、スラム街の娼館にて再会を果たす(作者:しゃふ)(オリジナル:ファンタジー/恋愛)

十年前、幼馴染の男が村から旅立って行った。▼TSして女になった俺にとって、唯一の親友と言える存在だった。▼十年後、私が働いている娼館に、そいつが来た。▼しかも、毎週唯一の出勤日にフルコースで指名してくる。▼……ほんと、馬鹿な奴。▼マルチ投稿してます


総合評価:12907/評価:8.99/完結:19話/更新日時:2026年10月23日(金) 22:04 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>