ちょっと短めです。
「ところで亦紅、お前結婚とか興味あるか?」
いきなりのせんぱいの変な発言に思考が止まり、さっきまで考えていた事が霧散します。
結婚。
結婚って何でしょう。
アレですかね。
殺人現場によくある奴。
「だから、結婚だよ。一応聞くんだけど、お前、将来誰かと結婚する気あるか?」
どうやらそれは血痕だとかボケてる場合ではないようでした。
このせんぱい、仲の良い男女が役所に書類を出す方の結婚の話をしています。
この僕に向かって。
「いやないですけど…………というか、せんぱいも僕が
当然、そんな予定は僕にはありません。
そもそも、僕は
結婚どころか、彼女も作る気ありませんよ。
…………その割に、目の前にいるせんぱいに恋愛感情を抱いちゃってますけど。
でもそのせんぱいも、いくら一緒にいてくれると言っても僕と結婚までする気はないでしょうし。
僕もせんぱいへのこの恋の気持ちを伝えるつもりは無いですから、結局結婚予定なんて無いです。
と、わかりきった事を聞いてくるせんぱいに内心苛立ちを覚えていると、せんぱいが洗い物を止めてこっちに向かってきます。
「まあそれはそうだが…………確認したかったんだよ。お前の性格的にほぼ無いとは思ってたが、一応な。で、本題はここからなんだが…………亦紅、お前が良かったらの話だが、私と結婚しないか?」
「はい?」
そして、続くせんぱいの言葉で苛立ちとかどうでもいいレベルで僕の中に嵐が吹きました。
せんぱいと、結婚?
「…………ちょっと意味がわからないんですけど」
本当に意味がわかりません。
せんぱいの口からどうして僕と結婚しようなんて言葉が出たのか。
そんな流れ全然なかったですよね⁉︎
もしかしてアレですか。
今朝の僕の行動のせいですか。
僕がせんぱいの壁を壊したから、中に秘めてた欲望が出てきちゃったんですか。
流れも空気も無く唐突に出てきた僕との結婚発言に、頭が混乱して色々と空回りしてしまいます。
「別に、そのままだよ。お前が良いなら、私と結婚しようと言ってるんだ」
しかもせんぱいが説明になってない説明で追い討ちかましてきますし。
ああもう、どうなってるんですかこれ。
「…………すみません、まずどうして僕と結婚しようってなったのか教えてくれません?」
なのでとりあえず、僕を混乱させた元凶のせんぱいに説明を求めます。
「…………まあ、今日ちょっと色々あってな。それで気づいたんだよ。今の私なら、お前と結婚出来るって」
「はあ、まあそれは確かにそうですけど。それがどうして結婚するってなったんですか?」
今のせんぱい、戸籍まで全部女の子に書き換えられちゃってますもんね。
可能不可能で言えば余裕ですよね。
でもそれと結婚って繋がってなくないですか?
そう思って、首を傾げてると。
「…………お前と、ずっと一緒にいられるからだよ」
「え?」
せんぱいにしてはストレートな理由が飛んできました。
らしくないその理由に、思わず思考が止まります。
「…………勿論、結婚しなくても私はお前と一緒にいる気だ。お前は私がいないとダメらしいからな。だけど、出来るなら…………した方が、色々と楽だろう。だから、お前に結婚の予定が無いなら結婚しようって、言ったんだ」
「…………」
なるほど。
つまりせんぱいは、結婚を目的ではなく僕と一緒にいるための手段と捉えているんですね。
女の子になって二日目でその思考に切り替えれるのちょっと怖いですけども。
確かに、このままこの半同棲みたいな生活をずっと続けるのはちょっと現実的じゃないとこがありますから、結婚するっていうのも一つの手段ではありますよね。
僕としても確かに楽な面はありますし。
変なアプローチ避けとかそう言った感じで。
…………でも。
「…………せんぱい、それ無理して言ってませんか?」
それって、僕にとっての利点であって、せんぱいにとっての利点というには、ちょっと微妙ですよね。
そりゃあ僕はせんぱいから離れる気は無いですしせんぱいが離れる気ならもうみっともなく泣き喚いて足にしがみつく所存だったりしますけど。
それはそれとしてせんぱいが僕にそこまで付き合う義理も無いわけで。
いやせんぱいが僕の事大好きなのは重々承知してますし、僕の事捨てたりなんてしないとは確信してますけど。
流石に、僕の為にそこまで付き合ってもらうのは少し、引け目を感じてしまいます。
…………いやまあ、客観的に見ると今日あんな事言った時点でもうかなりズブズブですからこれはもう僕のエゴみたいなものなんですけどね。
それでも、結婚しようとまで言われるとこう及び腰になるというか。
後こっちは本当に僕のエゴなんですけど、せんぱいに
ほら、やっぱ結婚って好き合ってる人同士が結ばれるものってとこがあるじゃないですか。
せんぱいと僕はお互いに好きですけど、その好きの感情は微妙にズレてますし。
そのズレを感じたまま、結婚するのはちょっと微妙な感じがするんですよね。
とはいえ、せんぱいと結婚するというのはちょっと今の僕には魅力的な提案なのも事実で。
ぐらぐらと揺れる心の天秤にどうしようか困ってた時。
「別に無理なんてしてないぞ。そりゃ、提案したのはメリットという面もあるが…………別に、結婚という字面に魅力を感じていない訳じゃない」
「はい?」
顔をちょっと逸らしながら、せんぱいがなんからしくない事を言い始めました。
そして。
「…………言ったろ、今日。私も有象無象と同じだって。あれは、お前にとってはふざけた言葉だっただろうが…………私からしてみたら、私もお前の言う有象無象も、大差ないんだよ。私だって…………お前に出会った時から多分、一目惚れしてるしな」
「…………え?」
微妙に顔を赤くしながら、僕の中であり得ない筈の言葉を、桜せんぱいが溢しました。
「…………一目、惚れ?」
「恋愛的な意味での一目惚れかというと怪しいけどな。正直今でもお前の事は生意気な後輩としか思えないし。それでも、お前を手離したくない、ってずっと思ってるのは事実だ。お前の言う、有象無象みたいに。だから、まあ…………このチョーカーみたいに、お前を縛れるなら…………悪くない、って思ったんだ」
桜せんぱいが自分の首に巻きつけられた黒のチョーカーを指差しながら吐露した言葉は…………僕の中で揺れ動いていた天秤を傾けるには、十分な言葉でした。
僕を手離したくない。
なるほど確かにそれは、僕が有象無象と呼ぶ人達と、同じ考えです。
でも…………やっぱり桜せんぱいに言われると、胸がときめいてしまいます。
僕に初めて愛を与えてくれた桜せんぱいだからこそ。
この胸に封じ込めようとした筈の、桜せんぱいへの恋が抑えられなくなるくらいに、胸が高鳴ってしまいます。
その衝動に任せて、僕も返事を返そうとした時。
───────生意気な後輩としか思えないし。
「…………」
「亦紅?」
桜せんぱいが溢した言葉が、頭に引っかかって言葉が止まってしまいました。
何故なら…………せんぱいのその言葉は、僕と桜せんぱいの感情がズレているという事の、明確な証拠だったからです。
それに気づいて、高鳴る心が冷や水をかけられた様に竦んでしまいます。
その時。
「…………せいっ」
「うわっ⁉︎」
桜せんぱいがいきなり、僕の胸に飛びかかってきました。
桜せんぱいはかなり小さくなっているとはいえ、その衝撃は中々のもので、いきなりの事だった事もあってバランスを崩してしまいます。
そしてそのまま、側から見ればせんぱいに押し倒された形で、床に倒れ込んでしまいました。
「…………何するんですか桜せんぱい」
「何か悩んでそうだったからな。今朝のお返しって事で、今度は私がお前を甘えさせてやる」
いきなりの暴挙に抗議すると、僕にマウント取った桜せんぱいが歯を見せて笑います。
「ほらキリキリ吐け。私の壁を壊してお前を離したくないって欲望を無理矢理吐かせたんだ。私にだって教えるべきだろ。お前が何を考えているのか。…………安心しろ。お前が何を思っていようが、私はお前を離さない。むしろ逃げるなら捕まえてやる」
そして、今朝の僕と似た様な事を言ってきます。
これアレですね。
僕が正直に吐くまで何があっても離れる気がありませんね桜せんぱい。
僕も同じ事をしたのでわかります。
うん、詰みですねこれは。
進路も退路も無いですし。
僕がこの胸の内を吐く以外、この状況を打開できません。
いやまあ本気でやれば桜せんぱい振り払うくらい普通に出来ますけど、せんぱいに怪我とかさせたくありませんし。
でもとりあえず。
「…………わかりました、わかりましたから。一旦離れてくださいよ桜せんぱい。顔近いですって」
桜せんぱいは一回どいてください。
今の桜せんぱい、マジで僕の好みの顔ですから。
僕の桜せんぱいへの気持ちとか関係なくドキドキしちゃうので。
後冗談じみて言ってますけど目がちょっとヤバくて怖いですよ桜せんぱい。
絶対離さない、とまで言ってくれるのは嬉しいですけど。
「…………逃げそうだからここまでな」
すると、桜せんぱいが身体を上げました。
僕に馬乗りになる形ですね。
「信用ないですねー」
「お互い様だろ」
顔は遠くなりましたけど、僕の身体からは相変わらず離れない桜せんぱいに若干口を尖らせますが、ぐうの音も出ない正論で黙らされます。
確かに、僕も今朝は桜せんぱい信用してませんでしたね。
つまりこのままで吐くしかないって事です。
「…………はあ」
なので仕方なく、大きなため息一つ吐いてから、僕の胸の内を吐露します。
「桜せんぱい」
「おう」
「好きです」
「知ってる」
「違います。そういう好きじゃないです。僕は桜せんぱいの事が、恋愛的な意味で好きなんです」
「…………そうか」
押し黙る様な、桜せんぱいの声。
その様子にちくりと痛むものを感じますが、心の枷を外してしまった以上、溢れてしまった想いはその程度では止まりませんでした。
「…………きっと、桜せんぱいに拾われて、桜せんぱいに甘える様になった時から、僕は桜せんぱいに、恋していたんです。僕に初めての愛をくれた人。無償の愛で、満たしてくれた人。そんなせんぱいに、僕はずっと、恋してたんです。…………それを認めたくなくて、最近まで気づいていませんでしたけど」
桜せんぱいが男だとかそういうのは関係なかったんです。
僕にとって、桜せんぱいは…………地獄から救い出してくれた、王子様、と言ってもいい人ですから。
…………その癖、その王子様が女の子になって漸く気付いたのは、皮肉もいいとこですけど。
でも。
「…………でも、桜せんぱいは違いますよね。僕はきっと、今桜せんぱいが元に戻っても、同じ事を言います。僕にはもう、桜せんぱい以外見えませんから。だけど…………桜せんぱいは、女の子になったとはいえ、中身は桜せんぱいのままですよね。だから、僕の事なんて…………」
気持ち悪い。
そう言おうとした瞬間。
「いたっ」
ぺしっ、と顔に衝撃が走りました。
見ると、呆れた顔の桜せんぱいが手を振り下ろした体勢になってます。
丁度、僕にチョップを食らわせた様な体勢です。
そして。
「…………阿呆。この阿保後輩」
物凄い呆れた声で、罵倒されました。
「…………阿呆。この阿保後輩」
いかん、亦紅が阿呆な事言ってたからつい手が出てしまった。
いやでもなーにを阿呆な事言ってるんだこいつは。
「何も言ってない内から決めつけるなよ亦紅。まあ確かに、私はお前の事を生意気な後輩にしか見えないとは言ったが」
実際生意気だし。
ふと目を離したら死にそうだし。
何か変な因縁に絡まれてるし。
だけど。
「お前を恋愛的な目で見ることがあり得ない、なんて言ってないだろ」
別に、お前を恋愛的な目で見る可能性が無いわけじゃない。
まあ今は見てないが。
「…………でも、今は見てないんですよね」
「そりゃそうだな。正直出会った時から今まで、私にとってのお前は手のかかる可愛い可愛い後輩だよ。だけどな、今はそうでも未来はそうだと決まってない。大体私は同性愛者でもないが異性愛者かどうかも微妙な人間だからな」
「…………桜せんぱいの気持ちが変わるかもしれないってのはわかりますけど、同性愛者でも異性愛者でもないってのは意味がわかんないですけど」
まあそりゃわからんか。
私からしても意味わからん経緯だし。
「お前が美人すぎるから私の感覚はぶっ壊れてんだよ。お前みたいな美人と四六時中一緒にいるんだ、顔の好みも、匂いの好みも、髪の色の好みも、全部お前になってるんだよ」
「…………え」
そう。
全てはこいつが美人すぎるのが悪い。
亦紅はスキンシップが多いからな、その気がなくても単純接触効果で私の好みはこいつに矯正されれてしまった。
だから私は、既に亦紅以外を恋愛対象に見る事は出来なくなっている。
その亦紅も私にとっては可愛い後輩だから、結局私は恋愛対象が存在しないという事になる。
だから同性愛者でも、異性愛者とも言いづらいんだ私は。
改めて見ると本当に意味わからん経緯だけど。
連翹?
亦紅と同じ顔のパーツ配置してるだけで恋愛対象になるわけないだろ。
私は亦紅だから好きなんだよ。
人の心は顔に現れるからな。
連翹は嫌いではないが亦紅と同じ心な訳は無いので当然対象外だ。
「…………だから、まあ、なんだ。お前が私に恋してる事に関しては、今はその想いに応えられないってだけだ。今の私にとって、お前は後輩だからな。それ以外に思うとこはない」
「…………今は、って事は将来は応えてくれるんですか」
「それは知らん」
正直言って私のこの気持ちが変わるのかは私にも読めないし。
もしかしたら、女になった事で段々変わっていくのかもしれないが。
今のところはわからないとしか言えない。
だけど。
「…………なんですかそれ。結局応える気はないって言ってるのと同じじゃないですか」
「だから、変わる可能性はあるって言ってるだろ。つまりだな…………亦紅、お前が私を惚れさせてみせろって話だ。まあ、恋愛的な意味で無いのなら私は既にお前に惚れている訳だが」
亦紅、お前が私の後輩という認識を変えたのなら…………私はあっさりと、お前に堕ちるだろう。
正直言って、私がお前を恋愛的に見れない理由は、後輩だからという一点だけだ。
もし、その理由が無くなったなら…………私にとって、亦紅はストライクゾーンど真ん中を撃ち抜いている男になる。
私は亦紅の全部が好きだからな。
「だから、変わる可能性はあるって言ってるだろ。つまりだな…………亦紅、お前が私を惚れさせてみせろって事だ。まあ、恋愛的な意味で無いのなら私は既にお前に惚れている訳だが」
桜せんぱいが言ったその言葉は、僕の心に強く響きました。
確かに、桜せんぱいは、僕の恋に応えられないと言いました。
今は。
そう。
今は、応えられないんです。
未来はわかりません。
それを、何も変わらないと言った、僕が間違っていました。
惚れさせてみせろ。
せんぱいはそう言いました。
桜せんぱいの言う通り、僕がこのまま甘えてたら…………桜せんぱいの僕への認識は後輩のままです。
だから、僕のこの想いを桜せんぱいに届かせるには…………僕が、変わらないといけないんです。
桜せんぱいの後輩という僕への認識を塗り替えて、僕に惚れさせる。
それが、この恋を叶える為に必要な方法だったんです。
黙って閉じこもってるだけじゃ、駄目だったんです。
「…………せんぱいは、優しいですね」
「そうか? むしろ厳しいと思うけどな」
「優しいですよ」
僕を甘やかさず、大切な事を教えてくれたんですから。
きっとここで、せんぱいがいつもの様に僕を甘やかしてたら、僕は腐っていました。
だから、僕も変わります。
せんぱいを惚れさせる事が出来る様に。
という訳で。
「…………おい」
「なんですか桜せんぱい」
「何故抱きしめる」
手始めにまず、桜せんぱいを抱きしめる事にしました。
「えーと、惚れさせる為ですかね?」
僕が抱きしめたいってのが九割ですけど。
「何故そうなる」
「だって、桜せんぱいは僕の顔とか匂いとかにメロメロなんですよね? なら、こうしてれば惚れたりしませんか?」
僕の身体にメロメロなら、こうすれば魅了されてもいいと思うんですけど。
「そういう事するからお前は後輩なんだ。お前だって好きなロリキャラがいきなりベッドに誘ってきたら萎えるだろ」
「いやそれはウェルカムですけども」
むしろせんぱいが誘うなら僕は全然乗りますよ?
「駄目だこいつロリにホイホイついてくロリコンだった。…………それ抜きにしても、いつもお前にされてる事なんだから今更動じる訳ないだろ。だから離せ」
「む」
確かにそれはそうですね。
という訳で、これ以上やっても意味は無さそうなので名残惜しいですがせんぱいのホールドを解除して起き上がります。
まあどうせ寝る時また堪能出来ますしね。
「…………あ、後今日お前が上の空だったから忘れてたけどそろそろこれ外してくれ」
そして身体を起こした時、せんぱいが黒のチョーカーを指さします。
確かに色々あって僕も忘れてましたねそれ。
言われた通りに、せんぱいのチョーカーを外そうと首元に手を伸ばします。
その時。
「…………せんぱい。これは提案なんですけど」
「なんだ?」
ちょっとした、閃きが僕の中に走りました。
その光に従い、せんぱいに話してみます。
「これ、毎日付け外しさせてくれません? その方が、僕が予約済みってアピール出来ると思うんですよね」
それは、このチョーカーをせんぱいに毎日付ける、というものでした。
昼は後から思い返してめちゃくちゃ恥ずかしかったですけど、今は違います。
僕が頑張ればせんぱいが受け入れてくれるって言ったので、その為なら喜んでせんぱいが僕のものってアピールします。
取られたくないですし。
一度やったらもう何回やっても変わりませんし。
後せんぱいもこれ付けられて結構嬉しそうでしたし、多分受け入れてくれると思うんですよね。
「…………まあ、いいが。私も嬉しかったしな」
果たして、せんぱいの反応は…………僕の予想通り、まんざらでもない感じでした。
多分、せんぱいに結構響いた感じがします。
…………もしかして、せんぱいって束縛されたがりな面でもあるんでしょうか。
「…………何だ?」
「何でもないでーす。じゃあ、明日からもよろしくお願いしますね」
おっと危ない、怪しい思考をしてるのがバレるとこでした。
そ知らぬ振りをして、せんぱいの首からチョーカーを外します。
すると。
「さて、大分話が逸れたが…………本題に戻るか」
「本題?」
せんぱいが座り込んで、僕の顔を見上げてきました。
はて、本題って何でしょうか。
これで話は終わったと思うんですけど。
「いや私と結婚しないかって話をしてただろ」
「あ」
そう言えば確かに。
正直言って、ほぼ言った様なもんだと思ってたので忘れてました。
それよりも、せんぱいの惚れさせてみろ発言のがインパクト大きくて。
まあでも、改めて宣言するという意味でも悪くないしさっさと言っちゃいますか。
「しましょうよ結婚。僕はもういつでもウェルカムです。いつですか? 今日ですか? 明日ですか?」
僕の答えは当然、イエス一択です。
何ならお互い結婚出来る年齢なんですし、もうしちゃってもいいくらいです。
結婚して外堀を埋めた後に、じっくりせんぱいを攻略してもいいわけですからね。
「そこまで性急な話ではない」
「残念」
まあ今日明日の話じゃないのはわかってましたけど。
言ってみただけです。
「というか私達が結婚するにはお互いの感情以前に一つの壁があるだろ」
「何ですか?」
「お前の実家。私の実家はぶっちゃけどうでもいい。多分認めてくれるし」
「う…………」
そういやそんなのもありましたね。
僕の実家とか、嫌すぎて思い出したくもないですけど、僕達の結婚の障害になるのは事実です。
まずこのせんぱいを認めるかが怪しい。
勝手に結婚する手もありますけど、多分邪魔されます。
「という訳で、また吐いてもらうぞ」
「このタイミングで吐くって事は…………」
一つしかないですよね。
「ああ。お前の実家について、色々と話して貰おう。こっちとしても色々気になる話が出てきたんでな。そして、ケリをつけよう。私達で、お前の過去に」
そう。
僕の…………思い出したくもない、せんぱいと出会う前の僕の過去です。
せんぱいも察していたのか、僕の過去には今まで触れてきませんでしたけど、こうやって踏み込んで来た以上、必要なんでしょう。
僕達が、前に進む為に。
…………なら、僕も腹を括ります。
桜せんぱいとの、未来を掴む為に。
登場人物紹介。
桜 イカれTS後輩大好きロリ。実は亦紅と一緒に過ごしたせいでまともな恋愛が出来なくなっている。亦紅しかタイプじゃない。そろそろ亦紅の実家とケリつける必要があると考えている。
亦紅 割と常識人な大型犬系後輩男の娘。桜の言葉で吹っ切れて大好きなせんぱいを惚れさせる為に頑張る事を決意。未来の為に過去と向き合う事を決めた。