GALAXIES BEAST〜陽出ズル國の巫女〜   作:SimonRIO

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1 運命が変わった日、巫女としての始まり

 

――機体の両腕を捥がれ、反撃する間もなく両脚を寸断された瞬間。

 

あの時、俺は「自分が生まれ変わった時」の事を走馬灯の如く思い出していた。

 

◇◇◇

 

「バイタルは正常、施術は問題なく成功致しました」

 

「う、うぅん……?」

 

2年前、アルツェイト国で数少ない人間の兵として斥候の任に付いていた俺は、確か……奇襲してきたアングラーの機体に背後を取られ、そのままハコ機ごと串刺しにされたハズだ。

 

「な、んで……生きてる、んだ……?」

 

「おや、珍しい。施術後にすぐ意識が戻るとは、やはり彼らの方にも手を回しておいて正解でしたね」

 

「う……何を、言って……?」

 

「さぁさぁ、そうとなれば善は急げです。まだ少し手術後で動きにくいでしょうが、この衣装に着替えてください!」

 

そう丸メガネの医者らしき人物に渡されたのは、どういう訳か女性の――それも神官などといった人々が着ていそうな白と赤を基調とした、それにしては肩が丸出しで丈の短いスカートだった。

 

そして、先程からやけに高い自分の声に違和感を感じて、鏡のように反射している手術器具の乗ったトレイに視線を向けると――

 

「お、俺なのか……?こんな、女性の姿……?」

 

そこには、短い茶髪ではあったもののピコピコと動く狐の耳と尻尾を持った美少女が、俺の心境にシンクロするように驚いた表情を浮かべていた。

 

◇◇◇

 

それから言われるがままに渡された衣装に着替えた俺は、そこに現れた高官らしき人物から様々な事情を聞かされた。

 

――現在、アルツェイトは現在戦争中のミルディアが投入してきた新型機「ギア・シリーズ」によって、不利な戦況にある事。

 

――そんな最中に現れた第3の勢力、シンティア皇国の使節団によって両国共に半ば無理やりに停戦協定を結ばされた事。

 

――そして、俺はヒノモトを牛耳る2大企業のもう片方、ロマノフ社とアルツェイトの極秘計画「カムイの儀式」の為にケモナーとして、更にはヒノモト国民の新たな信仰対象として蘇らされたのである。

 

◇◇◇

 

こうして「アキ=イヅモ」と名を改められた俺は、それから1週間の訓練という名の神事の作法を学び、ヒノモトの首都にある仰々しく大きな神社の舞台へと立つ。

 

眼前に拡がるのは、ロマノフ社とアルツェイトが作り上げた新興宗教という事を知らず、物珍しさに集まったヒノモト国民達の姿。

その中には、これ幸いと勝手に屋台を出している者も多く見られたが、こちらも神社側の方で許可を出しているのだろう。

 

――シャン!!とブドウのように並べられた鈴の棒が鳴らされ、人々の好奇の視線は一直線に舞台へと向けられた。

 

作戦会議で話すのとは全く違う緊張感に包まれながらも、俺は「巫女としての第一声」を高々に上げる。

 

「皆様、本日は此処へおいでいただき、まことにありがとうございます!私、アキ=イヅモは今後の皆様の不安を取り除くべく、この身に与えられたあらゆる力を持って解消いたしたく馳せ参じました!」

 

そう鈴を鳴らすような声を全力で張り上げると、皆はザワザワと不審がる様子でどよめき始める。

 

「あの娘はいったい何だ?」「本当に俺達の味方なのか?」といった声も聞こえてくる。

 

もちろん、そうなるであろう事はロマノフ社の想定内だ。

すかさず俺は軽くお辞儀をした後、ビシリと1人の人物を指差す。

 

「では、そこの貴方」

 

「えっ?わ、私ですか?」

 

「ええ、そうですよ。今少し、こちらの壇上に上がっていただけますでしょうか?私は、その心の内に秘めた悩みを見抜き、それを解決してみせてご覧にいれましょう」

 

そう呼びつけた人間の女性に向け、俺は彼女の頭を撫でるようなジェスチャーをして、女性の悩んでいる事を口にする。

 

「ふむ……なるほど。最近、旦那様との関係が上手くいっていない、といったところでしょうか?」

 

「な、なぜそれを!?」

 

「この世には神通力、というものがあります。私は、それの一部を通して貴方の心を伺ったにすぎません」

 

そして、俺は巫女服の袖の中に「予め仕込んでいた」粉薬の入った袋を女性に手渡した。

 

「これは、貴方の身体に良いとされる漢方薬です。きっと、これで旦那様の仲も取り戻せるでしょうし、元気なお子様をも授かれるでしょう」

 

「本当ですか!?あ、ありがとうございます!」

 

その女性が深々と頭を下げて、足早に人だかりをかきわけて去っていくのを、俺は巫女の少女らしい笑顔でニッコリと見送った。

 

すると、案の定と言うべきかワッと人だかりが大きく騒ぎ立ち、「俺の悩みも聞いてくれ!」「話がしたい!」と声高々に我先にと舞台近くまで押し寄せた。

 

しかしながら、彼らは神職の衣服を着た警備員達に阻まれ、静かに俺が舞台の奥へ去っていくのを見送る事しか出来なかった。

 

◇◇◇

 

舞台の裏に戻ってくるなり、あの丸メガネの医者男こと「メク=モルドスキー医学員」が神職の格好で俺を出迎えた。

 

「どうでしたか?初めての巫女としての仕事は?」

 

「いやはや、流石にまだ慣れないな。しかし、お前らも人が悪い事をする。あの時に呼びつけた女性、あの人もロマノフ社が贔屓していた客だろう?」

 

「ええ、勿論。そうでなければ、今後の活動にも支障がでますでしょうから。とはいえ、貴方の読心能力はケモナーとしては非常に興味深いものがありますね」

 

「あれは……単なる偶然。あの女性の持っていたカバンの中身とかから、子作りに悩んでいると推察したまでだ」

 

その言葉にモルドスキー医学員は「ほぅほぅ……」と目を輝かせていたが、実際は「本当に」俺は他人の心が手に取るように分かるらしい。

 

ロマノフ社はサクラとして先程の女性を送り込んで、不妊に効く薬を俺経由で渡させただけのつもりのようだが……。

 

――あの時に感じた、彼女の心。

 

「この人を本当に信じて大丈夫なのだろうか」、「でも、いつもお世話になっている近所の方から勧められたし」などといった不安や期待。

 

これから俺は、そういった人達にも寄り添わなければならない覚悟の重みを感じ取っていた。

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