GALAXIES BEAST〜陽出ズル國の巫女〜   作:SimonRIO

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10 アルツェイト国との模擬戦

 

忙しい日常の隙間時間を使い、新しい試作機タタラの操縦シミュレーションを繰り返して乗り勘を培っていた時。

 

珍しく通信機でモルドスキー医学員から連絡が入り、「詳しい事情は神社の地下スペースに居るイイジマ大尉からお聞きください」との事だった。

 

早速そっちへ向かってみると、そこにはイイジマやモルドスキー医学員の他に、見覚えのある薄いブルーの毛色をした狐のケモナーの女性の姿があった。

 

まさか、彼女は――

 

「サーリャ=リグラーさん!?」

 

「あら?ヒノモトの巫女が私の事を知っているなんて、アイツが居なくなって運が回ってきたのかしらね」

 

「いや、実は――」

 

すかさず俺は自分の素性を明かそうとしたけれど、サーリャの後ろに居る2人が全力で「言うな」とジェスチャーをしてきた。

 

「どうしました?」

 

「あ、いえ……何でも、ないです……」

 

ああ、そうか……今、俺はロマノフ社のテストパイロット兼ヒノモトの巫女として、何も知らない彼女の前に立っているんだった。

もう、彼女の綺麗な後ろ姿に憧れたアルツェイトを守る斥候兵じゃないんだ。

 

それに確か、彼女はアルツェイトの新型機「シナプス」の正式なパイロットとしてジ・アークに配属となっていたハズだ。

しかし、それが此処に無いとなると……。

 

「まさか、例の訓練兵に機体を奪われたのですか?あのコノエ=イーリアとかいう……」

 

「そうよ!あの小娘がアングラーの襲撃のどさくさに紛れて持っていかなければ、間違いなく私はシナプスに……まぁ、ここで怒っても仕方ないわね。じゃあ姫巫女のアキ=イヅモさん、単刀直入にジ・アークが此処へ来た目的を伝えるわ。こちらの戦力とロマノフ社で開発中のそちらの機体で、極秘裏に模擬戦を行う事が決まったわ」

 

そんなサーリャの言葉に、寝耳に水だった俺は思わず目を丸くして驚く。

 

「極秘裏の模擬戦、ですか?しかし、そんな事をすればPNDに勘付かれるのではありませんか?」

 

「それなら、ロマノフ社が丁度いい場所を提示してくれたわ。場所は、ヒノモト本土の山間部にある通称「花園」と呼ばれる盆地。そこを囲う鉱山資源が放つ強い磁場によって、PNDの衛星監視でも鮮明に状況を捉えられない事が確認されたの。その為、今回の模擬戦では酷い通信障害が発生する事を先んじて伝えておきます」

 

「なるほど、つまりジ・アークもステルス航行の後で「花園」に停泊して隠している訳ですね。全く、こういう情報をくれないなんて……ロマノフ社は現場が分かっているんでしょうか」

 

「そこには同情するわ、可愛らしい姫巫女さん。あの小娘とは違って、貴方とは何だか仲良くやれそうな気もするし」

 

それはそうと、サーリャの視線が俺の胸元に向けられてる理由が分からないんですが……いや、多分コレは指摘したら大変な事になるから黙っておこう。

俺としては特に気にはしていないが、きっと「同族意識」的なものだろうからね。

 

「それで……ここに並んでいるのが私達の部隊と戦う事になる2つの機体ね」

 

「はい。大型スラスターやシールドブースターによる防御力や機動力に優れたヤオキツネと、つい最近配備されたばかりの新型試作機のタタラです。普段は私専用にカスタムされた近接仕様もあるのですが、今はロマノフ社がデータ取りの為に一時的に持っていっております」

 

「どちらも狐を模したフォルムで羨ましいわね……特にヤオキツネは出来れば、私の機体として欲しいぐらいだわ」

 

「それなら、きっとロマノフ社は喜んで専用機だろうと何だろうと作ってくれますよ。今もヤオキツネの方は、更なる改修計画が進められているそうですから」

 

「ふふ、それは楽しみね〜。私、ますます貴方の事が気に入ったわ」

 

サーリャから読み取った「特別でありたい」「コノエを許さない」という黒い感情に肯定的かつ、当たり障りない言葉でヤンワリとした空気に落ち着ける。

 

この際、何も知らせてくれなかったロマノフ社には少しばかり困ってもらうとしよう。

 

◇◇◇

 

サーリャが去っていった後、俺とイイジマはすぐさま神社の部屋にて模擬戦の立ち回りを話し合う事にした。

 

「それで、ジ・アークとの模擬戦はどう戦うつもりだ?俺とモルドスキーの調べによると、あのバルドザックという傭兵も入れ替わりで登用されているらしいが……」

 

「恐らく向こうは彼を含めてレイラ隊長、サーリャのエース3人で来ると考えた方が良いでしょうね。ようやく空戦主体の機体に慣れてきたとはいえ、2対3は厳しいでしょうけれど、やれるだけやるしかありません」

 

すると、イイジマは自分の機体のホログラムを出し、その場で新たなパーツ構成を組み上げていく。

 

「そうなると、今の俺の機体では咄嗟の反撃に遅れが出るかもしれんな。ここは素体の装甲をヤオキツネ本来の物に戻しつつ、強化型シールドブースターも1つに減らした方がやりやすいか」

 

「理想としては、私がレイラ隊長とサーリャさんを同時に相手して時間を稼ぐのが良いでしょうね。イイジマさん、バルドザックの方は任せても良いでしょうか?」

 

「ああ、とりあえずはそれでいこう。しかし、良かったのか?模擬戦とはいえ、同じ国の仲間だったかもしれない奴に銃を向けるには、並大抵の覚悟ではいかないぞ」

 

「前にも言った事を、2度も言わせないでください。今の私はもう、ロマノフ社のテストパイロットを影で務めるヒノモトの巫女に過ぎないのですから」

 

そう決意の言葉を口にした俺は、模擬戦に向けて更なる熱意と策略を心の中で高めていく。

 

生半可な戦い方じゃ勝負にならない。

それなら、打てる手は打てるだけ打っておくのがアルツェイトで学んだ俺の戦い方だ。

 

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