GALAXIES BEAST〜陽出ズル國の巫女〜 作:SimonRIO
模擬戦が行われる当日、俺とイイジマはステルス無人型輸送機に搭載された自らの機体に乗り込み、戦場となる「花園」の上空へと向かう。
模擬戦のシチュエーションとしては、ジ・アークへ向けて敵の上空からの奇襲という形での投下からスタートとなる。
つまり、出撃時しばらくは空戦を余儀なくされるといった感じだ。
それに対してジ・アーク側は甲板上にて迎撃、状況に応じて空戦に切り替えてくる事が予想される。
『こちら、モルドスキー。そろそろ無人機が目標地点に到達、機体を射出する頃合です。お二人とも、投下に備えてください』
「アキ=イヅモ、了解です。タタラの調子なら何時でも問題ありません」
『こちらも準備は万端だ。姫巫女様、先に出るぞ!』
そう言ってイイジマのヤオキツネはカタパルトを強制始動させて空に飛び込み、そのまま厚い大きな雲の中へ両腕を広げて突っ込んでいく。
『全く、大尉は変わらないですねぇ……では、姫巫女様もスタンバイ!』
「はい!「カナヤコ YH-3 タタラ」アキ=イヅモ、出ます!」
俺も航行形態のタタラを出撃させ、イイジマが突入していった大雲の周りを旋回するように滑空させていく。
エンジンや空力バランスに問題はなく、センサー系統も「花園」の磁場でダメになっている通信機能以外はマトモに機能している。
すると、そんな中で正面に1つの機影が捉えられた。
『このジ・アークの上空を悠々と飛べると思ったら大間違いだぞ、ヒノモトの姫巫女!』
「この機体反応と声は――レイラ隊長か!」
そう叫ぶ間もなく、彼女の機体であるヴォルウォがビームサーベルを振りかぶって、俺を機体ごと真っ二つにしようと斬りかかってくる。
あのビームの出力が模擬戦用に調整すらされていないのが一目で見て取れた。
「ぐっ……あっ、ぶない!!」
咄嗟に俺は機体のスラスターを切って機首を思いっきり上げ、相手が斬る空間の直前で宙返りする形で人機形態に変形した。
「模擬戦で全力で殺しにくる動きがありますか!」
『ふっ、そう言葉で惑わそうとするなど笑止千万。私にその手は通じないと教えたハズだろう……「コノエ」!』
「くっ!一体誰と間違えて――うおっと!」
「まだ避けるか!往生際の悪い裏切り者が!」
こんな支離滅裂な反応、どうも俺が知っていたレイラ隊長とは様子が違う。彼女の激しい攻撃をレーザー・ランスで受けながら、俺は思考を巡らせる。
そういや……1つだけ心当たりがある。アルツェイト国は裏で人格を弄って戦闘マシーンにする実験も行っているという、眉唾物の噂話だ。
だとすると、あのレイラ隊長の有様が全ての答えだと言うのか?
だけど、今はアルツェイトに対して不信感を抱く前に戦わなければいけない状況だ。
だから――狩らせてもらうよ!!
『さっきから防御ばかりだな!まさか、ここに来てまで怖気付いたか!』
「……いいえ、これが私の間合いです!!」
『なっ!?胸部に隠し武器を――ぐぁぁぁっ!!』
ほぼ不意打ちの形で小型スプレッドキャノンを直撃させ、相手の機体が戦闘不能の反応を示してレーダーから消えた。
「よし、隊長を倒せたのは大きい――うわっ!?」
しかし、今度は下の方からロングレンジライフルの光が飛来して、タタラの肩部装甲を掠めた。
『くっ……まさかレイラ隊長がやられるなんて!だけど姫巫女さん、これ以上は私がやらせはしないわ!』
「この鋭い狙撃、サーリャさんの攻撃でしたか。良いでしょう、なら――存分に私の遊戯に付き合ってもらいますよ!!」
そして、俺は狙撃された方角へ向かって再び航行形態に変形し、一気に急降下してサーリャの元へと飛んだ。
◇◇◇
――その一方でイイジマの方では、空中で接敵して揉み合いになりながらも、全スラスターの勢いでバルドザックと共に森林地帯へと半ば墜落するように降り立った。
そのまま二者は接近戦となり、彼の駆るデス・ギア・ユニットの動きに翻弄されつつも、イイジマは弱点となる関節部は防いでは大型スラスターを活かした脚部のカウンターを放ってのける、両者共に一進一退の攻防が繰り広げられていた。
『ほぅ、この新型機の動きに着いていけるとは……まるでハコ機の改修型とは思えないですねぇ』
「悪いが、お前が掴むのは勝利の花などではなく、この「花園」の穢れた紅い花だけだ」
そう言ってビームサーベルで切り結びつつも、イイジマはバルドザックの機体から放たれるワイヤーロープや誘導ミサイルを、強化型シールドブースターの拡散ビーム砲で撃ち落としていく。
『全く、せっかくの搦め手もイイジマ大尉相手には通用しませんねぇ〜。ですが、「花園」の由来ならば私もご存知ですよぉ!古くより鉱山資源を巡った争いが絶えず、今もなおヒノモトで不穏分子を隠れて始末するには打って付けの場所ですからね〜!』
「なるほど……アルツェイトは俺達を当て馬に、ロマノフ社の技術を奪う算段だったという訳か。それならば――」
僅かな一瞬でイイジマの機体が強化型シールドブースターを前面に撃ちだそうとした時、バルドザックの機体は持っていた武装を捨てて降参の信号弾を打ち上げた。
「どういうつもりだ?」
『とはいえ、この展開は私は好きじゃないものでしてねぇ。可能ならば、貴方がたには今後も試験部隊として頑張って欲しいのですよ。そうすれば、更なる阿鼻叫喚の地獄絵図が見られるでしょうからねぇ!』
「ふん……ハナからそれが目的だったか。やはり、お前のような殺戮狂とは反りが合わん」
しかし、そんなイイジマの素っ気ない態度に対しても、バルドザックは何かを見抜いたかのように嬉しそうな声を上げる。
『ふふふっ……しかし、そう言うイイジマ大尉の方こそ、私とやり合っていた時の動きは実に活き活きとしていましたよぉ?本当は、もっともっと強い相手と戦いたくてウズウズしているんじゃありませんか?』
「俺は、お前などとは違う」
『同じですよぉ〜、お互いの価値基準が違う程度で』
そう言い置いて一足先にジ・アークへ撤退していくバルドザックの反応が戦闘不能に切り替わるのを確認しながらも、コックピットでイイジマが握る操縦レバーには震える程の力がこもっていた。
「同じ訳がないだろう……あんな地獄を味わった事もない奴などと」
自機の損傷状況を見れば、手足の関節部は無茶な高速戦によるダメージのツケにより、ほぼ戦闘不能といった状態になっていた。