GALAXIES BEAST〜陽出ズル國の巫女〜 作:SimonRIO
――イイジマとバルドザックによる森林地帯での戦いが終わってから数分後。
俺が停泊中のジ・アーク目の前に広がる紅い花畑へ降り立ったと同時に、動かなくなったレイラ隊長の機体を抱えたバルドザックのデス・ギア・ユニットが着艦する。
それと同時に、イイジマの機体も行動不能の信号を発しながら、同じくジ・アークの方へ着艦した。
『えぇっ!?ちょっ……レイラ隊長に続けて、バルドザック副長も負けちゃったの!?』
『まぁ、相打ちといったところではありましたがねぇ〜。それとアルツェイトの上層部からは模擬戦の後、こちらでお二人の機体の修理もお願いされましたよぉ』
そう言ってバルドザックが格納スペースに入っていく中、イイジマの機体は申し訳なさそうに俺へ向かって頭を下げてくる。
『すまん、姫巫女様。倒してから合流するつもりが、思っていた以上の損壊を受けてしまった。行動不能の信号も発してしまっている故、残った相手は任せるぞ』
「了解です、イイジマ。後はゆっくり休んで、私が戻るのを待っていてください」
イイジマの機体も格納スペースに入っていったところで、サーリャの狐型ビースト・ユニットは甲板から飛び上がり、人機形態で立ち尽くす俺の前に着地した。
「……これで1体1、という訳ですね」
『私としては、ここまで追い詰められるとも思わなかったわよ。だけど……確かに、貴方達2人の実力は本物だと認めるわ』
そう放たれたサーリャの言葉に、かつて彼女に憧れていた俺の心は思わず跳ねるように高鳴る。
「お褒めに預かり、ありがとうございます。それにここだけの話……私、サーリャさんのファンでもあったんですよ。なので、実際こうして戦える機会が来るなんて夢にも思いませんでした」
『へぇ〜、そうだったのね。だったら、なおさら負けられないわ。だから――』
「ええ、それは私も同じです。ヒノモトの巫女として、そして1人のパイロットとして――」
「『全力を持って、いざ尋常に勝負!!』」
獣機形態となったサーリャの機体から、ロングレンジライフルによる2発のビームが放たれる。
それと同時に俺は機体の上半身を大きく反らして攻撃を避けつつ、バク宙する形で大型レーザーライフルを発射した。
『くっ……この!』
それをサーリャ機は獣機形態特有の機動力で右に左に回避しながらも、的確な射撃をタタラの関節部に向けて放ってくる。
すかさず俺は胸部の小型スプレッドキャノンを撃ち、弾が相殺される勢いを利用してビームを細かく分断してダメージを抑える。
「う、くぅ……っ!流石に少しはもらいますか……!」
――レイラ隊長との戦闘で掴めてきたが、やはりタタラの人機形態はヤオキツネのものより咄嗟の機動が取りづらい。
最初の狙撃や先程の射撃を避けられたのも、殆どレーダーや直接的な視認で射線が分かっていたからだ。
だからこそ、こうして絶えず様々な方向から撃たれてしまうと、持ち前の装甲や操縦者の腕でしか対応が出来ないようだ。
「それなら、一気に近距離で――たぁっ!!」
『きゃっ!?まさか、この機体の状態で追いついてくるなんて!だけど――』
俺が武器の機能をレーザー・ランスに切り替えて突きを放った瞬間、サーリャの機体は背部のレーザーライフルをパージして上空に飛び上がった。
そして紅い花びらが舞い散る中、身軽になったサーリャ機が人機形態へと変形する。
『接近戦なら私だって得意な方よ!!』
そして、そのまま腰部から大型のレーザーソードを抜き去り、タタラの武器を持った両腕を切り落とそうと振るってくる。
俺はすかさず後方にスラスターを吹かせて斬撃を避けつつ、下から振り上げる形で相手の武器と切り結んだ。
そこから更に手首を回す奇策で斬撃を返され、タタラの左肩部の装甲がザックリと切り裂かれる。
「強い……!これがシナプスの正式パイロットの実力……!」
『まだまだよ!もっと速く、もっと……私の力はこんな程度じゃないわ!』
だが、サーリャも過去の専用機を奪われるという自身のプライドが傷付けられた事からか、徐々にではあったものの、俺の機体への攻撃が大振りになりつつあった。
その隙を突いて、少しずつとはいえ俺もレーザー・ランスで着実にサーリャ機の装甲にダメージを与えていく。
――気付けば、お互いに機体はビームで切り裂かれた傷だらけとなり、次の一撃で勝負がつくかもしれない状態にあった。
『はぁ……はぁ……っ』
「ぜぇ、ぜぇ……ふぅぅ……」
もはや叫ぶ気力は俺にもサーリャにもなく、ただ刹那の一撃を放つ為の体勢で武器の切っ先と共に向かい合う。
そして、ほぼ同時に踏み込んだ一撃が閃光のように走った瞬間、戦闘不能のアラートがコックピット内に鳴り響く。
「あーあ……やられ、ちゃいましたか……」
上半身と生き別れとなった脚部がモニターに映る中、俺は空を仰ぐように大きく一息を吐いた。
だけど、そこに悔しさ等は一切なかったし、むしろ久しぶりに清々しい気分になれたような気がするよ。