GALAXIES BEAST〜陽出ズル國の巫女〜 作:SimonRIO
それから数日間、俺とイイジマは停泊中のジ・アークにて機体の修理が完了するまで、モルドスキー医学員と共に滞在する事となった。
何でも、アルツェイト国の上層部がロマノフ社と今回の模擬戦の結果に対して満足したらしく、ヤオキツネが少数量産といった形で後にジ・アークへ配属が決まったのもあるそうだ。
……ただ、「のも」といった理由としては案の定というべきか、タタラの素体であるテスト機を半ば強引に徴用した件が大きく、次の試験機はジ・アークから本国の監視付きでの試験運用がされる事となった為でもある。
そんな面倒な事態になっている中、今朝がたジ・アークには量産型ヤオキツネが複数機搬入され、その中に混じるようにしてデータ取りの終わった俺のヤオキツネと共に、黒いビニールで包まれた次なる試験機も格納スペースに届けられた。
そのビニールを取り払われると、中からはナイト・ユニットとサムライ・ギアを足して2で割ったような、紺色と灰色の薄暗い印象の機体が唯一特徴的なモノアイを朝陽の光で光らせる。
「これが今回の試験機、「シノダ・ギア・ユニット」ことシノダですか。ところでモルドスキー医学員、いつもみたいにTHの名前がないのは何故です?」
「ああ、この機体はアルツェイトからロマノフ社に直々のオーダーで頼まれた機体でしてね。現在運用されているナイト・ユニットの後継機として、各種性能を向上させた後継モデルというコンセプトなんです。なので、今はアルツェイト国の顔を立てる為に、まだロマノフ社の試作ナンバーを割り当てられないんですよ」
「なるほど、そういう理由でしたか。それにしても、技術屋として政治に振り回されるのは難儀な話ですね……」
「本当、どこかのお二人が機体を中破だの大破だのさせなければ、こちらとしても仕事はもっと楽だったんですがねぇ〜?」
「うっ……す、すみません」
ジロリと見てくるモルドスキー医学員の視線にタジタジしてしまった俺とは対照的に、イイジマは「いつもの事だろう」とあっけらかんとした態度を崩さずにシノダを見上げた。
「とりあえず、コイツはバルドザックの使っていた、例のギア・ユニット系統に近いものと考えて良い訳だな」
「ええ、大体その認識で大丈夫です。ギア・シリーズの省エネ効率とユニット・シリーズの高火力兵装を使えるよう、そして可能な限り量産出来るようにデチューンしたタイプの試作機になります」
「他系統の機体との比較は、あの模擬戦で身に染みて理解したつもりだ。そうなるとコレもまた、デス・ギア・ユニットのようにカスタム性がある機体のように見えるな」
「流石はイイジマ大尉……基本はアルツェイトの機体系統のものがメインにはなりますが、バックパックにはシールドブースター等を取り付けられるハードポイントもあります。今はまだ、レーザーライフルとビームサーベル程度しか用意してはいませんが……」
「ふむ、これは期待出来そうだな」
そう機体を眺め続けるイイジマの瞳からは、男児のような楽しさに満ちたものが感じられた。
あれは多分じゃなくとも、彼が乗る機体になりそうだな。
さて、俺のヤオキツネは……背面にヤコビブースターを搭載して、シールドブースターは拡散ビーム砲のある強化型に換装されたぐらいのようだ。
「それで姫巫女様のヤオキツネですが……まぁ、見ての通りヤコビと強化型シールドブースターに変えさせて頂きました。もし不都合があれば、元の形態に戻しますか?」
「いいえ、この姿は良い出来ですね。このカスタム、恐らくモルドスキー医学員が考えたものでしょう?」
「えぇ!良くぞ理解して頂き、ありがとうございます!これまでの姫巫女様の戦い方から、中遠距離の手に欠けていた部分を穴埋めしつつ、より高機動で近接戦闘が出来るようにさせて頂きました!」
「では、機体の反応速度の方も高まった機動力に合わせて強化されているという事ですね」
「その通りでございます!以前より比較して、およそ1.5倍になりましてね!お陰で、かなりピーキーな操縦性にはなってしまいましたが……まぁ、あのタタラでジ・アークのエースとやり合えた姫巫女様ならば、手に馴染むように動かせると思いますよ!」
「完璧な仕事です、モルドスキー医学員。貴方ほどの技術者を持てて、私は光栄ですよ」
そう言うとモルドスキー医学員は「イヤッホォォイ!」と、今までに見た事もないハイテンションで格納スペースを駆け抜けていった。
「オイうるせぇぞ!格納スペースでドタドタ走るんじゃない!!」
向こうの方で思いっきり整備員の怒号が聞こえたような気がするけれど、うん……聞かなかった事にしよう。