GALAXIES BEAST〜陽出ズル國の巫女〜 作:SimonRIO
それから数日後。
一通りの搬入作業も終わってジ・アークのケモナー達も新型機に慣れつつある中、俺とイイジマの方も試作機の調整が終わりつつあった。
だが、そんなやっと一息つけると思った夜、ジ・アーク内にけたたましく敵機接近の警報が鳴り響いた。
すぐさま俺は借りていたベッドから飛び降り、モルドスキー医学員や艦長であるジュイル中将の所へ駆け込んだ。そこには既にイイジマが到着しており、事の次第を先に聞いていたようだ。
「敵襲ですか!?」
「ああ、どうやら「花園」付近にいるネズミ共が縄張りを荒らされたと思い、複数の旧型機でジ・アークを攻撃してきているようだ。全戦力をもって迎撃したいところだが、あいにく先の模擬戦で、出撃可能なのは新型機にいち早く適応出来たサーリャ君ぐらいしかいない。すまんが、ロマノフ社の試験部隊である君ら2人にも出てもらいたい」
「もちろん、了解です!イイジマ、すぐに出撃の準備を!」
「分かった。しかし、こうも容易くジ・アークに接近されるとはな。ジュイル中将、事前に何かレーダーで捉えられなかったのか?」
「残念だが、「花園」近辺の鉱山に含まれる磁性物質は夜になると強さを増して、いくらジ・アークのレーダーといえども無効化されてしまっているようだ。恐らく、日中に太陽光を浴びる事で磁性エネルギーを蓄えて、それを放出しているのだろう」
「なるほど、これは厳しい戦いになりそうだ……姫巫女様、せいぜい気を付けるんだな」
「分かっています。レーダーに頼れない以上、目視での戦闘は避けられないでしょうからね」
改めて、俺は「花園」には多くの戦士が土の下で永遠に眠っている理由に僅かながら恐怖する。
確かに「花園」の夜が「墓場に似ている程の静けさがある」と心霊スポット扱いされるだけの事はあるな、と。
◇◇◇
「こちらアキ、甲板上に出ました。ブリッジ、応答――はやっぱりダメか。外に出るだけで圏外レベルの磁場が発生しているなんて、これじゃPNDもこの地域の全容を把握し切れていない訳ですね」
そう呟きつつ、俺は機体のハンドシグナルやライトの点灯で合図を送り、イイジマのシノダやサーリャのヤオキツネと共にジ・アークの甲板から地上へと降り立つ。
すると、一瞬だけモニターに敵機を捉えたカーソルが横切ったのを見て、咄嗟にツイン・ビームランスを構えた。
「もう結構な所まで接近されてます!2人とも、気をつけてください!」
『何……姫……こえないわ!……』
『敵……のか?……』
機体間での通信も繋がらない事を悟った俺は、すぐさまライトを点灯させて「敵が近くにいる」と知らせる。
――だが、それに2人が反応する前に俺達の間をレーザーライフルの光線が通り抜けた。
「くっ!通信が繋がらない中で闇討ちなんて!」
すかさず散開するよう2人にハンドシグナルで合図をして、俺はヤオキツネの半身を強化型シールドブースターに隠しながら拡散ビーム砲を射撃された方に放つ。
しかし、モニターに命中の表示が出ないどころか、森の幾つかを焼いた程度しか確認出来なかった。
――すると、いきなり後ろでガツン!と鈍い衝突音が鳴り響き、その後ろを向くとイイジマの機体が迷彩色に塗られたサムライ・ギアとビームサーベルで鍔迫り合いになっていた。
「しまっ――うわったぁ!?」
そこに加勢しようとした途端、今度はサーリャが両手に構えたロングレンジライフルを斉射し始める。
よくよく見れば、俺が突っ込もうとした方向の脇からは、同じような機体がアチコチを撃ち抜かれて膝をついていた。
「あ、危なかった……サーリャさん、ありがとうございます!」
俺はサーリャ機にサムズアップを送り、その機体が反撃を行う前にツイン・ビームランスを突き立ててトドメを刺す。
そして、そのままスキャン機能で相手の機体をチェックすると、例の磁性物質を用いた塗料でステルス機能を獲得している事が分かった。
すかさず、俺は接触回線のワイヤーを2人の機体に伸ばして、事の真相を伝える。
「イイジマ!サーリャさん!敵は強い磁性物質を含んだ塗料で、こちらのセンサー類を無効化しているようです!今、解析したデータを索敵システムとして送りますので、少しばかり周囲の警戒をお願いします!」
『少しばかりって、どれくらいかかるの!?』
「20秒……いや、15秒です!」
『よし、了解した。ならば姫巫女様、それまで強化型シールドブースターの方を借りるぞ!』
『OK!それなら私は、チャフスモークを散布して相手が動きにくくしておくわ!』
サーリャ機の肩部から放たれたチャフスモークにより、周囲が霧で立ち込めたように見通しが悪くなる。
しかし、そんな中でも敵の1機が俺に向かってビームサーベルを突き立てようと突進してきた。
『やらせはせん!サーリャ!』
『分かったわ!右に動いて!』
すかさずイイジマの機体が位置を変え、強化型シールドブースターでビームサーベルを受けつつ、逃げる間も与えず拡散ビーム砲で一瞬にして蜂の巣にする。
――それと同時に、俺の方も送信成功した時の電子音が鳴り響いた。
「データ送信、完了!これで2人にも敵が見えるハズです!」
『確認した!しかもどうやら、この解析データの適応で通信も接触回線なしでいけるようだ!』
『これは願ってもないチャンスね!レーダーにも捉えられたし、一気に畳み掛けちゃうわよ!』
そこからの俺達3人の動きは、まさに息が揃ったかのようなレベルでスムーズだった。
最前線に出る俺をサーリャ機がチャフスモークや援護射撃でカバーしつつ、その上空から滞空状態のイイジマ機がレーザーライフルで的確に取りこぼした機体を撃破していく。
すると、そんな中でジ・アークとの通信も復旧してきた。
『こちら、ジ・アーク。3人とも、良く頑張ってくれた。お陰で、バルドザック副長が持ち帰った残骸を解析し、こちらも砲撃する事が可能になった。よって、速やかに格納スペースに戻ってくれたまえ』
『了解です、ジュイル中将!』
『そうと決まれば、撤退するだけだな。姫巫女様、急ぐぞ!』
「分かりました!今から私も……ん?」
ふと俺は撤退の途中、撃破された機体の1つにまだ生き残っているパイロットの姿を確認する。
『どうした?早く戻らないと巻き込まれるぞ!』
「え、ええ……すみません」
ほんの一瞬だけ拡大した映像を見たとはいえ、俺はそこに手を出す余裕もなくジ・アークへと帰還した。
そして艦砲射撃で「花園」が焼き払われるのを見届けつつも、俺は見捨てた敵のパイロットが放ってきた言葉が耳から離れなかった。
よそ者の分際で、好き勝手やりやがって――と