GALAXIES BEAST〜陽出ズル國の巫女〜 作:SimonRIO
――ジ・アークのエース達との模擬戦から2週間後。
「んぅ〜!都会から行く海の風も良いものですね〜!」
「あまり船べりではしゃぐなよ、姫巫女様。お前が海に落ちたら、後で俺が何と言われるか分からんからな」
俺とイイジマ、モルドスキー医学員は花鏡社とロマノフ社から「ヒノモト技術検証試験隊」という部隊名をもらい、次なる試験運用を兼ねた任務に向けて首都港から海へと向かっていた。
勿論、使っている船は大型漁船に偽装した専用の輸送船だ。
「それにしても、いやはや……まさか試験機をいきなり実戦運用に持ち出すとは、あのヒノモト2大企業の考える事は分かりませんねぇ。しかも、自ら抱えている宗教の姫巫女様も神主様も前線に出すなんて」
「モルドスキー医学員、今は難しい事なんて考えるのは止めましょうよ!絶好の晴れ日和にこの心地よい海風を浴びれるのに、楽しめるだけ楽しまないのは損ですよ!」
「全く、ウチの姫巫女様は極端な人だな。ヒノモトの事を真剣に悩んでいるというのに、それでも任務の途中で子供みたいに楽しめる度胸がある」
イイジマやモルドスキー医学員からは少し呆れられた感じで見られているけれど、アルツェイトの海にはここまで素晴らしい景色は存在しなかった。
だから、縛られていたものから全て解き放たれた感覚になった俺には、ヒノモトで見れる新しいものが全て美しく尊いように感じるんだ。
『そろそろ、本船は目標地点に到着致します。今作戦の出撃要員は、速やかに格納庫へ移動してください』
「……だそうだ。姫巫女様、景色を楽しむのは今はここまでだ。後は、帰りに夕陽を楽しむとしよう」
「はい!了解です!すぐに行きますから――おっと!」
船首から降りる途中で転びそうになった時、瞬間的にイイジマがタイミング良く受け止めてくれた。
「はしゃぐと危ないと言っただろう、姫巫女様。悪いが、このまま一緒に格納庫へ向かうぞ」
「えっ、ちょっ!?それは恥ずかしいので勘弁してくださ〜い!というより、スカートの中が見えちゃいそうですって!!」
「そんな物、元男の姫巫女様なら気にしないんだろう?実際、風呂上がりにタオル1枚で俺の所まで来たりもするじゃないか」
「それはイイジマだから気を許せるだけで……だから、早く降ろして〜!!」
◇◇◇
そんな辱めをイイジマから受けつつ格納庫へ来ると、今度は整備員からピッチリしたスイミングスーツのようなものを渡された。
触った感じはパイロットスーツに似た質感ではあるけれど、それと比べると生地の質感が違うようにも感じる。
「えっと、これは一体……?」
「ロマノフ社が開発した、新型の耐圧スーツだ。姫巫女様は神社での仕事が多かったので知らないかもしれんが、急速潜航や急浮上であっても着用者への負担を大幅に軽減される素材や技術が詰め込まれている」
「ほ、ほぇ〜……そうなんですね……」
あまりに呆気にとられてしまったけれど、それはとても凄い大発明だ。
アルツェイトには、せいぜい水の中でも何とか泳げる程度のものぐらいが限界で、普通のパイロットスーツは多少無理をすればアッサリ破けてしまうような物が殆どなのだ。
しかし、そんな俺の心境は何処吹く風と言わんばかりに、目の前でイイジマが服を脱ぎ捨てて専用スーツに着替え始めていた。
「ちょちょちょっ!?じょ、女性の前で簡単に裸を晒すものじゃありませんよ!?」
「何?いつも姫巫女様は平気でやっている事と、そう変わらないじゃないか」
「だ〜か〜ら〜!そういう事じゃなくって……あ〜もう!」
いらん発言をしてくれたせいで、私に向けられる整備員の視線がキツい!
しかも「え?あの姫巫女様が裸体を!?」とか「う、羨ましい……」とか心の声が聞こえまくってます!
なので、可哀想な彼らの為にもギリギリ見えない程度の露出をしながら着替えました!俺も!
……とまぁ、善意から羞恥心を捨てた話はここまでにして。
水中戦仕様に改装されたタタラに乗り込んだ俺は、以前よりも洗練された最新鋭の操縦システムに驚かされる。
水陸両用に再設計したとモルドスキー医学員は言っていたが、この全方位を見れるモニターシステムは再設計を超えて更なる新型のそれに近い。
『姫巫女様、操縦システムの方はどうでしょうか?前回のものよりモニター周りが大幅に変わっているので、電子制御系統の方が見づらくなっているかもしれませんが……』
「いえ、そこの辺りは全く問題ありませんよ。むしろ視界が広くなったので、動かす側としても助かります」
『それは良かったです!何しろ、アルツェイトで開発途中のものを融通してもらった設計図を元に作ったものですから、もしかしたら肌に合わないかと心配していました』
「いえいえ!モルドスキーさん達の技術力には普段から助かっています!ですから……今後とも、私とイイジマの事をよろしくお願いしますね」
『っ……本当に貴方は、ズルい御方ですよ』
そんなモルドスキー医学員との会話を終え、俺の機体はウィンチによって少しずつ海中へと沈められていく。
すると、今までに生きてきた中で1位2位になるのではないかと思われる程の景色が、全方位モニターの全体に映っていく。
――悠々と泳ぐ様々な彩りを持った魚の群れ。
――アルツェイトの海には存在しない、絵本の世界でしか見た事のなかったサンゴ礁。
そして、海上から降り注ぐカーテンのような太陽の光に俺は思わず惚れ惚れとした。
『こちら、イイジマ。姫巫女様、ダイビングの観光はひとまず後だ。このまま降下し、あそこの海峡を通って今回の目的を果たしに行くぞ』
「うっ……そ、それくらい分かっています」
今回、俺達2人に与えられた任務……それは、アングラーの住処であるビッグホール・オーシャンの壁に近づき、極秘裏に彼らの動向を偵察する事にあった。