GALAXIES BEAST〜陽出ズル國の巫女〜 作:SimonRIO
それから数日間、俺はロマノフ社が下調べをして「禊を受ける資格」を持った人々の悩みの解決に勤しんでいた。
とはいえ、その殆どがロマノフ社の最先端を誇る医学で作られた薬で解決出来る案件ばかりではあったのだが……どうやら、ヒノモト国民に対しては公に売るような事はしないつもりらしい。
それでも、比較的良心的な価格での売買行為であったからか、次第に首都での俺に対する信仰心は着実に根付きつつあったのも事実だ。
――そんな穏やかながらも程良く疲労感のある仕事に打ち込む中、再び俺は舞台裏でモルドスキー医学員に声をかけられた。
◇◇◇
「俺が、ロマノフ社の試作型のテストパイロットを?お前、頭の方は大丈夫なのか?」
「いえまぁ、そこは神社の象徴たる貴方様が乗る機体という事で、完全に出自は隠してありますとも。その名も、「アシレイ YH-1 ヤオキツネ」!!」
神社地下にある貯水施設に着くなり、モルドスキー医学員はバッと両手を掲げて俺が乗る真っ白な機体を見せつけた。
しかし、その姿は――
「いや、その……ちょっと良いか?これ、形こそ頭パーツや装甲で狐っぽくしてるが、どう見てもミルディアのハコ機の改修機だよな?」
「ま、まぁ……そこはまだ、ロマノフ社の方で独自のフレーム等が難航していましたので。しかぁし!その性能はカタログスペック上、あの「黒い凶星」のカスタム機を上回っております!」
「それは凄いんだが、具体的には?」
「確認出来たデータとの比較によれば、おおよそ1.2倍程で――って、帰ろうとしないでくださいよぉ!?」
全力で俺の服を引っ張って止めようとするモルドスキー医学員に対して、俺は大きな溜め息を吐きながら振り返る。
「じゃあ言わせてもらうけれども!そもそも鹵獲品の改修機に乗って宣伝したところで、あの血の気の多いヒノモト国民の人達が納得すると思うか!?何なら日頃から「化けの皮剥いでやるぜヒャッハー!」って街中で旧型ビースト・ユニットの決闘やってる奴らだぞ!!しかも飲酒運転もあるし!!」
「その程度、もちろん予想の範疇でございますよ!だからこそ、このヤオキツネにはロマノフ社の最新鋭学習型コンピュータと、様々なオプション装備を換装可能なハードポイントをアチコチに設置しております!!」
激しく身振り手振りで説明するモルドスキー医学員に猜疑心を抱いた俺は、軽くジッと彼を見つめて読心能力を試してみる。
すると、なんと「これだけはバレたらヤバい」「勝手にOK出したの失敗だったかな」といった心の声が聞こえてきたのだ。
「モルドスキー医学員、正直に答えろ。俺に内緒で、何か引き受けたのか?」
「げっ!?そ、それは……」
「た〜と〜え〜ば〜……ビースト・ユニットの決闘とかか?」
「ドキィ!?なんで分かったんですぅ!!」
「いつもやってる、例の推察力だよ。そこまでして俺を引き止める理由があるとしたら、こんなアホらしい事ぐらいしか思い浮かばなかったけれどもな!」
「お、恐れ入ります〜!!何せ、「それだけ凄い力があるならビースト・ユニットも強いんだろう」と躍起になる輩が後を絶たないものでして……」
「全く、慈善事業に精を出していたらコレか。真面目に、このヒノモトは賑やかな事この上ないな」
再び酷く疲れた溜め息を吐きつつも、俺は彼の用意してくれた試験機ヤオキツネを見上げるのであった。
さて、コイツには何を装備させたものやら……。