GALAXIES BEAST〜陽出ズル國の巫女〜 作:SimonRIO
初手でホウチュウア共栄国の山岳基地を総括する主要施設を潰す事には成功したものの、やはり数的には圧倒的に向こうが上らしく、目的の倉庫以外から現れた次々と無誘導兵器を搭載した戦車やハコ機の攻撃によって、コクライ・テラ・ユニットで機動力が低い俺のクロツバキは徐々に劣勢へ追い込まれていく。
対して今の使える武装はコクライ・テラ・ユニットに搭載された幾つもの拡散ビーム砲と、クロツバキ本体が持っている新型の長銃身レーザーライフルのみだ。
山頂側に近い倉庫の方はイイジマが片付けてくれているとはいえ、このままではいつ残骸を持ち出されてもおかしくない状況であった。
すると案の定、例の倉庫からワイヤーで荷台に残骸を括り付けた載せた輸送トレーラーが、一個中隊規模のハコ機部隊に護衛されながら姿を現した。
――どうやら、向こうは完全に基地を放棄するつもりのようだ。
「こうなればリスクは高いですが、やむを得ませんね……コクライ・テラ・ユニット分離!あの部隊の中心部に目掛けて突撃します!」
即座に俺は大型バインダーの内側から姿勢制御用に取り付けられていたシールドブースターを両腕に装備し、接続していたバックパック諸共に専用ユニットを逃げる敵部隊に向けて射出する。
それが墜落した直後に両方の粒子固定装置を撃ち抜くと、まるで核爆弾が炸裂したかのような爆発が中隊を真っ二つにする形で火柱を上げた。
『な、何て威力の攻撃だ!ミルディアめ……PNDとの停戦協定をアルツェイトと結んだばかりのクセに!!』
『2号のトレーラーがやられた!残る1号トレーラーは何としても死守するんだ!ヒノモトの技術さえあれば、我々の国も――がぁっ!?』
「そんな事、させるもんですか!!」
すかさずDEEPシステムを起動して爆撃した近くに飛び移り、"私"は獣の本能が赴くままにシールドブースターと背面や脚部スラスターの推力をもってして、ビームランス形態に切り替えたライフルで敵部隊を切り刻んでいく。
ある機体はコックピットに突き刺して一気に真っ二つに、またある機体は着地する時にシールドブースターで加速して空き缶を踏み潰すかの如く……気付けば、自分でも分からないくらいに愉しく笑っていた。
「あはっ……あははっ!あはははははっ!!」
『ば、化け物だ……黒い狐が、貪るように我々の同胞達を……ぎゃっ!!」
「これで護衛は最後ですね。後は……!」
最後のハコ機を敵から奪ったビームサーベルで十字に切り捨て、そのまま前方の輸送トレーラーに照準をロックオンする。
『ひぃ!い、嫌だ!あんな風に殺されたくないぃ!!』
そんな悲鳴が聞こえるよりも早く"私"は再び武器をライフル形態に切り替え、運転手が何かを叫ぶ前に収束したレーザーで残骸ごと輸送トレーラーを撃ち抜いた。
――これで任務の方は完了したけれど、今度は1人で山頂の倉庫へ向かったイイジマが心配だ。
「念の為、助けに行かないと……!」
そう"私"の番を守る本能が直感的に、満月の夜を飛ぶクロツバキを山頂方面へと舵を切らせた。
◇◇◇
その同時刻、イイジマの方では――
『クソッ!相手はたった1機のハズだ!それなのに、何故こんなにも圧倒され――がぁっ!!』
『これでは防衛部隊を援護する事も無理だ!やはり、「黒い凶星」の名は伊達では――ぁぁあ!!』
山頂方面の倉庫群へ到達したイイジマは、強化型シールドブースターで全方位にビームをバラまきつつ、両手に持ったレーザーライフルとビームサーベルで向かってくるハコ機や戦車を潰し続けていく。
「ミルディアのエースと間違えてくれている分はやりやすくなってはいるが、なんて数の多さだ……!シンティア皇国に対するホウチュウアの対空意識、これは噂よりも強いかもしれないな!」
しかし、特殊塗料によるステルス性とヤコビ・ブースターによる機動力に優れたヤオキツネでも1機で多数のハコ機を相手取り続けるのは厳しく、油断した一瞬で背後への接近を許してしまった。
『その「黒い凶星」の首、もらっ――がっ!?』
だが、ここでホウチュウアの駐留部隊にもイイジマにも予想だにしなかった事態……アキのクロツバキがコクライ・テラ・ユニットを脱ぎ捨てて乱入してきたのだ。
彼の背後をとった機体を上から串刺しにしたアキの機体は、それの腰部に着いていた投擲グレネードのピンを抜いて敵部隊の方へと蹴り飛ばす。
その大爆発で相手が混乱する最中、イイジマは彼女に対して秘匿通信を繋いだ。
「なっ……アキ!?どうして此処に!?」
『イイジマ!無事で何よりです!私の方は、機体の残骸も護衛部隊も全て片付けました!後は、ここも殲滅して撤退しましょう!』
「はぁ……アレを棄ててくるとは、随分と派手にやったようだな。だが、とりあえずは了解だ。ここは一気に殲滅して、なるべく早く海洋方面で待機している回収班と合流を急ぐぞ!」
ここから2人による怒涛の脱出劇は凄まじく、イイジマが拡散ビームやレーザーによる弾幕を張る中、いまだDEEPを発動中のアキは弾幕の隙間を縫うように滑り込んではスラスターで飛び跳ね、持ち前の機動力を活かしてビームランスを振り回して暴れ回る。
そして、アキが巡航形態へ変形したクロツバキの背中にイイジマの機体を乗せて戦線を離脱する頃には、山頂から昇る陽射しが基地の全てを更地にした景色のみを露わにしたのみであった。