GALAXIES BEAST〜陽出ズル國の巫女〜 作:SimonRIO
イイジマのカムイが虎型ビースト・ユニットに叩き落とされたと認識した瞬間、"私"の目の前には本物の「黒い凶星」オルグの機体が姿を現した。
ここまで妨害電波を使ってまでレーダーに映らないようにしていたのも、こちらがホウチュウア共栄国の勢力と戦っていた状況をいち早く掴んだが為の対策だったのだろう。
『大将!こっちの痩せっぽちは俺に任せとけ!大将の方は例の偽モン野郎を!!』
『あぁ、了解だ。だが、向こうの機体も見慣れない新型機だ。抜かるなよ、グランツ君』
『そんくらい気にすんな!右半身の殆どがダメになってようが、機体に接続する尻尾が無くなろ〜が、俺は大将の右腕だぜ!』
そう部下に対する通信を終え、オルグの機体は再び俺のクロツバキの方へと向き直った。
『君の相方は私の部下が抑えている。私と君、1体1の戦いとなったな』
「よくも不意打ちみたいな真似を……ケホッ!かはっ!?」
『むっ?その様子……発動していたDEEPシステムが切れたか。それに、不意打ちと言うのならば君らの行った事こそ、我が国の誇りを汚す行為に他ならない。まさか、偽旗作戦でミルディアに汚名を着せてくれたとはな』
「ゲホッ、ゴホッ……!そうしなければならなかった理由、自分の国を本気で守りたい人じゃない兵士の貴方には分からないでしょうね……!」
俺はすかさず再度クロツバキのDEEPを発動させた。
そして、オルグの機体に向かって全ブースターで一気に加速しながらバインダーのビーム砲で牽制射撃を行い、その勢いのままビーム・ランス形態へ変形させたライフルで斬りかかる。
『遅い!』
しかし、オルグ機は全ての攻撃を見切ったかのように最小限の動きで牽制用に放ったビームを避けきったばかりか、斬りかかってきた"私"の連撃すらも両手に持ったビームサーベルで一撃一撃をいなしてのけた。
「嘘でしょう!?普通避けれますか、アレを!!」
『悪いが、あのホウチュウアの基地での襲撃は映像として私にも届いている。それの動きから君の得意そうな戦術を分析したまでの事だ!』
だとしても、オルグ機の動きは人間が乗っているとは思えない程の鋭敏さだ。
DEEPによる反応速度を用いても堕とせる気配すらない相手の機体に苛つく中、"私"はイイジマの方にも意識を向ける。
『そぉらよっと!そんな長いだけのデカブツじゃあ、俺の改修型ラフ・ティガーのスピードには叶わねぇぞ!』
『ぐっ……まだ乗り慣れていないのが仇になったか!だが、こっちもまだ奥の手はある!』
『うおっと!まさか股間部に隠し腕があったとはな……けど、面白くなってきたじゃね〜か!』
イイジマのカムイも人機形態となった相手に苦戦しているらしく、大型ビーム砲の砲身も兼ねていたブレードは半ばから叩き折られてしまっている。
とはいえ、それでも諦めずにイイジマは隠し腕からレーザーピストルを発射して相手の隙を僅かながら作り、その瞬間に背面へマウントしていたツイン・ビームランスを左腕と隠し腕で構えていた。
――愛する人がこうして全力で頑張っているんだ。だから、DEEPが呼び起こした本能である"私"も、キヨヒコさんを愛している俺も、こんな所で終われない!!
そんな勢いで俺はビーム・ランスでオルグ機と決死の鍔迫り合いをしながら、腰部にマウントしていたビームサーベルも左手に持ってコックピット目掛けて相手に突き出す。
『くっ!やはり近接はお手の物か!しかし――』
「う、ぐぅぅ!!右側バインダー破損!?まさか……脚のスモークディスチャージャーで!?」
『ここは空中戦だ!これは本来なら奇襲に使うものだが、君の得意な陸での戦いとは踏んできた場数が違うと思ってもらいたい!』
完全に決まったと思われた一撃だったハズが、オルグ機は何と膝蹴りで左腕を蹴り上げながら、至近距離でスモーク弾を大量に噴射してきたのだ。
たとえスモーク弾でも射出時の勢いは凄まじく、それはいとも容易くクロツバキの飛行に使っていたバインダーの片方を吹き飛ばしてしまった。
「しまっ、これじゃバランスが――うぐぁっ!?」
それと同時に、全開に吹かしていたブースターのバランスも崩れてしまい、前方に大きく姿勢を崩して更なる蹴りの一撃を腹部にもらってしまう。
そこへ、トドメと言わんばかりにビームサーベルが振るわれ、辛うじて空中の姿勢を保っていた両脚も切り落とされてしまった。
結果として空中での体勢が完全に崩れてしまったクロツバキは、全開になったままの背部スラスターと左側バインダーのブースターに振り回される形で激しく墜落し――気付けば、その猛烈な衝撃によって右腕も左腕も千切れ飛んでしまっていた。