GALAXIES BEAST〜陽出ズル國の巫女〜 作:SimonRIO
俺の要望で試作機ヤオキツネのテストや調整、細かな武装のセッティングを済ませた数日後。
「うおおおお!!」「姫巫女様!姫巫女様のお出でだぁ〜!!」
普段のように神社の舞台へ上がると、そこに集まっていたのは普段以上にテンションが上がった様子のヒノモト国民達だった。
いつの間にやら「姫巫女様」なんて呼び名まで付けられる程になるとは、日頃から慈善事業を頑張っていた甲斐が有るもんだな。
いや、しかし……というか、ちょっと待て。
何か向こうの方がガシャンガシャンと工事みたいな音が五月蝿いと思ったら、ジャンク同然な民生品のビースト・ユニットが既に街中で戦り合ってるんだが!?
「あの〜、皆様……あちらで行われている、ビースト・ユニット同士の戦闘は一体?」
「そんな事は決まっておいでです!我々の中で誰が1番強いかを競い、勝ち残った者1人だけが姫巫女様との御遊戯をさせてもらえると、さっき丸メガネの神官様がお教えくださいました!」
「あ、あはは……そうなのですね」
シレッと面倒そうな催し物をしてくれるな、あの医学員は……まぁ良いか。
とりあえず、これで相手するビースト・ユニットは1機だけにはなるから、そこだけは連中に感謝しなくてはね。
『オラァ!!これで終いじゃあ!!』
『ぐわぁぁぁあ!?』
――などと考えていたら、残った2機の片方がドロップキックで相手機体の上半身を吹っ飛ばしていたよ。
あちゃ〜……あんなに派手に暴れてたから、街が災害にでもあったようにめちゃくちゃだ。
だけど、流石は賑やかなのが最優先なヒノモト国民。被害状況に恐れ慄くどころか、更に沸き立って勝ち残った機体に拍手を送っている。
さて、こうなってしまったからには仕方ない……こっちも機体を出して戦う準備をしよう。
俺が指をパチンと鳴らすと神社が左右にパッカリ割れ、専用の機体がエレベーターで下から昇って皆の前に姿を現した。
ちなみに、この神社の魔改造もロマノフ社がコッソリ担当した大掛かりな演出だ。
「おお、これが姫巫女様の……!」
「なんと神々しい……!」
――右手にはハコ機のビームサーベルを組み合わせて長巻型に作られたツイン・ビームランス。
――左腕には、ロマノフ社が独自開発したスラスター機能を内蔵したシールドブースター
そして、背部と両脚には素体がハコ機とは思えない程に大型推進機を増設した「紅白の狐」が皆の前にそびえ立つ。
これこそ、俺がヒノモトで良く使われる機体の特徴などを研究に研究を重ね、ロマノフ社と協議しながら完全な姿となったヤオキツネの姿だ。
「では、私も混ぜていただきましょう……か!」
開いたコックピットに一飛びで乗り込み、俺は初めての尻尾から機体と全神経が繋がる感覚に僅かに震えつつ、動かす直前の視認による計器チェックを行う。
よし――完璧、を通り越して素晴らしい出来だ。
内装やシステム周りも、ロマノフ社が独自に鹵獲・改修したギア・シリーズのものが完全に機体に適応している。
「アキ=イヅモ……いざ、出陣いたします!」
そう巫女らしい一声を上げて神社から飛び立ち、まるで狐の尾のような猛烈な噴射炎を制御しながら相手の前へと降り立った。
レーダーを確認する限り、他に周りで動ける機体は存在しないようだ。
『おお……姫巫女様!よもや、この俺が貴方様と剣を交える日が来ようとは夢にも思いませんでしたぞ!』
「約束通り、勝ち残ったのは貴方1人のようですね。良いでしょう……では、尋常に勝負!!」
すかさず俺は手始めにツイン・ビームランスを振りかぶり、叩きつける勢いで横薙ぎに大振りの一撃を見舞う。
しかし、やはり相手も30機以上ものビースト・ユニットの乱戦で勝ち残っただけはあり、撃破した機体の盾を奪って柄の部分を受け止めた。
「やりますね……私、これでも一撃で戦闘不能にしようと思いましたけれど」
『ふははっ!そう姫巫女様に言ってもらえるとは光栄――だっ!!』
「おっと!そのまま盾を投げるとは!」
咄嗟に上半身を逸らしていなければコックピット直撃で危ないコースだったな。
だが、ヒノモト国民の血の気の多さは、やはり操縦の仕方にも強く現れるようだ。
――基本的に彼らは接近戦を好み、現地で使える物は瓦礫であろうが武器にする。
これがロマノフ社の見解と、そして俺の戦場での勘が導きだした大まかな答えだ。
舞台に昇った時にも多少は戦闘を観察したが、その殆どが格闘戦に特化した動きを見せていた。
今こうして戦っている相手のハコ機も、両腕を主軸とした増加装甲で物理的な防御力を高めているのが、その証拠だ。
「ふっ!やっ!はぁっ!」
『くっ、なんと凄まじい連撃だ!関節部を的確に狙ってくるとは、まさに天性の技能ですなぁ!』
「でしたら、これ以上街に被害が出る前に降参した方が良いのではないですか!?」
そう問いかけながらもツイン・ビームランスの柄などで絶え間なく弱点への追撃を続けるが、相手の方は楽しそうな声を上げながら防いでくる。
『それは貴方様だけが心配するべき話!我々ヒノモトの民は、これこそが最上の愉しみなのです!!』
「なるほど……これを愉しみと呼びますか。それなら、私も心の底から全力で楽しませてもらいますよ!!」
そう叫ぶと同時に、俺は全てのスラスターを全開にして、防御体勢を取ったままの相手に全重量の乗ったタックルをぶつける。
『ぬぉっ!?ば、馬鹿な!この機体を吹っ飛ばせるパワーが、姫巫女様の機体に!?』
「貴方の戦い方は、耐える事に特化したカウンター戦法が得意な機体でしょう?それならば、下手に手の内がバレる前に一気に叩きつけてしまえば良いだけの事です」
そうして仰向けに倒れた相手の機体の両腕両脚を、説明の片手間にビームサーベルで切り落として反撃の手段を奪った。
センサーを通して見る限り本体側に武器は無いので、実質的に俺の勝ちと言って良いだろう。
「さて、と。これで満足ですか?まだやるというのなら、私は一向に構いませんけれども」
『は、ははっ……負けたよ、完全に俺の負けだ。こんな遊戯に付き合ってくれて、姫巫女様には感謝してもし足りないな』
「ふむ、観念したようですね。では、私も積もる話がありますので、後ほど神社に来て頂けるでしょうか……キヨヒコ=イイジマ「元大尉」?」
『ぬっ……俺の事を知っているとは、姫巫女様には何でもお見通しという訳か』
そう……これもシナリオ通り、俺が元ヒノモト最強だった傭兵を打ち負かす「演目」だ。
このビースト・ユニットによる対戦も、ロマノフ社が彼の腕を見込んで呼び寄せる為の囮だったのだ。
目的は、もちろん彼を味方として引き入れる事……それこそが、例の「カムイの儀式」計画を動かす為に必要なのだ。