GALAXIES BEAST〜陽出ズル國の巫女〜 作:SimonRIO
イイジマを神社の神主として味方に引き入れて以降、俺の仕事は以前にも増して忙しくなったように感じられる。
これもひとえにロマノフ社の宣伝活動のお陰とはいえ、毎日1人1人それぞれの悩みを読心能力で解決していくのには骨が折れる。
「お疲れのようだな、姫巫女様。こちらの仕事は先に全て終わったところだ」
「あっ、缶コーヒーの差し入れありがとうございます。流石はロマノフ社にかつて存在した、伝説の部隊のリーダーを務めていた人ですね」
「褒めたところで、お世辞しか出ないぞ。午後からも、まだまだ予約がいっぱいなんだろう?」
「ええ、まぁ……でも、それは私の勤めです」
ビースト・ユニット関係の悩みには時折イイジマが代わって対応してくれるが、彼の機体も新たに用意するとはロマノフ社の本気度が伺える。
どうにも彼の機体は俺と戦った時に使っていた機体の構成をベースに、機動力や火力の低さを補うべく拡散ビーム砲が内蔵された新型シールドブースターが両腕に装備されているらしい。
一瞬なるほどと思ったカスタムではあるが、よくよく考えればイイジマの腕があるからこそ戦えるだけの、普通に使うにしては付け焼き刃的な処置だ。
あの新型シールドブースターも設計図を見せてはもらったが、拡散ビーム砲を搭載して火力の補強はしたとはいえ、そこに搭載していた分の推進剤の量は減っているのがネックだろう。
俺のヤオキツネもそうだが、素体のハードポイントは増設されている仕様は換装機として完成されていると思うのだが、モルドスキー医学員曰くロマノフ社はまだまだ試行錯誤を続けるつもりらしい。
◇◇◇
「――なんて考えてた矢先にコレですか。いくら何でも、次の試作機が出来上がるの早すぎませんか?」
「しかし、コレはまた珍妙な……ガンマ社のギア・シリーズのコア部分を前後に連結させているのか?」
その翌日、神社の地下スペースに届けられたのは、ヒノモト首都のアチコチで見かけた「トリイ」なる物に良く似た形状をした機体だった。
とはいえ、名前の札がある部分にはギア・シリーズの胴体部のみが取り付けられ、その脚部も偶に見かける前後に並べられた「トリイ」が3本あるといった姿だ。
だが……1番気になったのは、そのギア・シリーズの胴体に直結する形で取り付けられた、ツイン・ビームランスの全長に並ぶくらいの長大なレールガンだ。
そして案の定というべきか、モルドスキー医学員がウキウキした様子で俺とイイジマを出迎えた。
「ああ、お二人とも!どうです?この「ディア・ギア YH-2 イヅナ」は!いやぁ、あのガンマ社の新型を集めるのは大変でしたよ!何せ、イアンナの使っていた機体の残骸をアルツェイトの極秘輸送ルートで送って貰うのに、それなり以上の時間や金が掛かってしまいましてねぇ……」
饒舌に語る彼とは真逆に、俺とイイジマは半ばドン引きしつつも挙手して質問する。
「それで出来上がったのがコレですか。あの、率直に言わせてもらって良いでしょうか?……マトモに戦えるんですか、アレ!?」
「あまり好意を無碍にしたくはないんだが、それには俺も同感だ。モルドスキー、コイツはどういった運用を想定している?」
「ま、まぁ驚かれるのも無理は無いでしょう。ですが、コレでも「カムイの儀式」計画の第2段階の実験機なのです。目的は、より高火力なビースト・ユニット用の兵装パーツの開発。それを運用する為に、どれだけの出力が必要になるかを研究する為にギア・シリーズを2機もジェネレーターに連結させているのです」
そのモルドスキー医学員の言葉に、俺もイイジマも溜め息を吐いて何も言えなくなる。
呆れたというべきか、逆に感心したというべきか……あんなにハコ機の改修が上手いロマノフ社が、まさかこんな物を本気で作るとは思ってもみなかった。
「でも、1つ問題がありまして……実射におけるテストにおいて、ターゲットとなる物が今のところ見つからないんです」
「それはそうだろうと思った。イアンナやアングラーの連中が攻めてきているならまだしも、あんな物をヒノモト国民の使う機体相手に撃つのは色々と不味いからな。全くこんな物、どう使ったら良いものか……」
そうモルドスキー医学員とイイジマが腕を組んで悩む中、ふと俺は今日の悩み相談中に「とある事」を読心能力で知ったのを思い出す。
「ちょっと良いですか?近日中に、何かヒノモト首都の方で大規模な祭があったりはしないでしょうか?」
「ああ、確か……ヒノモト建国記念としてのイベントがあったハズだ。姫巫女様、それがどうかしたのか?」
「流石に馬鹿らしい催し物にはなると思うのですが……ここは1つ、花火業者の方々と協力して打ち上げ花火ならぬ、「撃ち落とし花火」なる物でテストを行ってみてはどうでしょうか?」
すると、それを聞いた2人は思いっきり吹き出しつつも、何処か楽しそうな表情を浮かべた。
「その手がありましたか!いやぁ、やはりヒノモト国内で仕事をしていると、案外思いつかないものってありますねぇ〜!」
「なるほど、「撃ち落とし花火」か……確かに、これは意外な盲点だったな。しかも賑やかな物が好きなヒノモト国民にとって、発想もやり方も派手なコレは良い刺激になりそうだ」
「そ、そうですか?私は何かてっきり、現実的じゃないとかの理由でダメになるかとばかり……」
「いえいえ!有用なデータが取れるなら、何であろうと活用しろというのがロマノフ社のモットーですからね!」
すると、モルドスキー医学員は早くも花火業者に連絡を始め、そのまま地下スペースを後にしていった。
「……そういえば、誰がパイロットをやるといった話はしなかったな」
「あっ!それ忘れてた!ちょっと待って〜!モルドスキーさ〜ん!!」