GALAXIES BEAST〜陽出ズル國の巫女〜 作:SimonRIO
――ヒノモト建国記念祭の当日。
ロマノフ社が手配した花火業者の人達から送られてきた新型花火のデータを見ながら、俺はイイジマと共に今回の撃ち落とし花火作戦を神社の個室で組み立てていた。
その為、今日の悩み相談としての仕事は「建国記念祭での催し物がある」という理由で休止中だ。
「しかし、カタパルト方式で花火の玉を打ち出す事になるとはな……モルドスキーも姫巫女様に負けず劣らず良い発想をしている」
「納得している場合ですか、イイジマさん?カタパルトで射出されるとなると、普通の打ち上げ花火を狙い撃つのとは訳が違いますよ。というかそもそも、あの狙撃しか出来ないトリイモドキに乗るの私なんですからね!?」
「何だ、姫巫女様とあろう人が公平な勝負をしたのに不満なのか。それに俺も自分の機体で援護射撃をしてやるから、そこまで問題じゃないだろう」
「ジャンケンの最初はグーでパーを出して勝った人に言われたくありません!」
しかもジャンケンで俺が負けた瞬間、止める間もなくモルドスキーさんに伝えに行きましたからね、この人!!
お陰で舞台に立つ度、「姫巫女様が新しい神輿に乗る!」と皆が期待の声を上げまくっていて大変なんですから!
「あ〜全く……今は喧嘩しても仕方ないです。とにかく、花火の玉はクレー射撃のように飛ぶけれど、僅かにビームが掠りさえすればちゃんと花火するって事で良いんですよね?」
「まぁ、それで大体は合っている。しかし花火するって、変な動詞だな……いや、何でもない。だから、そう不満げに睨みつけてくるのは止めてくれないか」
「むぅ〜……じゃあ、出店でタコヤキとか酒のツマミになりそうな物、いっぱい買ってきてください。それでチャラにしてあげます」
「了解だ、姫巫女様。やれやれ、これで中身が男と言われると不思議だな……」
ええい、イイジマはいい加減に余計な一言は言わないで欲しい。
神職としての仕事はキチンと出来るだけに、何でこう俺にだけ親戚の子供みたいな扱い方をするんだか。これでバツイチ子持ちだったとしても、多分もう驚かない自信があるぞ。
◇◇◇
「おぉ〜!生の姫巫女様だ!」
「きゃ〜!!可愛い〜!!」
「姫巫女様ー!俺だ!結婚してくれー!!」
「あ、あはは……皆様、ごきげんようです〜」
それはそれとして、昼間の催し物として現在の俺は、ロマノフ社が見事な偽装を施してくれたイヅナこと神輿に乗って、ヒノモト首都の凱旋をしながら皆に笑顔で手を振っております。
まさか、これをする為にわざわざトリイみたいな形にしやがったんじゃないだろうな?というモルドスキー医学員への怒りを堪えつつ、俺は道行く中で皆が投げてくる祝いの「オマモリ」とやらを何とかキャッチしながら挨拶を返す。
「わっとと……オマモリをお作り頂き、ありがとうございます〜!」
この「オマモリ」という文化はヒノモトが建国された古来より存在するものらしく、馴染みのない俺から見れば布で作られた小さな小包といった感じだ。
イイジマ曰く、渡された人に幸運をもたらすというらしいが……なるほど、ここまで俺に対する信仰心も高まっているのは何となく分かるな。
――それと、そんな最中で厚着にサングラスという怪しげな出で立ちで俺のおつかいをしているイイジマの姿を見かけたのは何も言わないぞ。
あれで警備員に捕まって撃ち落とし花火に参加出来ません、なんてなったら色んな意味で責任を押し付けるつもりだからな。
◇◇◇
「姫巫女様、お前の好きそうな物は片っ端から集めてきたぞ。さて、いよいよ本気の催し物となる訳だが……どうした?今になって怖気付いたのか?」
「ふふっ……いや、あんな不審者丸出しスタイルで良く捕まらなかったな〜と思いまして……ふふ」
「まぁ、怪しまれたらすぐに撤退をして着替え直したりもしていたからな。これでも、不測の事態に備えて行動していたつもりだ」
あーうん、そうだったんですね……その割りにはイイジマさん、昼間に一目で分かるレベルで目立っていましたよ。
「ところで、姫巫女様の方こそ機体のチェックは大丈夫なのか?モルドスキーによると、どうやら照準にクセがあると聞いたんだが」
「シミュレーションで確認した限り、そこは自動照準補正システムで完全に問題ありません。しかしながら、このジェネレーター出力を持ってしても、一発毎の射撃間隔が長いのは厳しい部分がありますね……」
「おおよそ、3秒ほどに一発といったところか。砲身にかかる負荷や各所の緊急冷却機構、それらを加味してもこれ以上の短縮は難しいとモルドスキーも言ってはいたな。もし、狙撃に自信が無いようならば俺が代わりに――」
「いえ、私に任せてください。イイジマさんは、小さな花火に対しての射撃に集中して頂いてもらいたいのです」
「そうか……了解した、姫巫女様。くれぐれも無理はするんじゃないぞ」
「分かっていますよ、それくらいは」
――きっと俺は変なところでプライドが高いのだろう。
ジャンケンの勝ち負けだけでパイロットを決めたというのに、今は「何としてでも全部の花火を撃ち抜いてやる」という気力に満ち溢れているのだから。