GALAXIES BEAST〜陽出ズル國の巫女〜   作:SimonRIO

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8 ヒノモトという文化

 

あれから俺はイイジマの機体に乗せられて神社へと戻り、モルドスキー医学員の通信機越しに機械音声でグチグチとロマノフ社の上層部から直々の説教を食らった。

 

しかし、その翌日――

 

流石にあれだけの事をしでかしたら来ないだろうと思っていた俺の考えとは真逆に、神社の方には一部が交通整理になる程の大行列が出来上がっていた。

 

「凄いです、姫巫女様!あんなに楽しい建国記念祭は生まれて初めてでした!!」

「あの素晴らしいビームの薙ぎ払い、素晴らしかったです!!」

 

そんな声が響き続け、俺は顔が真っ赤になりそうなのを隠しながら悩み相談の仕事に取りかかった。

 

◇◇◇

 

そして昼休憩の最中、俺は隣で弁当を黙々と食べるイイジマに対して頭を下げた。

 

「あの、イイジマさん。昨日は、その……色々と本当にすみませんでした」

 

「まぁ、エネルギー管理の方なら次から気を付けるようにすれば良いだけだ。結果的に、姫巫女様の信仰は更に強まったんだからな」

 

「ですが、街の方に被害を出してしまったのは事実ですし――」

 

「あんな程度、逃げ足に優れたヒノモトの奴らには日常茶飯事みたいなもんだ。例え建物が壊れても、1日2日あれば元通りに直せるんだからな。風が吹けば桶屋が儲かる、といった形にな」

 

「それは、つまり……ヒノモトには建築やリフォームの仕事が多い理由という事ですか?」

 

「そうでなければ、今頃は首都も更地になっているだろう。それぐらい、この国は両極端な発展を遂げてきたんだ」

 

なるほど、それは神社の前で大規模なビースト・ユニットの乱闘があったのに、気付いたら全て元通りの街並みに戻っている訳だ。

さながらヒノモトは破壊と創造に特化した独自文化、といった感じかな。

 

「それはそうと……昨日のイヅナのエネルギー切れの件についてだが、後でモルドスキーが回収して機体の状態を確認したところ、姫巫女様が撃ちまくった事が原因ではなかったようだ」

 

「えっ、そうなんですか?じゃあ、一体どんな理由で……?」

 

「至極簡単な話だ。電装系周りが不十分だったらしく、それによって1機分のギア・シリーズのエネルギーしか供給されない状態が発生していたとの事だ。とはいえ、たとえ2機分が接続されていたとしても、数発ビーム砲を撃ったところで電装系がやられてしまう可能性が高かったようだがな」

 

「えぇ……酷いですよ、それ。どれだけ私が操縦に苦しんだか、開発部に訴えてやりたいぐらいです」

 

「もう既にモルドスキーの方で、あらかた文句は言ったとの事だ。その詫びかは知らんが、来週辺りにヤオキツネもとい換装改修型ハコ機用の試作強化装備が送られてくるそうだ」

 

それを聞いて俺は内心とても嬉しく思いつつも、ロマノフ社の思うように動かされている感覚がある不満から表情に出すのを堪える。

 

「姫巫女様、尻尾が激しく揺れているぞ」

 

「はっ!?こ、これは身体が勝手に動いただけです!!」

 

……とはいえ、こうして喜びを本能的に隠しきれない辺り、まだまだ獣人としての身体には慣れないな。

 

◇◇◇

 

――それから1週間後。

 

神社の地下スペースに届けられたのは、まるでヒノモトで信仰されている神様が背中や腰に着けている物に似た、2本の大型バインダーとハコ機の頭部ほどもあるスラスターを合体させた代物だった。

 

「で、コレが例の強化装備「RFX-8 ヤコビ」でございます。姫巫女様とイイジマ大尉、詳しい説明は要ります?」

 

「ああ、よろしく頼む。ハコ機を改修した物が俺達の基本戦力となる故、これから先はコイツに命を預ける事も多くなるだろうからな」

 

「私もイイジマさんと同意見です。使い方を知らないで装備するのと知って装備するのでは、雲泥の差になるのがパイロットとしての心得ですので」

 

すると、やはりというかモルドスキー医学員は丸メガネをクイッと指で押し上げて上機嫌でタブレットを取り出し、そこからハコ機に合体させたイメージ画像を映しながら解説を始めた。

 

「では喜んで!このヤコビは言うなれば、同規格のハードポイントさえあれば、理論上どんな機体にも装備が可能な高機動化装備です!……とはいえ、背面スラスターのみの強化でまだまだ開発途中の物も存在するのですがね」

 

「そいつを装備した場合の機動力の理論比較値は?」

 

「重装甲なイイジマ大尉の機体であっても、シールドブースターの出力を併せれば1.5倍は出せるかと。無論、機動力に突出した姫巫女様のヤオキツネなら、更なる増加も見込めますよ」

 

「凄いですね、そんなに動けるようになるなんて……でも、その際に掛かるGも結構なものになるのでしょう?」

 

「まぁ、そこばかりはお二人の腕といいますか……とはいえ、あのイヅナを大きく動かしても失神しなかった姫巫女様であれば、全く気にはならないハズです」

 

そんなモルドスキー医学員の言葉に、俺とイイジマは少し難しい表情を浮かべる。

 

「とりあえず、無いよりはマシ……といった感じですね」

 

「モルドスキー、ひとまず使わせてはもらうぞ。それにどうせ、近い内にまたロマノフ社から新しい試作機が送られてくるんだろう?」

 

「良くお気付きで、イイジマ大尉。ちょうど最近、アルツェイトから徴用出来たテスト機の改修作業中でしてねぇ。何でも、今後の量産モデルに使う新型フレームを先行的に取り入れているようです」

 

「量産向けの新型フレームですか……国連和平中立宣告団のPNDが各国を監視している中で、良くもまぁアルツェイトは無茶な真似が出来ますね」

 

このアルツェイト国の不審な動きには、たとえ愛する祖国である俺であっても怒りがフツフツと湧いた。

 

――またアルツェイトは戦争で多くの人を死なせるつもりなのか、と。

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