「ちょっと道を訪ねたいんだが、いいか?」
「……」
「星野アイのドームライブ会場って?どっちなんだ?」
「お前も……」
「?」
私服姿で、仕事をする男。これでも警察である。
そして、道を聞かれた男はフードを目深にかぶり、花束を持っている。
「仕事で、呼ばれてんだけど方向音痴でな、場所わかるか?」
「……」
指をさして方向を教える花束を持った男。
顔色が悪いが、何の問題もない。人間として正しい状態なので無視をする。
少し歩いて、足を止める。花束に使われたのは、白バラ。花言葉は「純潔」「深い尊敬」「私はあなたにふさわしい」、それだけならプロポーズ。ところどころ折れていれば、印象も変わるというもの。「純潔を失い、死を望む」それが折れた白薔薇の花言葉である。
「星、星か……こういう時、怪異のところに迷い込むから便利ではあるよな、蝸牛は」
警察の男は、フードを被った男が、女性にナイフを突き立てる現場を目視した。地面から、四階の外廊下での犯行を。
そしてマンションの階段ではなく、四階の外廊下へ壁伝いに登って逃亡を阻止する。
「そこまで、」
「っ!なんで、」
「俺は迷子でね、方向だけじゃ、目的地にたどり着けないんだ。それより、現行犯だ」
「!」
「っと……人命優先だな」
逃げなした男は無視して、しゃがみ込む。
「誰かわからないけど、たぶんこれ無理だよ」
「無理かどうかは関係ないだろうが……先輩がいればこういう時楽なんだがな……」
止まらない出血を止めるために、警察の男は、小瓶を取り出した。あまり勧められることではないが、死にかけの人間を助けるには役に立つ。
小瓶のなかの液体を、出血している腹部にかけると。傷が小さくなっていく。
「全盛期じゃなくてこれって、やっぱ先輩化けもんだろ」
「何したんだ?」
青い目の幼児の質問に、いい渋るような素振りを見せて、
「知らないことのほうがいいかもな、」
そう、一言言ってから、立ち上がり、外廊下から、飛び降りた。
「坊主、警察呼んどけ」
そのまま電柱をつかんで、2階建ての家の屋根を走り、逃げ出した男を追う。方向音痴のはずだが、この時ばかりは真っすぐと、犯人を追っていた。
「捕まえた」
「はぁ?!」
「なんだよ、目の前に人が落ちてきたくらいで驚くなって、それよりも、7:38、殺人未遂で逮捕だ」
手錠で拘束はせず、拳で気絶させて逃亡を阻止する。
「はぁ……戻るの面倒だな…」
今度は普通に地面を歩いて、現場へ戻ろうとすること二十分、サイレンの音が近づいてきて動きを止めた。
「君、もしかしてだけど…」
「おお、ここの管轄の人?この人頼める?方向音痴で現場にたどり着けなくて。改めて……風説課、巡査。
「あ、ああ。乗ってくれ、風説課は馴染みがないので、つかぬこと聞きますが休日でしたか?」
「いえ、仕事の一環です。方向音痴なので今回の件はたまたまですね」
「な、なるほど?」
「詳しくは、後ほど」
こうして、星野アイの殺害は阻止された。