人神のなれ果て ー魔龍王に拾われてから復讐を誓うー   作:柊 シズク

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人神のなれ果て魔龍王に拾われる

それは太古の時代に消滅した人神の残した残響。

それは本来であれば誰にも見つかることなく朽ちてゆくはずだった。

しかしそれは見つけ出されたのだ。

太古の竜族の生き残りである魔龍王ラプラスによって。

 

「君の体にはひどいもやが広がっているようだけど、一体君は何者なんだい?」

 

目の前の人は私に向かって尋ねてきた。

私は誰なんだろうか。

 

「分からない。」

「そうか、分からないか。構わないよこれから分かっていけばいいだけだからね。」

 

彼は私の手を引いてどこかに連れて行った。

 

「ただいまロステリーナいい子にしていたかい。」

「はい!もちろんです!」

「そうかそれは良いことだ。」

 

彼は少女の頭を撫でた。

少女ははにかんで喜びを感じていた。

 

「それはそうと今日は客人がいるんだ。」

「お客さまですか!?ご主人様がお客さまを連れてくるなんて初めてです!」

「そうだったね、この子が客人だよ。」

 

私は会釈をした。

 

しかしロステリーナと呼ばれた少女は困惑していた。

 

「ご主人様お客さまはどこにいるんですか?」

「ここにいるだろう?」

「いえ、私にはどこにも見えないですよ?ご主人様。」

 

ロステリーナの言葉にラプラスは驚いた顔をしていたが、考え始めて少ししたら納得したような顔をしていた。

 

「そういうことか。ロステリーナどうやらこの子は君たち人間では知覚できないほど存在が希薄なのだろう。」

「どうしたらその人を私が見ることができるのでしょうか?」

「私が存在を固定する魔道具を作ればロステリーナも知覚できるようになるはずだよ。」

「本当ですか!?私、楽しみにしていますね!」

「君も聞いていただろうけどそういうことだからこれからよろしく頼むよ。」

 

それから私はここで暮らすようになった。

とはいえ暮らすといっても食事も私は取れなかったし、さらに家事などをしようにも私が触れたものも存在が薄くなりうまくいかなかった。

 

それから1ヶ月が過ぎた頃だろうか。

ラプラスは存在を固定する魔道具を作ってくれた。

つけてみて魔力を通してみると自分の意識のモヤも消えた気がする。

 

「どうだいロステリーナ見えるかい?」

「はいご主人様!でも顔はモヤがかかってぼやけています。」

「そうかこれでは君の体を繋ぎ止めるには不十分だったか。それで着け心地はどうだい?」

「少し気分がスッキリしたみたいだ。」

「ふむ、君自身の意識にも影響するのか。」

 

そう言ってラプラスは書斎に戻って行ってしまった。

 

魔道具ができてから私はロステリーナに文字を教えてもらっていた。

 

「そういえばあなた様の名前は何なのでしょうか?」

「名前はまだない。」

「それじゃあ名前を付けてもよろしいでしょうか!」

「ありがとうロステリーナすごく嬉しいよ。」

「えっと、シルヴィアはどうですか?」

「うんすごく良い名前だよ。ありがとうロステリーナ。」

 

しかしシルヴィアか、良い名だが私は性別というものがないからどうしたものか。

まあ、せっかく彼女がつけてくれた名だ、大切にしよう。

 

私は夢を見ていた。

私は神々と語りあっていた。

彼らに知識を教え、また彼らも私に知識を教えた。

私は赤子を抱いていた

彼女は健やかに育った。

そして私は龍神に提案をした。

他種族同士の子について調べないかと。

そうして彼女を龍神に託した。

 

突然場面が変わった。

 

体が貫かれている。

皮が剥がされ、肉は潰され最後に魂が砕かれた。

薄れていく意識にはっきりと聞こえた声がある。

虫唾が走るほど不快な笑い声が聞こえた。

 

私は飛び起きた。

ロステリーナは私を心配そうに見ていた。

酷くうなされていたらしい。

 

「大丈夫ですかシルヴィアさま?すごくうなされていましたが。」

 

少し顔が引きつりながらだったが答えた。

 

「大丈夫だよロステリーナ、大丈夫さ。」

「もし何か私にできることがあれば何でも任せてください!」

 

彼女は胸を張ってそう言ってくれた。

 

「それじゃあ一ついいかな。」

「はい何でしょうか!」

「ラプラスさんは今どこにいるのかな?」

「ご主人様なら書斎にいるはずです!」

「ありがとうロステリーナ。」

「どういたしまして!」

 

さてラプラスの書斎に着いた。

扉を開けるとロステリーナの言う通り彼はそこにいた。

 

「どうしたんだいシルヴィア、夜は酷くうなされていたようだったけど。」

「夢の内容と記憶についてです。」

 

そうして私は夢の内容と思い出した記憶について彼に話した。

 

彼は困惑の表情をしていた。

 

「どうしましたか、ラプラスさん?」

 

私の言葉に彼ははっと顔を上げた。

 

「いや、あまりにも想像していなかった話だったからね。すまないが少し話を整理させて欲しいから出て行ってくれるかい?」

 

私は頷いて部屋から出て行った。

恐らくこの記憶は彼にとって重要だったのだろう。

 

その後朝ご飯を食べた後彼に話しかけられた。

 

「君の記憶について教えなければならないことがある。」

 

そうして彼は私が人神の生まれ変わりではないかということと、これまでに起こったことについて大まかに教えてくれた。

 

「一つ提案をしよう。僕の稽古を受けてみないかい?」

「具体的にはどういった稽古ですか?」

「僕の知っている限りのすべての技術と魔術を教えよう。」

 

ヒトガミ、それは私の命を奪い世界を滅ぼした宿敵。

奴をこの手で殺す力が手に入るなら願ってもないことだ。

 

「稽古を受けさせてください。」

「分かった。」

 

そう言って彼は書斎に戻って行った。

 

それからはひたすら稽古の日々が続いた。

最初は基礎を固めるためひたすら剣を振り続けたり、魔力が枯渇するまで初級魔術を使い続けた。

それを100年ほど続けた頃だろうか。

ラプラスは応用を学ぶ時が来たと言い、ありとあらゆる剣術と魔術を教えてもらうことが出来た。

それゆえに座学の時間ができるようになった。 

 

「また、魔術の勉強ですかシルヴィアお姉ちゃん?」

 

100年以上一緒にいたからかロステリーナとは随分仲良くなったのだが、なぜかお姉ちゃんと呼ばれるようになってしまった。

私は男でも女でもないと言っても「お姉ちゃんはお姉ちゃんなの!」と言われてしまった。

まあ彼女がそれでいいならいいのだけれども。

 

「そうだよリーナ。」

 

私もずっと彼女といるのだからあだ名の一つでもあると良いと思いリーナと呼んでみることにしてみたのだ。

それを聞いた瞬間私のお腹に飛びついてきたのはまた別の話だが。

 

「今日はどんな魔術を勉強してるんですか?」

 

「水王級魔術についてだよ。」

「どんどん私なんかじゃ比べ物にならないほど成長していますね!」

 

一応勉強の一環でリーナにも魔術をおしえるようになったのだが、彼女の成長は私をはるかに上回っている。

なのに彼女は私を過大評価しているのだ。

 

「そんなことはないよリーナ私よりも早く上級魔術を覚えたのだから。」

「でもシルヴィアお姉ちゃんだって剣術を習いながらやっているでしょ?だから私よりすごいの。」

 

それからどれほど経ったかは覚えていないけれどある日私はラプラスに言われたのだ。

 

「もう私から教えれるものはないよ。」

「それはどういう意味ですか?」

「ただ僕の知っている技術や魔術は一通り教えてしまったからね。だから君はこれからは実戦を中心

に鍛錬をしてもらうよ。」

 

そう言われた次の日からある時には赤竜の群れの中で生き残れと言われたり、王竜を討伐したり、はたまた全力のラプラスとの試合だったりとなかなか過酷なものだった。

 

しかしこの厳しいがどこか楽しかった日々も終わりを迎えた。

 

リーナがラプラスに提案をしていた。

どうやらラプラスから龍族の物語を聞いて未来に転生してくる龍神の御子の役に立ちたいと。

ラプラスは苦い顔をしながら了承していた。

リーナは私のところに来て長い間眠ることになることと記憶を失うかもしれないことを話してくれた。

 

「リーナ本当にそれで良いのかい?」

「大丈夫です。私もシルヴィアお姉ちゃんみたいにご主人様の役に立ちたいんです!」

 

ここまで言われては私からは何も言うまい。

 

「そうかまた会える日までロステリーナ。」

「はいシルヴィアお姉ちゃん!」

 

その後リーナは龍鳴山から離れたラプラスの研究所で眠りについた。

 

それから一月ほど経った日ラプラスから告げられた。

 

「どうやらヒトガミが動いたようだ。」

 

そうラプラスは私に言った。

 

私が目覚めてからついに奴は大きく動いたようだ。

曰く800年ほど前に発生していた第二次人魔大戦にヒトガミが介入し、魔族や獣族などによって人族が滅ぼされようとしていると。

 

人族が滅びるのはヒトガミにとって良いことらしい。

だからこそそれを止めなければならないのだ。

 

「ラプラス、私もその戦い共に行かせてくれないか?」

「君もかい?」

「そうだ。私もヒトガミの所業を見過ごすつもりなど毛頭無いからな。」

 

ラプラスは少し悩んでいるようだ。

少しして彼は口を開いた。

 

「分かった、君がそう言うなら良いんだ。でも無理はしないでくれ。分かったかい?」

「分かった、そうする。」

 

そうして私はラプラスの作った王竜の素材を使った鎧と剣を身につけ戦場に向かった。

 

戦場はまさしく地獄の様相であった。

剣と魔術が飛び交い続け、大地が血に染まっていた。

剣を抜いて戦火に飛び込もうとした時、まばゆい光が背後から私を照らした。

振り返ると黄金の鎧に身に着けた人族がいた。

 

「我が名はアルデバラン!黄金騎士アルデバランである!」

 

男は割れんばかりの大声で名乗った。

 

「愚かな魔族よ!我が力の前にひれ伏すがいい!」

 

男の身につけている鎧、確かラプラスの作った闘神鎧だったか。

アレを果たして人族は扱いきれるのだろうか?

 

結果は悲惨であった。

確かに魔族を蹴散らし戦果こそ挙げたが一度の戦闘でアルデバランは鎧の中で死んでいた。

それから何度も鎧の装着者は変わっていったがラプラスを除いて一度の戦闘で鎧の中で死んでいた。

ラプラスも装着して戦えばかなり消耗していた。

 

その後闘神鎧はラプラスの手によって封印が施された。

不幸中の幸いか、闘神鎧の活躍によって魔族たちは疲弊し、戦争の終わりが近づいてきた。

 

人族たちが最後の攻勢に出た時にそれは現れた。

ラプラスと私は現れたものに驚愕した。

紛うことなく闘神鎧を身に着けた魔族だったのだから。

 

「クソ!ヒトガミの仕業か!」

 

ラプラスが今まで見たことのないような怒りの形相をしていた。

 

魔族は私たちに飛びかかってきた。

難なくそれを避け反撃をしたが剣は容易く弾かれた。

 

「シルヴィア!闘神鎧は帝級相当の攻撃でなければ攻撃は通らない!」

 

ラプラスはそう言ってすぐに奥義を放った。

闘神鎧を砕き中の魔族を切り裂いた。

私も合わせて魔族を袈裟に斬りつけた。

そのままラプラスが鎧を砕き、私が追撃することで魔族を追い詰めていった。

 

いける!そう思った瞬間、魔族の踏み込みのキレが急変した。

 

「マズい!?」

 

気づいた時には遅すぎた。

魔族の拳が私の体を貫き、吹き飛ばした。

 

「ごぇっ…」

 

内臓が辺りにぶちまけられ血の匂い以外に何も感じれない。

意識が朦朧とする。

意識が飛ぶ前に治癒魔術を使う。

 

「うっ‥オエッ」

 

血が喉に込み上げてきて吐き出してしまった。

まだ死んではいない。

痛む体でなんとか立ち上がりラプラスの方を見た。

じわじわと魔族に追い込まれている。

私では足手まといになる。どうするべきだ?

一つある。

あの技なら奴に致命打を与えれる!

 

ラプラスが魔族を吹き飛ばした。

まだだ、今じゃない。

魔族はすぐに体勢を立て直し、ラプラスと鍔迫り合いになった。

今だ!

魔族の背後に飛び込み、剣を上段に構え私は言った。

 

「右手に剣を」

「左手に剣を」

「両の腕で汝に死を齎そう。」

 

『破断!』

 

渾身の一撃を叩き込んだ。

鎧を砕き、中の肉体を深く切り裂いた。

だが魔族は止まらなかった。

ラプラスの体勢を崩し、私と全く同じ構えをした。

 

私はラプラスを見た。

あの手刀が振り下ろされるまでに彼が立て直すのは間に合わないだろう。

ならばやることは一つだ。

ラプラスと魔族の間に割り込みありったけの魔力で結界魔術を唱えた。

 

体に虚脱感が襲うがなんとか堪え、魔族を睨み付けた。

あぁこの一撃で私は真っ二つに切り裂かれるのだろう。

くそっ、私がもっと強ければ…

しかしその瞬間、私の体は横に飛ばされた。

ラプラスだ。

彼が私を横に突き飛ばしたのだ。

なぜと聞くまでもなく手刀が振り下ろされた。

容易く私の結界魔術と私の左腕ごとラプラスを引き裂いた。

それと同時に魔力の奔流が私を襲い、私は意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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