人神のなれ果て ー魔龍王に拾われてから復讐を誓うー 作:柊 シズク
目が覚めた。
私たちは敗北し、ラプラスは死んだ。
左腕の感覚がない。
それはそうだ、あの魔族に叩き切られたのだから。
失血死でもするかと思っていたがあの魔力の奔流で傷口が焼けて塞がっていた。
治癒魔術をかけて腕を直そうとする。
だが、上手くいかず膝をついてしまった。
魔力切れか。
仕方ない、片腕だけでも龍鳴山に戻れるか。
街道は静まり返っていた。
盗賊も旅人の気配もしない。
3ヶ月ほどで家に戻ってくることが出来た。
道中は体質のおかげで難なく進めた。
「ふぅ。」
椅子に腰掛けるとがらんとした部屋が嫌に目についた。
今まではリーナかラプラスがいたこの家にはただ私が一人きりだ。
「ははっ…」
乾いた笑いとともに涙が出てくる。
私はまた一人きりになってしまった。
帰ってから数日が経った。
私は思いつきでラプラスの書斎に入った。
机には一冊の本が置かれていた。
中身を確認すると今までの日々について書かれていた。
ほとんどは大したことないものだったが一つ目に入る記述があった。
リーナが眠りについた日のものだ。
リーナの呪いを変質させる魔術と魔法陣の全てが記されている。
これがあればリーナの望みを叶えてもう一度目覚めさせることだって出来るに違いない。
私は日記を持ち、研究所に向かった。
日記に書かれている魔術は私が知っているものをかなり手を加えたもののようだった。
それからは研究所と龍鳴山を行き来する日々が始まった。
毎日地道に魔法陣に魔力を込め直し、経過観察をする。
そんな日々がどれほど続いただろうか。
ラプラスの日記のおかげでリーナの呪いの変質はほとんど終わっていた。
そうして最後の魔法陣を起動した。
まばゆい青い光が洞窟を包み込んだ後、程なくして消えていった。
私はリーナの眠る方を見つめた。
水が周囲から引いていき、私は蓋を開けた。
あの頃のままの彼女の姿がそこにあった。
数刻経っただろうか、リーナが目を開けた。
「リーナ!私だ、シルヴィアだ!」
私は思わず声を張り上げてしまった。
「う…ん?、シルヴィアお姉ちゃん?」
ああ!リーナの記憶はそのままなのだろう!
なんと喜ばしいことか!
「わたしは…そうだ!じっけん、実験は成功したんですか!?」
「ああ、成功したんだ!」
その言葉を聞いたからかリーナは安堵したようだった。
「家に帰ろう、リーナ。」
「はい!帰りましょう!」
彼女は起き上がり、靴を履いて立った。
そうして私たちは龍鳴山に戻ったのだった。
私たちは家の扉を開け、椅子に腰掛けたのだった。
リーナは少し気まずそうに私に尋ねた。
「ご主人様はまた出掛けているんですか?」
その言葉は私にとって一番聞きたくなかったものだった。
本当のことを言うべきだろうか、それを言えば彼女は間違いなく傷つくだろう。
だが、嘘を言えば彼女はもっと傷ついてしまうに違いない。
「リーナ、ラプラスは死んだ。」
それを聞いた瞬間彼女は信じられないという顔をしていた。
「う…嘘ですよね、ご主人様が死ぬだなんて、だってあのご主人様ですよ?」
「すまないリーナ、私の力不足だった。」
「だってご主人様は!ご主人様は…」
彼女は泣き出してしまった。
ただ私は彼女を抱きしめることしかできなかった。
私がもっと強ければこんなことにはならなかったのだろうか。
そう思わずにはいられなかった。